国際連合食糧農業機関(FAO)が提供したハイチの馬肉生産データによれば、1961年には2,679トンであった生産量が、長期的に増加を続けた後、2000年代の中頃から停滞し、2014年以降には減少に転じています。2023年には4,889トンまで減少しており、ピーク時の5,700トン(2003年と2005年)と比較して約14%の減退を見せています。この推移は、食文化や農業生産システム、経済的背景の変化、および自然災害の影響などが関与していると考えられます。
ハイチの馬肉推移(1961年~2023年)
年度 | (トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 4,889 |
-1.11% ↓
|
2022年 | 4,944 |
-0.43% ↓
|
2021年 | 4,965 |
-0.43% ↓
|
2020年 | 4,987 |
-0.48% ↓
|
2019年 | 5,011 |
-0.31% ↓
|
2018年 | 5,026 |
-3.36% ↓
|
2017年 | 5,201 |
-0.19% ↓
|
2016年 | 5,211 |
-1.85% ↓
|
2015年 | 5,309 |
-1.86% ↓
|
2014年 | 5,410 |
-3.4% ↓
|
2013年 | 5,600 | - |
2012年 | 5,600 | - |
2011年 | 5,600 | - |
2010年 | 5,600 | - |
2009年 | 5,600 | - |
2008年 | 5,600 | - |
2007年 | 5,600 | - |
2006年 | 5,600 |
-1.75% ↓
|
2005年 | 5,700 |
1.79% ↑
|
2004年 | 5,600 |
-1.75% ↓
|
2003年 | 5,700 |
1.79% ↑
|
2002年 | 5,600 | - |
2001年 | 5,600 |
1.82% ↑
|
2000年 | 5,500 |
1.85% ↑
|
1999年 | 5,400 | - |
1998年 | 5,400 | - |
1997年 | 5,400 | - |
1996年 | 5,400 |
1.89% ↑
|
1995年 | 5,300 |
1.92% ↑
|
1994年 | 5,200 |
1.96% ↑
|
1993年 | 5,100 |
2% ↑
|
1992年 | 5,000 |
6.38% ↑
|
1991年 | 4,700 |
-1.26% ↓
|
1990年 | 4,760 |
0.42% ↑
|
1989年 | 4,740 |
0.85% ↑
|
1988年 | 4,700 |
2.17% ↑
|
1987年 | 4,600 | - |
1986年 | 4,600 | - |
1985年 | 4,600 | - |
1984年 | 4,600 | - |
1983年 | 4,600 |
2.22% ↑
|
1982年 | 4,500 |
2.27% ↑
|
1981年 | 4,400 | - |
1980年 | 4,400 |
2.33% ↑
|
1979年 | 4,300 |
2.38% ↑
|
1978年 | 4,200 |
5% ↑
|
1977年 | 4,000 |
2.56% ↑
|
1976年 | 3,900 |
2.63% ↑
|
1975年 | 3,800 |
2.7% ↑
|
1974年 | 3,700 |
2.21% ↑
|
1973年 | 3,620 |
2.84% ↑
|
1972年 | 3,520 |
2.44% ↑
|
1971年 | 3,436 |
2.51% ↑
|
1970年 | 3,352 |
2.54% ↑
|
1969年 | 3,269 |
2.51% ↑
|
1968年 | 3,189 |
2.51% ↑
|
1967年 | 3,111 |
2.54% ↑
|
1966年 | 3,034 |
2.5% ↑
|
1965年 | 2,960 |
2.49% ↑
|
1964年 | 2,888 |
2.56% ↑
|
1963年 | 2,816 |
2.51% ↑
|
1962年 | 2,747 |
2.54% ↑
|
1961年 | 2,679 | - |
ハイチの馬肉生産量の推移は、同国の農業経済や食文化の変遷を反映しています。1961年時点で2,679トンであった生産量は、1970年代を通じて安定的に増加しました。この成長は、家庭消費や地方市場の需要を背景に、家畜の飼育システムや農村部での馬の役割が維持されていたことに起因していると考えられます。その後、1990年代から2000年代中頃にかけて生産量がさらに伸び、2003年には5,700トンでピークに達しました。
しかしながら、2000年代中頃以降、ハイチの馬肉生産は停滞し、2014年以降は減少に転じました。この変化には複数の要因が関係している可能性があります。経済的側面では、ハイチはしばしば自然災害や政治的不安定性に直面しており、これが農業全体、特に動物飼育における投資不足を招いています。2010年のハイチ大地震は重大な影響を及ぼし、その復興過程で農業分野での再建が後回しにされてしまったとの指摘もあります。
また、食文化とライフスタイルの変化も、生産量の減少に影響を与えている可能性があります。他の動物由来の肉製品が市場で一般化され、牛肉や鶏肉など馬肉に代わるタンパク源が消費者に選ばれるようになったとの見方があります。一方で、世界的な馬肉消費の減少傾向にも影響を受け、海外輸出市場の停滞がハイチ国内の生産動向に連鎖的な影響を及ぼした可能性も否定できません。
地政学的なリスク要因を考えると、ハイチが抱える政治的不安定や貧困問題、およびこうした問題に起因する社会的混乱が農業に与える影響も見逃せません。同国における農業政策の実効性には課題が多く、災害後の復興支援や耕作地の整備などには継続的な取り組みが求められます。
将来的な回復の可能性を考えるためには、まず国内の農業基盤の整備が必要です。例えば、農場での家畜の健康を維持するための獣医学サービスの拡充や、ステーブルでの飼育環境の改善が挙げられます。また、小規模農家への投資支援を行い、農村経済を活性化させることも重要です。国際機関や外国政府との連携を強化し、技術協力や資金援助を通じて、持続可能な畜産業の発展を目指すことも効果的な戦略となるでしょう。
ハイチでは、馬がかつて農耕や輸送における主要な資源であったことを考えると、馬の役割を再評価し、地域特有の需要や文化を尊重した形で畜産業を再構築することが求められます。この取り組みが成功すれば、農村部における雇用創出や貧困削減にも貢献できるでしょう。
結論として、ハイチにおける馬肉生産量の減少傾向は、同国の経済的、社会的課題を反映しています。その克服には、国際的な協力を含む包括的な政策の実施が必要です。