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マルタのトマト生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization)が発表した最新データによると、マルタのトマト生産量は、1961年に5,145トンで始まり、年々の増減を繰り返しながらピークの1996年には48,000トンを記録しました。しかし、その後は急激に減少し、2022年の生産量はわずか7,310トンとなりました。この推移は、マルタの農業構造の変化や社会的・環境的な要因、さらには世界市場の影響を反映しており、特に近年の減少傾向は顕著です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 8,230
12.59% ↑
2022年 7,310
-13.18% ↓
2021年 8,420
-19.96% ↓
2020年 10,520
6.91% ↑
2019年 9,840
-12.06% ↓
2018年 11,190
2.64% ↑
2017年 10,902
-11.94% ↓
2016年 12,380
3.36% ↑
2015年 11,977
-7.33% ↓
2014年 12,925
5.19% ↑
2013年 12,287
10.28% ↑
2012年 11,142
-20.15% ↓
2011年 13,953
-4.25% ↓
2010年 14,572
25.99% ↑
2009年 11,566
-26.55% ↓
2008年 15,746
6.1% ↑
2007年 14,841
-9.85% ↓
2006年 16,462
29.83% ↑
2005年 12,680
-17.87% ↓
2004年 15,438
7.71% ↑
2003年 14,333
30.87% ↑
2002年 10,952
-46.47% ↓
2001年 20,459
-1.35% ↓
2000年 20,738
-4.71% ↓
1999年 21,763
0.96% ↑
1998年 21,555
3.36% ↑
1997年 20,854
-56.55% ↓
1996年 48,000
166.67% ↑
1995年 18,000
-4.76% ↓
1994年 18,900
-5.03% ↓
1993年 19,900
1.02% ↑
1992年 19,700
-10.41% ↓
1991年 21,990
14% ↑
1990年 19,290
0.47% ↑
1989年 19,200
6.67% ↑
1988年 18,000
5.88% ↑
1987年 17,000
6.25% ↑
1986年 16,000
6.67% ↑
1985年 15,000 -
1984年 15,000
-16.66% ↓
1983年 17,999
7.62% ↑
1982年 16,725
-5.29% ↓
1981年 17,660
1.68% ↑
1980年 17,368
25.22% ↑
1979年 13,870
14.67% ↑
1978年 12,096
-21.69% ↓
1977年 15,446
-14.87% ↓
1976年 18,143
11.59% ↑
1975年 16,258
-1.38% ↓
1974年 16,486
28.44% ↑
1973年 12,836
3.48% ↑
1972年 12,404
2.64% ↑
1971年 12,085
39.78% ↑
1970年 8,646
-11.83% ↓
1969年 9,806
125.22% ↑
1968年 4,354
2.04% ↑
1967年 4,267
-22.22% ↓
1966年 5,486
-6.89% ↓
1965年 5,892
-25.06% ↓
1964年 7,862
1.02% ↑
1963年 7,783
51.27% ↑
1962年 5,145 -
1961年 5,145 -

マルタのトマト生産量推移を振り返ると、1961年から1996年にかけて、周期的な増減を伴いながらも全体的な増加傾向が見られました。1996年には48,000トンと記録的な生産量に到達し、これはマルタの農業における重要な成果を象徴しています。しかし、この後急激に減少に転じ、特に2019年以降の落ち込みは著しく、2022年にはわずか7,310トンにまで減少しました。このようなトマト生産の長期的な推移には、いくつかの背景と課題が考えられます。

まず、地政学的および経済的背景について、多くの影響がトマト生産の変化に関与したと考えられます。マルタは地中海の島国であり、限られた耕作地と水資源を利用して農業が営まれています。1960年代および1970年代には、国内農業の拡張と技術導入が進められ、生産性向上が達成されました。しかし、1990年代以降になると、農業労働力の減少、高騰する生産コスト、そしてEU(欧州連合)加盟後の市場競争激化など、外的な要因が顕著になり、農業の持続可能性に影を落としました。

次に、環境要因も無視できません。マルタのトマト生産は、干ばつ、水不足、そして気候変動の影響を直接受けています。限られた灌漑用水の不足や、塩害の進行による土壌劣化が長期的に農業活動に悪影響を及ぼしています。特に2000年代以降、気候変動の影響は地中海地域において深刻化しており、マルタのトマト生産にとっても大きな回復の課題となっています。

さらに、2020年からの新型コロナウイルス(COVID-19)の流行も間接的に影響を与えました。感染防止のための措置と、それに伴う物流の停滞、労働力不足、国内外需要の変動といった要因は、農業全般に影響を及ぼし、特に小規模農家にとっては大きな打撃となりました。

1996年の記録的な生産量以降の下落傾向を覆すことは容易ではありませんが、いくつかの具体的な対策が挙げられます。まず、行政や国際機関の支援による環境保護技術の導入が重要です。例えば、淡水不足に対処する小規模な脱塩装置の導入や、塩害耐性があるトマト品種の開発が有効です。また、農業労働力の確保には、地元若年層への農業教育や移民労働者の受け入れの強化が解決策となるでしょう。

さらに、EU加盟国としてのメリットを活かし、大規模農業技術や効率的な物流ネットワークを導入することは競争力の向上に役立つでしょう。特に地中海地域全体での農業協力を推進し、トマトなどの特産品のブランド化を図ることで、国際市場での価値を高めることが可能です。また、気候変動対策として、灌漑技術の効率化や農法の見直しを通じて、地球環境の変動に対応する「レジリエント」な農業を実現することも求められます。

結論として、マルタのトマト生産量の減少は、地政学的な構造変化、環境的要因、そして最近のウイルス流行の複合的影響を受けた結果といえます。今後、国際的な技術協力や地域間の連携、政策的なサポートが鍵となります。この小規模な島国が、その農業資源を持続可能な形で維持発展させ、地中海地域の中で価値ある農業モデルを提供する未来に向けた取組みが期待されます。