国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、ハイチの牛乳生産量は、過去60年間で大きな変動を見せています。特に1980年代後半から1990年代初頭にかけて急激な増加が見られ、その後は持続的に上昇しましたが、一定の停滞や減少も経験しています。2022年の生産量は102,877トンで、過去のピーク生産量と比較するとやや低い水準にあります。これらのデータは、ハイチの農業生産の変遷や社会経済的状況を反映したものと言えます。
ハイチの牛乳生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 102,877 |
2021年 | 100,889 |
2020年 | 99,968 |
2019年 | 100,083 |
2018年 | 95,735 |
2017年 | 107,588 |
2016年 | 114,407 |
2015年 | 109,983 |
2014年 | 107,297 |
2013年 | 122,410 |
2012年 | 122,402 |
2011年 | 121,310 |
2010年 | 103,529 |
2009年 | 103,472 |
2008年 | 103,416 |
2007年 | 103,049 |
2006年 | 96,960 |
2005年 | 97,862 |
2004年 | 99,581 |
2003年 | 96,438 |
2002年 | 94,270 |
2001年 | 93,100 |
2000年 | 91,677 |
1999年 | 86,759 |
1998年 | 93,447 |
1997年 | 89,038 |
1996年 | 80,984 |
1995年 | 80,219 |
1994年 | 81,374 |
1993年 | 83,525 |
1992年 | 84,671 |
1991年 | 81,813 |
1990年 | 56,800 |
1989年 | 54,560 |
1988年 | 51,720 |
1987年 | 46,920 |
1986年 | 45,080 |
1985年 | 42,200 |
1984年 | 39,280 |
1983年 | 38,400 |
1982年 | 37,400 |
1981年 | 37,600 |
1980年 | 36,600 |
1979年 | 37,740 |
1978年 | 39,900 |
1977年 | 44,132 |
1976年 | 42,800 |
1975年 | 41,800 |
1974年 | 40,800 |
1973年 | 41,600 |
1972年 | 41,000 |
1971年 | 39,800 |
1970年 | 40,200 |
1969年 | 38,600 |
1968年 | 37,700 |
1967年 | 36,600 |
1966年 | 35,200 |
1965年 | 35,100 |
1964年 | 34,200 |
1963年 | 33,100 |
1962年 | 32,200 |
1961年 | 31,800 |
ハイチの牛乳生産量は1961年の31,800トンから始まり、1970年代初頭には40,000トンを超えました。しかし、その後しばらくは停滞期が続き、1978年から1983年の間ではほぼ40,000トン前後で推移しました。1985年頃から牛乳生産量は上昇基調に入り、1990年には56,800トンまで増加しました。この動向に拍車がかかったのが1991年から1998年の期間で、特に1991年の81,813トンから1998年の93,447トンに至る急成長が目立ちます。これは経済状況の改善や農業技術の向上、あるいは需要の高まりといった複数の要因が相互に作用した結果と考えられます。
2000年代に入ると牛乳生産量は再び100,000トン近辺で安定的に推移する期間が長く続きましたが、2011年には121,310トンという記録的な生産量を達成しました。このピークは内外の技術支援や気候条件の恩恵があった可能性が高いものの、以降は徐々に減少し、一時的に95,735トン(2018年)まで落ち込みました。近年では100,000トンをやや上回る水準を維持していますが、安定的な成長とは言い難い状況です。
地域課題として、ハイチでは地政学的なリスクや都市部への人口集中、気候変動の影響が農業全般に深刻な影響を与えています。特に経済的不安定性が畜産業にも波及し、生産基盤を脅かしている現状があります。また、牛乳生産の近代化が進みにくい環境により、生産量が自然災害や経済危機に大きく依存しやすくなっていることも課題の一つです。
ハイチの牛乳生産量の一部停滞には、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の拡大が影響しています。物流網や牛の飼育管理への障害が発生したことは、大規模な農業国だけでなく、中小農業が主体のハイチにとっても深刻な打撃でした。さらに、2021年以降の自然災害が農地や牧草地を荒廃させたことも、2022年の生産量増加が緩慢となった要因と考えられます。
今後、牛乳生産量を持続的に増加させるためには、インフラ整備と持続可能な農業支援が重要です。具体的には、農業技術の導入や生産設備の近代化を支える国際支援を取り入れることが求められます。また、地域での小規模農家の連携を促進することで、牧畜業の効率化や安定供給を目指すことができます。さらに気候変動に対応するために、耐性のある餌作物の導入や水資源の効率的な利用を推進する政策も必要です。
結論として、ハイチの牛乳生産は過去の急増期のような勢いこそありませんが、基盤を強化することで再び持続的な成長が期待されます。先進国や国際機関の専門的支援、地域住民の参加型アプローチを活用することで、安定した生産の確保と食料安全保障の向上につながる可能性があります。