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マルタの牛乳生産量推移(1961-2022)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、マルタの牛乳生産量は、1960年代の年間約26,000トンから徐々に増加し、1990年代初頭には50,000トン台を超えるピークを迎えました。しかし、その後の数年間で生産量はやや減少し、2022年時点では42,070トンとなっています。全体として、マルタの牛乳生産量は段階的な増減を繰り返しつつ、長期的には減少傾向が見受けられます。

年度 生産量(トン)
2022年 42,070
2021年 42,320
2020年 44,940
2019年 44,110
2018年 43,230
2017年 43,773
2016年 45,880
2015年 44,244
2014年 45,316
2013年 43,567
2012年 46,049
2011年 44,415
2010年 44,966
2009年 42,570
2008年 43,169
2007年 43,670
2006年 44,415
2005年 44,497
2004年 43,548
2003年 46,790
2002年 48,935
2001年 51,762
2000年 51,569
1999年 53,415
1998年 50,906
1997年 51,539
1996年 45,750
1995年 35,861
1994年 50,157
1993年 52,975
1992年 54,122
1991年 37,444
1990年 26,491
1989年 25,940
1988年 27,970
1987年 28,970
1986年 30,000
1985年 30,010
1984年 30,010
1983年 29,842
1982年 28,349
1981年 28,476
1980年 30,840
1979年 34,868
1978年 37,289
1977年 33,657
1976年 31,906
1975年 29,966
1974年 27,467
1973年 26,853
1972年 27,156
1971年 27,662
1970年 27,690
1969年 27,363
1968年 27,550
1967年 25,394
1966年 25,185
1965年 25,432
1964年 25,000
1963年 25,381
1962年 26,290
1961年 26,000

マルタの牛乳生産量の推移は、島国特有の地理的条件と経済的背景、さらに欧州連合(EU)の政策の影響を強く受けてきました。1960年代、マルタは乳製品の国内生産に依存しており、年間約26,000トン前後の生産量が維持されていました。その後、1970年代初頭から増産が進み、酪農業の効率化と家畜頭数の増加により、1978年には37,289トン、1992年には54,122トンと大幅な増加を記録しました。この急激な成長は、農業政策の近代化やマルタ政府による補助金制度が背景にあると考えられます。

しかしながら、1990年代中盤以降、マルタの牛乳生産量は減少に転じました。この一因として、1995年以降のEU統合に向けた準備過程で、規制の変更や市場競争の激化、さらには環境基準の引き上げに対応するためのコスト増加が挙げられます。また、マルタ特有の地理的制約により、牧草地や飼料の生産エリアが限られていることも、持続的な増産を妨げる要因となっています。その結果、2000年代以降は40,000トン台後半を中心とした安定的な生産量が続くこととなりました。

特に2010年代後半以降、気候変動や食品市場のさらなる国際化の影響が顕著になりました。この期間は、他のEU諸国との競争が激化し、低コストで大量生産する競合国の影響で、マルタの生産規模の限界が明らかになっています。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響もあって、労働力や物流が一時的に停滞し、2021年と2022年にはそれぞれ42,320トン、42,070トンまで生産量が減少しました。こうした外的要因が小規模な酪農業に与える打撃は大きく、安定的な運営をも困難にしています。

今後の課題として指摘できるのは、マルタの牛乳生産量をいかに安定化させ、持続可能性を確保するかという点です。例えば乳製品の高付加価値化や地元市場の拡大、さらには観光業との連携が考えられます。地元産の「マルタブランド」の乳製品を特産品として売り出すことで、国際競争力を強化する方策が期待されます。また、環境負荷の軽減を目指したスマート農業の導入や、EUの補助金を活用した酪農設備の更新が必須となります。さらに、労働力不足に対応するためには、移民政策を通じた労働力確保や、農業従事者への魅力的な支援策も必要です。

地政学的にも、マルタは欧州と北アフリカを結ぶ戦略的な位置にあります。そのため、輸送コストと供給地確保の面で特有の課題を抱えています。気候変動や地域的な衝突の影響を受けやすい立場でもあるため、これらのリスクを視野に入れた柔軟な政策対応が重要です。

結論として、マルタの牛乳生産量は過去数十年間にわたって増減を繰り返しましたが、近年の減少傾向は、地理的制約や気候変動、国際市場の競争など複数の要因が絡まり合った結果といえます。今後、同国がその小規模な生産体制を強化し、生産の安定性を図るためには、地域特性を活かした革新と国際協力が欠かせません。産業界と政府、さらには国際機関が連携し、持続可能な酪農業を実現するための具体的な取り組みを進める必要があります。