Skip to main content

ハイチの豚飼育数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)の発表した最新データによると、ハイチの豚飼育数は1960年代から1970年代にかけて増加傾向にあり、1979年には200万頭にまで達しました。しかし、その後、1980年代初頭に大きな減少が見られ、最低で30万頭にまで落ち込みました。それ以降、徐々に回復し、2000年代には安定的に約100万頭前後で推移しています。近年の2022年には約103万頭となり、再び安定した養豚数が維持されています。

年度 飼育数(頭)
2022年 1,030,732
2021年 1,029,168
2020年 1,027,604
2019年 1,032,255
2018年 1,018,407
2017年 1,014,291
2016年 1,010,470
2015年 1,007,439
2014年 1,004,000
2013年 1,001,000
2012年 1,001,000
2011年 1,001,000
2010年 1,001,000
2009年 1,001,000
2008年 1,001,000
2007年 1,000,000
2006年 1,000,000
2005年 1,001,000
2004年 1,000,000
2003年 1,002,000
2002年 1,001,100
2001年 1,000,500
2000年 1,000,000
1999年 800,000
1998年 800,000
1997年 600,000
1996年 485,000
1995年 390,000
1994年 360,000
1993年 350,000
1992年 380,000
1991年 340,000
1990年 300,000
1989年 350,000
1988年 400,000
1987年 450,000
1986年 500,000
1985年 520,000
1984年 550,000
1983年 550,000
1982年 600,000
1981年 1,100,000
1980年 1,500,000
1979年 2,000,000
1978年 1,900,000
1977年 1,800,000
1976年 1,700,000
1975年 1,600,000
1974年 1,650,000
1973年 1,750,000
1972年 1,800,000
1971年 1,750,000
1970年 1,525,000
1969年 1,485,000
1968年 1,445,000
1967年 1,405,000
1966年 1,367,118
1965年 1,330,000
1964年 1,300,000
1963年 1,280,000
1962年 1,260,000
1961年 1,240,000

ハイチの豚飼育数に関するデータは、同国の農業や食糧供給にかかわる重要な指標を示しています。このデータからは、ハイチ国内の経済的・社会的背景、さらに地政学的および自然環境に基づく影響が読み取れます。

まず、1960年代から1970年代末にかけて、豚飼育数は継続的に増加しており、1979年には200万頭にまで達しました。この増加は、当時の国内農村コミュニティが豚を重要な食糧資源としてだけでなく、経済的資産としても利用していたためと考えられます。豚はハイチの地域社会において現金収入源や肥料の供給といった経済的効果をもたらし、特に家庭レベルでは子どもの教育費や緊急時の資金としての役割を果たしていました。

しかし、1980年代初頭、アフリカ豚熱(ASF)の発生により、ハイチの豚産業は壊滅的な打撃を受けました。この伝染病は非常に致死率が高く、家畜間で急速に広がるウイルスです。当時の対策として、多国間支援の下、大規模な豚の淘汰が実施されましたが、この措置により国内の豚飼育数はわずか30万頭前後まで激減しました。経済的には、特に貧困層が大きな影響を受け、食糧安全保障や農村経済に多大な混乱が生じました。

その後、1990年代半ば以降、豚飼育数は段階的に回復に向かいます。この回復には、ハイチ農業庁や国際機関からの支援による改良種導入プログラムが寄与しました。しかし、回復には時間がかかり、完全に病害リスクを克服するには至っていない部分も残されています。2000年以降、飼育数は100万頭前後で安定しており、2022年には103万頭に達しています。これは、持続可能な養豚体系の構築がある程度進んできたことを示しているといえます。

なお、ハイチの豚産業の安定化には地政学的リスクや災害リスクも無視できない要因です。ハイチは自然災害、特に地震やハリケーンといった深刻な災害リスクに常にさらされています。2010年の大地震やその後の災害は、農業全般へ悪影響を与え、地域社会の再建に時間を要する状況を作り出しました。また、新型コロナウイルス感染症の流行は、国際的なサプライチェーンや農村経済への間接的影響を通じて、養豚業へも何らかの影響を及ぼした可能性があります。

今後の課題は、豚疫病対策をさらに進展させながら、養豚文化の持続可能性を高めることです。具体的には、病害管理に焦点を当てた家畜衛生制度の強化、品種改良における研究・開発の推進、そして農村地域の災害耐性を向上させるインフラの整備が必要です。また、国際的な支援を受けながら、地域の気候変動リスクや経済的不安定性を乗り越えられる基盤づくりが求められます。

結論として、ハイチの豚飼育数の推移は、単に家畜の増減を示すだけでなく、多様な側面から同国の農業の現状や未来に対する洞察を提供しています。豚の飼育は地域社会における重要な食糧資源として機能しているため、ハイチ国内および国際コミュニティの協力が不可欠です。今後、貧困削減や農業経済の安定をも目的とした政策的支援が推奨されます。