FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、2024年7月更新のハイチのカカオ豆生産量の推移は、1961年から2022年にかけて大きな変動を見せています。1978年以降は徐々に増加傾向を示し、2015年には15,837トンと最高値に達しましたが、それ以後、特に2017年以降で急激な減少が見られ、2022年には僅か1,000トンと記録的な低水準となっています。この間の変動は、地政学的・環境的影響、経済的状況、そして農業技術の変化による影響が考えられます。
ハイチのカカオ豆生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 2,500 |
150% ↑
|
2022年 | 1,000 |
-50% ↓
|
2021年 | 2,000 | - |
2020年 | 2,000 |
-50% ↓
|
2019年 | 4,000 |
21.21% ↑
|
2018年 | 3,300 |
32% ↑
|
2017年 | 2,500 |
-82.64% ↓
|
2016年 | 14,398 |
-9.09% ↓
|
2015年 | 15,837 |
8.23% ↑
|
2014年 | 14,633 |
15% ↑
|
2013年 | 12,724 |
10.99% ↑
|
2012年 | 11,464 |
10.94% ↑
|
2011年 | 10,334 |
10.48% ↑
|
2010年 | 9,353 |
9.58% ↑
|
2009年 | 8,536 |
6.69% ↑
|
2008年 | 8,000 |
-5.88% ↓
|
2007年 | 8,500 |
41.67% ↑
|
2006年 | 6,000 |
25% ↑
|
2005年 | 4,800 | - |
2004年 | 4,800 |
-3.03% ↓
|
2003年 | 4,950 | - |
2002年 | 4,950 |
15.12% ↑
|
2001年 | 4,300 |
-4.44% ↓
|
2000年 | 4,500 |
-2.94% ↓
|
1999年 | 4,636 |
3.02% ↑
|
1998年 | 4,500 |
6.7% ↑
|
1997年 | 4,217 |
0.41% ↑
|
1996年 | 4,200 |
-35.38% ↓
|
1995年 | 6,500 |
8.33% ↑
|
1994年 | 6,000 |
20% ↑
|
1993年 | 5,000 |
66.67% ↑
|
1992年 | 3,000 | - |
1991年 | 3,000 |
-41.18% ↓
|
1990年 | 5,100 |
2% ↑
|
1989年 | 5,000 |
68.69% ↑
|
1988年 | 2,964 |
-42.88% ↓
|
1987年 | 5,189 |
-11.84% ↓
|
1986年 | 5,886 |
16.44% ↑
|
1985年 | 5,055 |
7.32% ↑
|
1984年 | 4,710 |
2.39% ↑
|
1983年 | 4,600 |
2.45% ↑
|
1982年 | 4,490 |
49.67% ↑
|
1981年 | 3,000 |
20% ↑
|
1980年 | 2,500 |
-37.5% ↓
|
1979年 | 4,000 | - |
1978年 | 4,000 |
33.33% ↑
|
1977年 | 3,000 | - |
1976年 | 3,000 | - |
1975年 | 3,000 |
-14.29% ↓
|
1974年 | 3,500 | - |
1973年 | 3,500 |
6.06% ↑
|
1972年 | 3,300 |
6.45% ↑
|
1971年 | 3,100 |
6.9% ↑
|
1970年 | 2,900 |
7.41% ↑
|
1969年 | 2,700 |
8% ↑
|
1968年 | 2,500 |
-7.41% ↓
|
1967年 | 2,700 |
8% ↑
|
1966年 | 2,500 |
-16.67% ↓
|
1965年 | 3,000 |
7.14% ↑
|
1964年 | 2,800 | - |
1963年 | 2,800 |
12% ↑
|
1962年 | 2,500 | - |
1961年 | 2,500 | - |
ハイチはカリブ海地域に位置する国であり、主に農業に依存した経済構造を有しています。カカオ豆は、国内において重要な輸出作物の一つであり、収益源として多くの農家にとって欠かせない役割を果たしてきました。しかしながら、1961年以降の生産量の推移を見てみると、一貫した成長が見られないばかりか、特に近年は急激な減少が顕著です。
1961年から1970年代にかけて、ハイチのカカオ豆生産量は年間2,500トンからおおよそ3,500トンの範囲内で推移しました。その後、1978年には4,000トンに増加し、1980年代にはさらに拡大し、一時的に5,000トンを超える年も見られました。このような増加の背景には、カカオ豆の国際市場における需要の拡大や輸出の強化が影響しています。
1990年代以降、ハイチのカカオ豆生産はさらに変動が激しくなりました。特に2000年代後半には、2007年で8,500トン、2011年には10,334トン、さらに2015年には史上最高の15,837トンに達しました。この成長の要因は、輸出志向の農業支援策やカカオ豆の品質向上を目指した技術的・政策的な取り組みと考えられます。また、世界的なチョコレート需要の高まりがハイチにとっても追い風となりました。
しかしながら、この成功は持続しませんでした。2017年以降、カカオ豆生産量は急落し、2022年には僅か1,000トンと、最盛期の15分の1未満にまで落ち込んでいます。この原因として考えられる要因は複合的です。一つには、気候変動による自然災害の頻発や、農業用地の劣化、そして旧式の農業技法が挙げられます。また、ハイチは長年に渡る政治的不安定さや内戦などの地政学的リスクを抱えており、これが農業全般に悪影響を与えています。さらに、2019年以降、世界的なパンデミックの影響で輸出市場が縮小したことも、ハイチのカカオ産業を直撃した可能性があります。
今後、ハイチがカカオ豆の生産量を回復し、さらには持続可能な成長につなげるためには、いくつかの取り組みが必要です。まず第一に、小規模農家への支援を強化し、効果的な農業技術や灌漑システムの整備を進めることが不可欠です。例えば、カカオ豆の品種改良や土壌の改良技術を導入することで、生産性の向上が見込まれます。次に、国際市場との結び付きの再構築を図り、公平な価格での輸出が可能となる仕組みを整備するべきです。さらに、政府と地域社会が連携し、長期的な農業政策の安定化を目指す必要があります。また、外部の支援や国際機関からの協力を得ることで、農業基盤の回復を加速することも期待されます。
結論として、ハイチのカカオ豆生産量の減少は、国際的な需要とは逆行したものであり、地域の経済や貧困解消にとって極めて深刻な課題です。気候変動への対策と並行して、農業労働者の生活向上に資する政策を打ち出し、国際的連携を通じて持続可能な農業モデルを築くことが、ハイチが再びカカオ生産の中心的プレーヤーとなるための鍵と言えるでしょう。