Skip to main content

マルタのリンゴ生産量推移(1961-2022)

マルタのリンゴ生産量は、1961年の100トンを起点として、1960年代後半から1970年代前半にかけて急激に増加し、1973年には540トンでピークを迎えました。しかし、その後は下降を続け、1990年ごろまで比較的安定したものの、1990年代後半から再び急激に減少しています。2020年以降の生産量は10トンにとどまり、過去60年間で最も低い水準となっています。

年度 生産量(トン)
2022年 10
2021年 10
2020年 10
2019年 10
2018年 20
2017年 21
2016年 16
2015年 28
2014年 39
2013年 35
2012年 27
2011年 42
2010年 51
2009年 57
2008年 57
2007年 63
2006年 102
2005年 66
2004年 32
2003年 12
2002年 33
2001年 55
2000年 66
1999年 87
1998年 111
1997年 332
1996年 300
1995年 150
1994年 150
1993年 200
1992年 300
1991年 440
1990年 435
1989年 430
1988年 420
1987年 420
1986年 410
1985年 400
1984年 400
1983年 400
1982年 370
1981年 300
1980年 390
1979年 360
1978年 200
1977年 140
1976年 230
1975年 430
1974年 290
1973年 540
1972年 470
1971年 466
1970年 234
1969年 220
1968年 260
1967年 235
1966年 225
1965年 110
1964年 110
1963年 100
1962年 100
1961年 100

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、マルタのリンゴ生産量は1961年から始まり、当初100トンの規模でスタートしました。生産量は1960年代後半から1970年代前半にかけて著しく増加し、1973年には540トンのピークに達しています。この時期は、マルタ国内で果樹栽培が活発化し、リンゴ生産が農業部門の一端を担う状況になっていたことを示しています。しかし、1970年代後半から1990年ごろにかけては生産量の増減が激しく、1973年以降急落した年もありました。一方、1990年付近では400トン程度の安定した水準が数年間保たれましたが、1990年代後半からは一貫して減少傾向にありました。2020年以降は10トンに落ち込み、同水準が継続しています。

これらの変動の背景には、地政学的および気候的な要因が複雑に絡み合っています。1970年代には、マルタが独立国家としての基盤を固める最中であり、限られた農地をより高付加価値な作物の栽培へ転換する選択が進められた可能性があります。さらに、リンゴのような耐寒性を要する果樹作物は地中海性気候であるマルタには適応しづらいという構造的な課題も存在していたと考えられます。その後の1990年代以降、グローバル市場からの安価な輸入作物の流入が国内生産を圧迫したことが想定されます。加えて、近年の少雨傾向や気温の上昇による気候変動も、生産量の長期的な減少に影響を与え、2022年には10トンという極めて低い水準が維持されています。

このような状況は他の農業大国とも対照的です。たとえば、同じ地中海性気候に属するスペインやイタリアでもリンゴ生産は一定の規模を保っていますが、それらの国々では大規模な灌漑技術の導入や品種改良、そして市場政策による影響が大きいです。一方で、マルタのように限られた農地と人口を抱える小さな島国の場合、農業は国の経済基盤よりも観光業や他の産業に重きを置かざるを得ない事情があります。

マルタでのリンゴ生産が低迷する中で考えられる課題は、農村地域の活性化と農業の持続可能性の両立です。食料安全保障の観点から、少量でも国産作物の生産を保ち続けることは重要ですが、同時に限られた資源をいかに効率的に活用するかという視点も求められます。畜産や他の作物に比べて比較的生産性の低いリンゴ産業を維持するためには、高耐熱性で水不足に強い品種の研究・導入、効率的な灌漑システムの活用、国内市場での地産地消キャンペーンの強化といった対策が有効です。また、他国との協力を通じて、共有技術や経験を活用することも有望です。

結論として、マルタのリンゴ生産量の減少は、地理的特性や経済的トレンド、気候変動といった多くの要因が複雑に絡み合った結果といえます。リンゴ生産そのものがマルタ経済に占める割合は小さいものの、このデータは同国の農業全体が直面する広範な課題を象徴しています。今後、持続可能な農業政策を策定・実行する際には、外部技術導入や地域間協力を拡充しながら、限られた資源を最大限活用する対応が求められています。