マルタにおける豚飼育数は、1961年の16,392頭から始まり、多数の増減を経て2022年には29,550頭と長期的には減少傾向にあります。1980年代から1990年代にかけては急激な増加が見られ、1994年にはピークの111,000頭を記録しましたが、その後、2000年代には減少傾向が顕著となり、2017年以降はさらに落ち込んでいます。この推移は、マルタの地理的特徴や養豚業の経済的・政策的な影響を反映しています。
マルタの豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 29,550 |
2021年 | 40,050 |
2020年 | 40,090 |
2019年 | 35,480 |
2018年 | 36,290 |
2017年 | 34,011 |
2016年 | 40,597 |
2015年 | 43,634 |
2014年 | 47,465 |
2013年 | 49,450 |
2012年 | 45,209 |
2011年 | 46,287 |
2010年 | 70,583 |
2009年 | 65,918 |
2008年 | 76,900 |
2007年 | 73,683 |
2006年 | 73,025 |
2005年 | 76,853 |
2004年 | 73,067 |
2003年 | 78,303 |
2002年 | 80,898 |
2001年 | 80,074 |
2000年 | 80,074 |
1999年 | 70,000 |
1998年 | 70,000 |
1997年 | 70,000 |
1996年 | 69,000 |
1995年 | 103,000 |
1994年 | 111,000 |
1993年 | 109,000 |
1992年 | 107,000 |
1991年 | 101,500 |
1990年 | 101,200 |
1989年 | 101,240 |
1988年 | 98,000 |
1987年 | 95,000 |
1986年 | 95,000 |
1985年 | 95,000 |
1984年 | 80,000 |
1983年 | 53,366 |
1982年 | 27,889 |
1981年 | 16,525 |
1980年 | 4,425 |
1979年 | 15,000 |
1978年 | 25,000 |
1977年 | 28,000 |
1976年 | 22,000 |
1975年 | 20,000 |
1974年 | 25,000 |
1973年 | 24,000 |
1972年 | 24,000 |
1971年 | 23,397 |
1970年 | 22,649 |
1969年 | 31,290 |
1968年 | 23,351 |
1967年 | 23,440 |
1966年 | 23,341 |
1965年 | 15,166 |
1964年 | 13,418 |
1963年 | 15,757 |
1962年 | 16,000 |
1961年 | 16,392 |
国際連合食糧農業機関(FAO)の発表した最新データによると、マルタの豚飼育数の動向は、経済・政策的な要因に加え、島国特有の地理的制約や国際市場の影響を強く受けていることがわかります。1960年代のマルタでは飼育数は1万6千頭程度で推移していましたが、1970年代後半から1980年代にかけて比較的安定した増加傾向を示しました。特に1983年から1989年にかけて飼育数が50,000頭から100,000頭を超える規模に達しました。これは、当時の経済発展や国内の需要増大、政策面での家畜産業支援が背景にある可能性があります。
しかし1994年に111,000頭とピークを迎えた後は、徐々に減少に転じ、1996年には69,000頭まで急激に減少しました。この急激な変化の原因としては、輸入品との競争激化、国内豚肉の市場シェアの縮小、環境問題への新たな規制などが影響していたと考えられます。特に、EU加盟後の2004年前後には、養豚業界における規制の強化や市場開放による競争環境の変化が、規模縮小に拍車をかけたと見られます。
2010年代後半になると、更なる減少が顕著になり、2022年には約29,550頭という過去60年間で最低水準の一つを記録しました。この減少は、主にマルタの小さな地理的規模と養豚業の競争力低下が主因と考えられます。加えて、新型コロナウイルスの影響による需要変動やサプライチェーンが混乱した可能性も否定できません。さらに、飼育環境やエサ供給面でのコスト増加も参入障壁を高めている要因として挙げられます。
マルタにおける豚飼育数の減少は、他国との比較でも特徴的です。例えば、ヨーロッパの大国であるドイツやフランスでは、養豚業が国家規模で強力に維持されていますが、規模が限られる小国マルタでは、同様の支援を行う難しさが浮き彫りになっています。国内飼育数減少の背景には、グローバルな食糧供給の多様化と輸入食品への依存が関係していると考えられます。
これらの動向に対して、いくつかの対応策が考えられます。一つは、養豚業の効率化のためにスマート農業技術を導入し、生産性を向上させることです。さらに、地元の消費者にマルタ産豚肉の価値を訴求し、「地産地消」促進キャンペーンなどを展開することも重要です。また、EUの農業補助金政策や環境基準に柔軟に対応するため、小規模事業者を対象とした支援体制の強化も必要です。特に資金面や技術支援を重点的に行うことが効果的でしょう。
結論として、マルタの豚飼育業界は地理的・経済的制約から縮小が進んでいますが、技術革新や政策的支援により持続可能な規模で維持される可能性があります。今後は、地域特性や消費者ニーズに即した柔軟な戦略が鍵を握るでしょう。この分野を活性化するためには、地域産業の振興と国際市場の変動への適応をバランスよく推進することが重要です。