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マルタのオリーブ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が公表した2024年7月時点のデータによれば、マルタのオリーブ生産量は、1960年代から1980年代にかけて比較的安定していましたが、1990年代後半には急激に減少しました。その後、2010年以降では再び生産量が増加に転じ、2015年には90トンと過去最高を記録しました。しかし、近年は再び減少傾向を示しており、2021年と2022年は20トンとなっています。この変動には、気候変動や国内農業政策、自然災害の影響が関与していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 20 -
2022年 20 -
2021年 20
-33.33% ↓
2019年 30
-50% ↓
2017年 60
100% ↑
2016年 30
-66.67% ↓
2015年 90
50% ↑
2014年 60
31.29% ↑
2013年 46
37.82% ↑
2012年 33
33.82% ↑
2011年 25
77.63% ↑
2010年 14
179% ↑
2009年 5
-16.67% ↓
2008年 6 -
2007年 6
20% ↑
2006年 5
51.98% ↑
2005年 3
9.67% ↑
2004年 3 -
2003年 3 -
2002年 3
200% ↑
2001年 1
-66.67% ↓
2000年 3
-25% ↓
1999年 4
100% ↑
1998年 2
-77.14% ↓
1997年 9
-12.5% ↓
1996年 10 -
1995年 10
25% ↑
1994年 8
-20% ↓
1993年 10
-33.33% ↓
1992年 15
15.38% ↑
1991年 13
-18.75% ↓
1990年 16
6.67% ↑
1989年 15
-16.67% ↓
1988年 18
-14.29% ↓
1987年 21
5% ↑
1986年 20 -
1985年 20 -
1984年 20
-4.76% ↓
1983年 21
5% ↑
1982年 20
42.86% ↑
1981年 14
-6.67% ↓
1980年 15
-11.76% ↓
1979年 17 -
1978年 17
-26.09% ↓
1977年 23
27.78% ↑
1976年 18
-5.26% ↓
1975年 19
-9.52% ↓
1974年 21
90.91% ↑
1973年 11
37.5% ↑
1972年 8
-57.89% ↓
1971年 19
72.73% ↑
1970年 11
-35.29% ↓
1969年 17
-5.56% ↓
1968年 18
5.88% ↑
1967年 17
-5.56% ↓
1966年 18
-5.26% ↓
1965年 19
-5% ↓
1964年 20
17.65% ↑
1963年 17
6.25% ↑
1962年 16
6.67% ↑
1961年 15 -

マルタのオリーブ生産の推移は、非常に変動が激しい特徴があります。1960年代から1980年代にかけて、生産量は主に15~20トンの範囲で推移し、比較的安定した状況が見られました。この安定期には、伝統的な農業手法が主に維持され、オリーブ生産が地域の小規模農家によって支えられていたことが背景にあります。しかし、1990年代に入ると生産量が急激に減少し、1998年にはわずか2トンにまで落ち込みました。この減少の主な要因として、経済的要素の変化、農業従事者の減少、都市化の進展が挙げられます。

2000年代初頭の低迷期を経た後、2010年以降には生産量が顕著に回復し始め、2015年には90トンまで上昇しました。この急回復は、気候条件の一時的な好転や、オリーブ栽培に対する政策的支援が寄与した結果と考えられます。また、農業における現代的な技術の導入や、地域の特産品としてのオリーブ需要の高まりも要因のひとつといえるでしょう。しかし、それ以降の年では再び生産量が減少傾向をたどり、2021年および2022年には20トンに落ち着いています。これは、気候変動による干ばつや異常気象、気温の変動などが起因している可能性が高く、オリーブ生産に深刻な影響を与えています。

マルタの地政学的背景に目を向けると、同地域は地中海性気候に属することからオリーブ栽培に適した環境を持っています。しかし、同時に地中海地域全体で進行している気候変動の影響を強く受けやすい地理的条件も抱えています。降水量の減少、土壌の劣化、および農業従事者の高齢化が、今後のオリーブ生産にさらに深刻な課題として表れる可能性があります。また、マルタ規模の小さな農業システムでは、市場競争力が限定的になるため、輸入品に押されて地元産業が弱体化するリスクがあります。

こうした背景を踏まえると、オリーブ生産の持続可能性を確保するためいくつかの方向性が考えられます。一つは、耐干ばつ性の高い品種の導入や、効率的な灌漑システムの開発です。これにより、異常気象に対しても収穫量を安定化させることが可能となります。また、農家への技術支援プログラムや補助金を通じ、若年層の農業参加を奨励する政策も重要です。さらに、マルタのオリーブオイルを特産品としてブランド化し高付加価値商品として市場に展開することで、輸入品との競争力を高めることが期待されます。

結論として、マルタのオリーブ生産は長期にわたって気候や政策、需要変化などのさまざまな要因による影響を受けてきました。今後は地球温暖化への適応を視野に入れつつ、生産性と収益性の向上を目標にした包括的な政策が必要です。地域間協力も重要なカギとなり、地中海地域全体で経験や技術を共有する仕組みづくりが、これ以上の生産量低下を防ぎ、産業の将来への安定を確保するための重要な一歩となるでしょう。