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ハイチのコーヒー豆生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が公表した2024年の最新データに基づくと、ハイチのコーヒー豆生産量は、1960年代には年間約30,000~45,000トン規模を維持していましたが、その後、長期的に減少傾向が続きました。特に2010年代に生産量は著しく落ち込みましたが、2020年代には緩やかな回復を見せ、2022年には約5,066トンに達しています。この長期的な減少から2020年代の回復傾向までの変遷について、地政学的背景や課題、改善の可能性を考察します。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 5,047
-0.38% ↓
2022年 5,066
5.02% ↑
2021年 4,824
4.98% ↑
2020年 4,595
5% ↑
2019年 4,376
5.02% ↑
2018年 4,167
4.99% ↑
2017年 3,969
3.36% ↑
2016年 3,840
4.92% ↑
2015年 3,660
1.67% ↑
2014年 3,600
-65.12% ↓
2013年 10,320
-50.69% ↓
2012年 20,930
-0.13% ↓
2011年 20,958
-0.05% ↓
2010年 20,968
-0.26% ↓
2009年 21,022
-39.94% ↓
2008年 35,000
-25.53% ↓
2007年 47,000
34.29% ↑
2006年 35,000 -
2005年 35,000
20.69% ↑
2004年 29,000
-3.33% ↓
2003年 30,000
11.11% ↑
2002年 27,000
-3.57% ↓
2001年 28,000
-6.67% ↓
2000年 30,000
7.14% ↑
1999年 28,000
2.79% ↑
1998年 27,239
-6.57% ↓
1997年 29,155
7.98% ↑
1996年 27,000
-6.9% ↓
1995年 29,000
-6.45% ↓
1994年 31,000
-7.74% ↓
1993年 33,600
22.83% ↑
1992年 27,355
-26.07% ↓
1991年 37,000
-0.54% ↓
1990年 37,200
-3.24% ↓
1989年 38,447
2% ↑
1988年 37,693
25.28% ↑
1987年 30,088
-20.3% ↓
1986年 37,752
2.31% ↑
1985年 36,900
-0.94% ↓
1984年 37,250
3.47% ↑
1983年 36,000
11.63% ↑
1982年 32,250
-3.01% ↓
1981年 33,250
-22.49% ↓
1980年 42,900
6.88% ↑
1979年 40,140
51.02% ↑
1978年 26,580
-14.64% ↓
1977年 31,140
-3.53% ↓
1976年 32,280
-17.23% ↓
1975年 39,000
25% ↑
1974年 31,200
-5.45% ↓
1973年 33,000
4.76% ↑
1972年 31,500
-2.78% ↓
1971年 32,400
-0.64% ↓
1970年 32,610
20.78% ↑
1969年 27,000
-10.54% ↓
1968年 30,180
-4.49% ↓
1967年 31,600
3.47% ↑
1966年 30,540
-16.83% ↓
1965年 36,720
2% ↑
1964年 36,000
2.92% ↑
1963年 34,980
9.79% ↑
1962年 31,860
-30.31% ↓
1961年 45,720 -

ハイチはかつて、コーヒー豆の栽培と輸出においてカリブ地域で重要な役割を担っていました。1960年代のデータを見ると、最高で45,720トンものコーヒーが生産されており、輸出を通じて国内経済に重要な貢献をしていました。しかし、1970年代以降その生産量は減少傾向を見せ、経年で波はあるものの、全体的な下降トレンドが明らかです。この背景の一つには、土壌の劣化、インフラの未整備、政治的不安定といった内外の要因が挙げられます。また、競争の激しい国際市場において他国の高品質で価格競争力のあるコーヒー豆が進出したことも、ハイチ産コーヒーの存在感を低下させた要因の一つです。

さらに、2010年代になると、ハイチのコーヒー豆生産量は急速に減少し、2014年にはわずか3,600トンにまで落ち込みました。この急激な低下には、自然災害や環境問題が大きな影響を与えています。例えば、2010年の地震や近年の暴風雨等の自然災害が生産基盤を直撃し、多くの農地が壊滅的な被害を受けました。これに加えて、コーヒーのさび病(葉にカビが侵入しておこる病害)などの疫病が蔓延し、農家がコーヒー栽培を断念せざるを得ない状況に陥りました。

しかしながら、2020年以降、生産量にはわずかではありますが回復の兆しが見られます。2022年には5,066トンまで増加し、この背景には農作物のモダン農業技術の導入や地域間協力が一部影響していると考えられます。国際NGOや地域固有の農業団体が復興支援や環境保全プログラムを展開し、持続可能な農地活用や新しい栽培技術、耐病性のあるコーヒー品種の普及に取り組んだことが功を奏しています。

ハイチのコーヒー産業が抱える課題を考えると、まず農業インフラの強化が不可欠です。土壌の栄養状態を改善するための施策や、潅漑システムの導入によって、気候変動に柔軟に対応できる強い農業基盤を整える必要があります。また、輸出市場における競争力を高めるには、品質管理やブランド化が重要です。例えば、ジャマイカが「ブルーマウンテンコーヒー」という高付加価値ブランドを確立したように、ハイチも地域特有のコーヒー文化を国際市場に紹介し、ブランドの差別化を図るべきです。

地政学的リスクも無視できません。長期的な政治的不安定や犯罪の横行は、農業従事者の安全を脅かし、生産性の向上を妨げています。これに対して、政府や国際社会が協力して治安改善に努め、農民が安全に作業できる環境を整えるべきです。

将来的には、環境保全型のコーヒー栽培を推進することも重要です。持続可能な農業方法が普及すれば、農地の回復だけでなく、国際市場における競争力も高まるでしょう。さらに、地元農民の教育支援や、技術訓練プログラムを充実させることで、安定した収入源を確保しつつ、若い世代が農業分野で活躍する機会を提供できます。

ハイチのコーヒー生産量は、過去数十年にわたり減少してきましたが、今こそ回復の道を進むチャンスです。これには、国内および国際的な協力が不可欠です。農業技術の導入、インフラ投資、品質戦略、治安改善など、包括的かつ持続可能な対策を講じることで、再びハイチ産コーヒーが世界市場で存在感を示すことが期待されます。