FAO(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、マルタのニンジン・カブ類の生産量は、1998年の1,900トンをピークに、全体的な減少傾向が見られます。近年では1,000トン前後で推移しており、2023年には1,040トンを記録しました。年間ごとの変動はあるものの、長期的な視点で見ると減少が顕著です。
マルタのニンジン・カブ類生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 1,040 |
-0.95% ↓
|
2022年 | 1,050 |
10.53% ↑
|
2021年 | 950 |
-15.93% ↓
|
2020年 | 1,130 |
8.65% ↑
|
2019年 | 1,040 |
-11.11% ↓
|
2018年 | 1,170 |
5.69% ↑
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2017年 | 1,107 |
-23.98% ↓
|
2016年 | 1,456 |
15.41% ↑
|
2015年 | 1,262 |
2.33% ↑
|
2014年 | 1,233 |
-5.66% ↓
|
2013年 | 1,307 |
33.23% ↑
|
2012年 | 981 |
-26.07% ↓
|
2011年 | 1,327 |
-2.78% ↓
|
2010年 | 1,365 |
28.77% ↑
|
2009年 | 1,060 |
-6.11% ↓
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2008年 | 1,129 |
-22.14% ↓
|
2007年 | 1,450 |
13.46% ↑
|
2006年 | 1,278 |
22.53% ↑
|
2005年 | 1,043 |
-37.36% ↓
|
2004年 | 1,665 |
-4.31% ↓
|
2003年 | 1,740 |
-14.83% ↓
|
2002年 | 2,043 |
5.75% ↑
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2001年 | 1,932 |
1.68% ↑
|
2000年 | 1,900 |
2.7% ↑
|
1999年 | 1,850 |
-2.63% ↓
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1998年 | 1,900 | - |
マルタのニンジン・カブ類の生産量の推移を見ると、1998年から2023年の間における全体的な減少傾向が明らかです。1998年の1,900トンから始まり、2000年代中頃に1,000トン台前半まで急減した後、近年では1,000トン前後でほぼ横ばい状態を保っています。この生産量の推移を分析するためには、複数の背景要因に目を向ける必要があります。
まず第一に、マルタの地理的条件と有限な耕地面積が挙げられます。マルタは地中海中央に位置する小規模国家で、農業に利用可能な土地が限られています。ニンジンやカブ類は水分を比較的多く必要とする野菜群であり、この需要がマルタの乾燥した気候および限られた水資源と衝突している可能性があります。特に夏季の高温と降雨量の減少により灌漑の必要性が増え、それが生産コストの上昇につながったと考えられます。
次に、2000年代に顕著だった生産量減少の一因として、地球温暖化の影響や極端気象現象も無視できません。例えば2003年には1,740トン、2005年には1,043トンと、生産量が急激に減少しており、気候要因がこれに関与している可能性があります。また、農業に適した労働力の確保が困難であることも農業生産量に影響していると考えられます。マルタは高齢化が進む一方で、若年労働人口が他の産業へ流出する傾向が見られ、特に付加価値が低いとされる農業分野での人手不足が生じています。
さらに、かつて農業補助金が縮小されたことや、自給自足から輸入食品への依存度が高まったことも、国の農業生産の減少を加速させました。国際的な貿易自由化により、近隣諸国から安価な農産物が流入した結果、国内生産が競合に勝てなかったという市場要因も少なからず影響を与えたと推察されます。
こうした背景に基づき、未来に向けた課題と具体的な提言を以下に示します。
まず、農業生産量を持続可能な形で確保するためには、水資源管理の最適化と灌漑技術の近代化が必要です。例えば、地下水の過度な利用を抑えるために雨水の効率的活用や一定の補助金を伴う最新のドリップ・イリゲーション技術の導入などが考えられます。また、農業従事者の確保を目的とした若者向けの支援策、例えば農業の教育訓練プログラムや葬農業ビジネスインキュベーションの展開も効果的といえます。これに加え、政府は持続可能な農地保存政策を通じて、都市化による農地喪失を食い止める必要があります。
長期的な視点では、気候変動への適応、特に干ばつ耐性作物の開発にも着手する必要があります。研究機関や近隣諸国との共同プロジェクトにより、地中海気候に適した新品種の開発や、その栽培技術の普及を進めることが重要です。
マルタの地政学的リスクとしては、気候変動が地中海諸国全体に及ぼす影響を考慮する必要があります。同じく農業生産に影響を受ける他国との農産物輸出入のネットワークを強化し、柔軟な貿易協定を確保することで、将来的な食料供給リスクを軽減させることが重要といえます。
総じて、ニンジン・カブ類の生産量の減少傾向は、単なる国内問題のみならず、気候変動、地政学的要素、労働市場の変化など多面的な影響を受けています。これらへの適切な対応を行うことで、マルタは持続可能な農業を実現し、国民の食料安全保障を強化するための道筋を見出すことができるでしょう。