国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ハイチのプランテン(調理用バナナ)の生産量は、1961年に約198,000トンから始まり、長期的には一貫した増加傾向を見せていました。しかし、2000年代後半以降、不安定な変動が見られるようになり、特に近年では約200,000~280,000トンの間で推移しています。2023年には247,787トンと報告され、ここ数年の中では小幅な増加を記録しました。
ハイチのプランテン・調理用バナナ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 247,787 |
0.25% ↑
|
2022年 | 247,178 |
1.58% ↑
|
2021年 | 243,340 |
6.72% ↑
|
2020年 | 228,007 |
-8.75% ↓
|
2019年 | 249,883 |
-11.26% ↓
|
2018年 | 281,599 |
10.58% ↑
|
2017年 | 254,658 |
-0.24% ↓
|
2016年 | 255,259 |
0.35% ↑
|
2015年 | 254,357 |
12.37% ↑
|
2014年 | 226,360 |
10.02% ↑
|
2013年 | 205,745 |
-22.94% ↓
|
2012年 | 267,000 |
0.75% ↑
|
2011年 | 265,000 |
11.11% ↑
|
2010年 | 238,500 |
-34.57% ↓
|
2009年 | 364,500 |
82.25% ↑
|
2008年 | 200,000 |
-16.67% ↓
|
2007年 | 240,000 |
-9.43% ↓
|
2006年 | 265,000 |
-7.02% ↓
|
2005年 | 285,000 |
1.79% ↑
|
2004年 | 280,000 |
-1.06% ↓
|
2003年 | 283,000 |
-0.7% ↓
|
2002年 | 285,000 |
1.79% ↑
|
2001年 | 280,000 |
1.72% ↑
|
2000年 | 275,254 |
-0.39% ↓
|
1999年 | 276,338 |
-0.57% ↓
|
1998年 | 277,912 |
-0.43% ↓
|
1997年 | 279,104 |
-0.75% ↓
|
1996年 | 281,227 |
-0.22% ↓
|
1995年 | 281,847 |
-2.81% ↓
|
1994年 | 290,000 |
7.41% ↑
|
1993年 | 270,000 |
-2.7% ↓
|
1992年 | 277,505 |
-0.89% ↓
|
1991年 | 280,000 |
-5.08% ↓
|
1990年 | 295,000 |
3.18% ↑
|
1989年 | 285,916 |
3.97% ↑
|
1988年 | 275,000 |
-2.09% ↓
|
1987年 | 280,882 |
1.99% ↑
|
1986年 | 275,400 | - |
1985年 | 275,400 |
3.77% ↑
|
1984年 | 265,400 |
-5.08% ↓
|
1983年 | 279,600 |
1.99% ↑
|
1982年 | 274,140 |
0.97% ↑
|
1981年 | 271,500 |
-6.38% ↓
|
1980年 | 290,000 |
-3.74% ↓
|
1979年 | 301,274 |
7.93% ↑
|
1978年 | 279,129 |
-0.02% ↓
|
1977年 | 279,194 |
5.36% ↑
|
1976年 | 265,000 |
3.92% ↑
|
1975年 | 255,000 |
2% ↑
|
1974年 | 250,000 | - |
1973年 | 250,000 |
2.04% ↑
|
1972年 | 245,000 |
2.08% ↑
|
1971年 | 240,000 |
2.13% ↑
|
1970年 | 235,000 |
2.17% ↑
|
1969年 | 230,000 |
2.22% ↑
|
1968年 | 225,000 |
0.1% ↑
|
1967年 | 224,770 |
1.2% ↑
|
1966年 | 222,110 |
2.5% ↑
|
1965年 | 216,700 |
2.46% ↑
|
1964年 | 211,500 |
2.08% ↑
|
1963年 | 207,200 |
2.12% ↑
|
1962年 | 202,900 |
2.47% ↑
|
1961年 | 198,000 | - |
ハイチはプランテン、すなわち調理用バナナの重要な生産国の一つであり、この作物は国内の食料供給のみならず、農村地域の生活基盤や経済にも密接に関連しています。1960年代から1990年代にかけて、同国のプランテンの生産量はおおむね安定成長を続け、最盛期である1979年には約301,274トンに達しました。しかし、その後は紆余曲折を経て、2000年代後半には生産量が急低下し、2008年には200,000トンという最低水準にまで落ち込んでいます。この後、一時的な急増(2009年の364,500トン)を見せたものの、長期安定には至っていません。
この生産量の変動背景には、複合的な要因が関与していると考えられます。主な要因としては、地政学的な不安定性、ハリケーンや洪水といった天候災害の頻発、農業従事者への技術的支援不足、インフラの未発達、作物病害の流行などが挙げられます。また、2010年のハイチ地震や継続する政治的混乱もプランテン生産に大きな打撃を与えています。
一方で、2023年の生産量247,787トンは、近年の中では回復傾向を表しており、これには一部の地域での農業支援プログラムや、生産技術の改善が寄与している可能性があります。それでも、過去のピーク時(301,274トン)と比較すると、この数字は依然としてかなり下回ります。
プランテン生産の将来を展望した際、農業部門における以下のような対策が鍵となります。第一に、気候変動や自然災害へのリスク軽減を目的とした防災インフラの整備が求められます。これには、灌漑設備の改良や、洪水を防ぐための排水設備の設置が含まれます。第二に、病害対策に焦点を当てた研究資金の拡充を通じて、耐病性品種の開発や現場での病害予防の指導を強化することが重要です。第三に、農業政策として小規模農家や農村地域の支援体制を充実させることで、生産性の向上や収益の安定化を図ることができます。
国際社会としても、ハイチ農業の復興に関与しやすい分野が存在しています。特に、農業インフラ改善を支援する資金提供や、人材の技術教育に焦点を当てることで、持続可能な農業成長を後押しできるでしょう。たとえば、日本の技術協力やEUの農村開発援助プログラムといった例のように、双方向的な支援が形成されれば、ハイチ社会およびグローバルな食料安全保障にも寄与することが期待されます。
ハイチにおけるプランテン生産の改善には、多角的なアプローチが必要です。気候変動対応とインフラ整備の強化、種子から市場までのバリューチェーンの整備を目指す取り組みが大きな役割を果たします。さらには、災害時の迅速な支援体制を含む国家および国際的な支援ネットワークの強化が求められます。経済、食料、そして環境の持続可能性をつなぎ合わせる政策を構築することで、現状の安定化と将来的な飛躍が可能となるでしょう。これを実現するためには、ハイチ国内および国際社会の協力による長期的なビジョンが欠かせません。