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マルタの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した2024年7月時点のデータによると、マルタの牛乳生産量は、1960年代以降一貫した成長期を経て1980年代に安定期に入り、その後は時折の減少と増加を繰り返しながら減少傾向を見せています。ピーク時期は1993年の50,275トン、直近である2023年には37,300トンとなり、ここ数年での大きな減少が注目されます。本データは、地域資源の持続可能な運用に向け今後の方針を検討するための重要な指標となります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 37,300
-4.29% ↓
2022年 38,970
-1.44% ↓
2021年 39,540
-6.1% ↓
2020年 42,110
2.04% ↑
2019年 41,270
2.13% ↑
2018年 40,410
-1.66% ↓
2017年 41,091
-4.91% ↓
2016年 43,213
3.78% ↑
2015年 41,638
-2.79% ↓
2014年 42,833
4.51% ↑
2013年 40,986
-5.48% ↓
2012年 43,360
4% ↑
2011年 41,693
-1.03% ↓
2010年 42,127
6.77% ↑
2009年 39,455
-1.43% ↓
2008年 40,029
-1.39% ↓
2007年 40,593
-1.59% ↓
2006年 41,250
-0.54% ↓
2005年 41,474
0.86% ↑
2004年 41,122
-0.45% ↓
2003年 41,306
-6.59% ↓
2002年 44,220
-5.69% ↓
2001年 46,888
-2.25% ↓
2000年 47,969
-1.46% ↓
1999年 48,679
1.48% ↑
1998年 47,968
2.06% ↑
1997年 47,001
14.64% ↑
1996年 41,000
24.01% ↑
1995年 33,061
-28.63% ↓
1994年 46,322
-7.86% ↓
1993年 50,275
-2.23% ↓
1992年 51,422
47.07% ↑
1991年 34,964
42.81% ↑
1990年 24,482
2.01% ↑
1989年 24,000
-7.69% ↓
1988年 26,000
-3.7% ↓
1987年 27,000
-3.57% ↓
1986年 28,000 -
1985年 28,000 -
1984年 28,000
1.16% ↑
1983年 27,680
4.73% ↑
1982年 26,430
-0.13% ↓
1981年 26,464
-7.63% ↓
1980年 28,651
-11.63% ↓
1979年 32,422
-5.73% ↓
1978年 34,394
12.67% ↑
1977年 30,527
6.98% ↑
1976年 28,534
11.64% ↑
1975年 25,558
9.79% ↑
1974年 23,280
7.04% ↑
1973年 21,748
2.07% ↑
1972年 21,307
-1.26% ↓
1971年 21,579
5.11% ↑
1970年 20,529
3.52% ↑
1969年 19,831
6.36% ↑
1968年 18,645
1.61% ↑
1967年 18,350
5.3% ↑
1966年 17,427
11.83% ↑
1965年 15,584
3.89% ↑
1964年 15,000
6.09% ↑
1963年 14,139
-4.38% ↓
1962年 14,786
-1.43% ↓
1961年 15,000 -

マルタの牛乳生産量推移を分析すると、1961年に15,000トンであった生産量は1977年頃まで緩やかかつ安定した成長を遂げました。この背景には、当時の農業技術の向上や畜産業への投資が寄与していると考えられます。しかし、1980年以降は急激な生産量の減少が見られ、この時期は世界的な石油危機や経済的不安が農業部門にも影響を及ぼした可能性があります。

1990年代には、特に1992年に51,422トンに達して以来、再び牛乳生産量は高水準を記録しました。この急増の要因として、EU加入を見据えた農業政策の改善や貿易量の増加、ならびに安い飼料の輸入が考えられます。しかし、マルタの地理的制約(限られた土地面積と肥沃な土壌の不足)により、その好調は長続きせず、1995年以降は再び減少傾向に入りました。

2000年代から直近にかけては、概ね40,000トン前後の生産量で安定していましたが、2020年代に入り再び減少が顕著になり、2023年には37,300トンという数値にまで縮小しました。この背景には、気候変動による干ばつや高温の影響、飼料価格の高騰、新型コロナウイルスのパンデミックがもたらした物流の混乱などが複合的に作用していると考えられます。

マルタと同様に土地や資源が制約されている国を比較すると、例えばシンガポールでは国内生産よりも輸入に依存しており、畜産業においては効率化ではなく輸入元の多様性を確保する形を選択しています。一方で、広大な農地を持つアメリカやヨーロッパの大国は、自国生産を増やす形で需要に対応しています。このように各国の対応は地域的な特性に依存しています。

このような状況の中で、マルタにはいくつかの課題が浮かび上がります。一つには、環境保護と生産力の両立が求められています。限られた土地リソースを最大限に活用しつつ、過剰生産や廃棄を抑えるための効率的な生産システムの導入が必要です。また、地元消費者の需要に合わせた生産量を維持し、輸入乳製品への依存を最小限にとどめることも重要です。

具体的な対策としては、環境に優しい畜産技術の推進が挙げられます。例えば、持続可能な飼料の利用や放牧地の復元に力を入れることです。また、高付加価値製品(例えばチーズやバター)の生産にシフトし、国際市場をターゲットとすることで、少ない生産量でも経済的な利益を伸ばす方向性があります。さらに、隣国との地域協力や技術支援を通じ、リソース効率を高める枠組みの構築も検討すべきです。

地政学的リスクとして、マルタは地中海の要所に位置しており、気候の変動に加えて輸送チャネルの安全性確保が不可欠です。例えば、ウクライナ・ロシア間の紛争は欧州全体の農業輸出入に影響を及ぼしており、その波及効果がマルタにも広がる可能性があります。こうしたリスクの軽減を図るため、地域内での灌漑技術の共有や気候適応型農業の導入が今後の鍵となるでしょう。

最終的に、牛乳生産量の推移を改善するためには、環境保護、地域協力、技術革新に焦点を当てつつ、地元住民のニーズに適合した政策設計が求められます。これにより、マルタの牛乳生産は持続可能な形で安定すると考えられます。