国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表したデータによると、ハイチのトウモロコシ生産量は1961年から2022年の間で大きな変動を示しています。特に、1970年代を皮切りとした生産量の長期低下傾向、その後の2000年代後半の一時的な回復、そして2020年以降の大幅な減少が注目されます。この変動は気候変動、農業インフラの未整備、社会的不安など、さまざまな内外の要因に関連していると考えられます。
ハイチのトウモロコシ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 185,000 |
2021年 | 200,000 |
2020年 | 131,132 |
2019年 | 194,597 |
2018年 | 234,033 |
2017年 | 225,000 |
2016年 | 251,928 |
2015年 | 264,590 |
2014年 | 320,747 |
2013年 | 335,885 |
2012年 | 201,792 |
2011年 | 360,000 |
2010年 | 340,000 |
2009年 | 303,700 |
2008年 | 210,000 |
2007年 | 270,000 |
2006年 | 205,000 |
2005年 | 200,500 |
2004年 | 198,000 |
2003年 | 182,000 |
2002年 | 179,400 |
2001年 | 180,000 |
2000年 | 202,500 |
1999年 | 250,000 |
1998年 | 206,096 |
1997年 | 230,000 |
1996年 | 204,058 |
1995年 | 220,000 |
1994年 | 230,000 |
1993年 | 210,000 |
1992年 | 226,318 |
1991年 | 190,000 |
1990年 | 163,000 |
1989年 | 196,000 |
1988年 | 202,329 |
1987年 | 205,000 |
1986年 | 205,691 |
1985年 | 196,295 |
1984年 | 186,450 |
1983年 | 186,000 |
1982年 | 170,900 |
1981年 | 175,700 |
1980年 | 179,170 |
1979年 | 183,331 |
1978年 | 161,442 |
1977年 | 168,260 |
1976年 | 180,000 |
1975年 | 180,000 |
1974年 | 204,000 |
1973年 | 204,000 |
1972年 | 257,000 |
1971年 | 252,000 |
1970年 | 240,000 |
1969年 | 242,000 |
1968年 | 220,000 |
1967年 | 246,000 |
1966年 | 233,700 |
1965年 | 234,000 |
1964年 | 232,000 |
1963年 | 230,000 |
1962年 | 229,000 |
1961年 | 228,000 |
ハイチにおけるトウモロコシ生産量は、1961年から1980年代初頭までは比較的安定しており、年間20万から25万トンという水準を維持していました。しかし、1970年代後半から1980年代にかけて生産量の低下が顕著となり、1978年には16万1442トンという最低値を記録しました。この時期には、気候変動に伴う干ばつや作物病害、また農業技術やインフラの不足が大きな障害となっていた可能性があります。
1990年代以降は一時的な回復が見られ、特に1999年には25万トンまで回復しました。しかし、この回復は持続的ではなく、2000年代に入っても変動が目立ちます。2007年や2009年には27万トンと30万トンを超える大幅な増加が見られる一方で、2012年には20万1792トンと再び低迷しました。このような変動の背景には、ハイチ特有の社会的・経済的な問題があると推察されます。これは政情不安や自然災害の影響が大きいとされ、とりわけ2010年の地震の後遺症が農業生産基盤に与えたダメージが顕著です。
さらに2020年以降になると、トウモロコシ生産量の減少は一層深刻化しています。2020年には13万1132トンという大幅な減少が見られました。これは、新型コロナウイルス感染症による経済停滞や物流の混乱、干ばつの影響が重なったことによるものと考えられます。また、政情不安やガバナンスの欠如も生産効率を低下させる要因として挙げられます。これらの課題は特に2022年時点でも解消には至らず、18万5000トンと低迷が続いています。
ハイチのトウモロコシ生産量の変動を他国と比較すると、同じく発展途上国であるインドやアフリカ諸国の一部と似たトレンドが見られます。ただし、インドでは近年の技術革新や農業支援政策により安定化が進んでおり、ハイチの状況とは対照的です。これに対して、ハイチにおける課題は、農業インフラの未整備が顕著であり、公的および国際的な支援が必要不可欠です。
未来への対策として、まず灌漑施設や肥料の供給といった農業生産基盤の整備が急務です。また、気候変動に対応した耐干ばつ性の高いトウモロコシ品種の導入や、農業労働者への技術研修も重要です。他国の成功事例を参考に、地元農民を組織化し、協同組合を通じた効果的な資源配分を進めるべきです。国際社会においても、資金援助や農業技術指導を提供し、ハイチ政府と連携して持続可能な農業振興プログラムを策定することが求められます。
また、これらの施策を進める上で、政治の安定化が必須条件です。社会的な緊張や政情不安が解消されない限り、農業政策の実行や外部からの支援の効果が限定的になる可能性が高いです。そのため、国際機関は農業以外にも平和構築やガバナンス支援に力を入れるべきです。
結論として、ハイチのトウモロコシ生産量を安定化させるためには、内外の協調的な取り組みが必要です。食糧自給率の向上は、国の安定と成長に直結する重要な問題であり、国際的な援助と国内の努力の両輪がこれを支えるべきです。特に気候変動や経済的制約が続く中で、人道主義的な観点からも迅速な対応が望まれます。