Food and Agriculture Organizationが発表した最新データによると、マルタの羊飼養数は1960年代から顕著に減少を続け、1980年代の最も低い水準を経て、1990年代には突然16,000匹の高い水準に達しました。それ以降は再び波状的な動きを見せ、2000年代中盤から最近の2022年にかけて増加傾向が見られます。このような推移から、マルタにおける羊飼養数は社会的・経済的要因を大きく反映したものと推測されます。
マルタの羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 14,470 |
2021年 | 12,730 |
2020年 | 13,150 |
2019年 | 13,160 |
2018年 | 13,170 |
2017年 | 11,739 |
2016年 | 11,523 |
2015年 | 11,076 |
2014年 | 10,526 |
2013年 | 10,930 |
2012年 | 11,697 |
2011年 | 11,887 |
2010年 | 12,379 |
2009年 | 12,889 |
2008年 | 12,315 |
2007年 | 12,172 |
2006年 | 14,642 |
2005年 | 14,130 |
2004年 | 14,861 |
2003年 | 12,253 |
2002年 | 8,945 |
2001年 | 9,598 |
2000年 | 12,000 |
1999年 | 16,000 |
1998年 | 16,000 |
1997年 | 16,000 |
1996年 | 16,000 |
1995年 | 16,000 |
1994年 | 16,000 |
1993年 | 16,000 |
1992年 | 16,000 |
1991年 | 16,000 |
1990年 | 16,000 |
1989年 | 5,940 |
1988年 | 5,800 |
1987年 | 5,600 |
1986年 | 5,400 |
1985年 | 5,000 |
1984年 | 5,000 |
1983年 | 4,719 |
1982年 | 4,037 |
1981年 | 4,474 |
1980年 | 4,947 |
1979年 | 5,109 |
1978年 | 5,389 |
1977年 | 6,367 |
1976年 | 7,742 |
1975年 | 8,049 |
1974年 | 7,180 |
1973年 | 7,047 |
1972年 | 7,020 |
1971年 | 7,530 |
1970年 | 8,401 |
1969年 | 8,820 |
1968年 | 9,034 |
1967年 | 9,962 |
1966年 | 10,691 |
1965年 | 10,485 |
1964年 | 11,227 |
1963年 | 11,062 |
1962年 | 11,000 |
1961年 | 11,603 |
マルタの羊飼養数の推移を分析すると、いくつかの重要なトレンドと要因が見えてきます。初期のデータである1961年には11,603頭の羊が飼養されていましたが、この数値は1960年代を通じて緩やかな減少傾向をたどり、1970年代後半には5,000頭を下回る水準に達しています。この減少は、農業の機械化の進展や、より収益性が高い他の畜産・農作物への転換が原因だったと考えられます。また、都市化や観光産業の拡大も農村地域の圧縮をもたらした可能性が指摘されます。
1980年代に入ると最低水準の約4,000頭台を記録しましたが、その後、1990年には一転して16,000頭に急増しています。この急激な増加には、統計上の集計方式の変更や政府による農業支援政策(例えば、家畜飼養を奨励する補助金)が関与した可能性があります。しかしながら、2000年に再び12,000頭へ急減している点を考慮すると、この急増の持続性や信頼性には課題があるといえます。
2003年から2010年にかけての羊飼養数は一時的に12,000頭台を回復していますが、その後、2013年には10,930頭と再び減少に転じました。これは世界的な金融危機が発生し、飼料価格の上昇や農家経営への圧迫が影響した可能性があります。しかし2018年以降、マルタの羊飼養数は再び増加し、特に2022年には14,470頭と大幅に増えています。この増加の背景には、地域特産品としての羊乳を用いたチーズやその他の乳製品の人気向上、観光業と農業の融合による農家の新たな収益源が挙げられるでしょう。
しかし現状、いくつかの課題が残っています。羊飼養数の変動は非常に大きく、その安定性確保が急務です。マルタの国土は狭小な島国であり、飼料や牧草地面積の制約が畜産規模の維持を難しくしています。また、気候変動による降水量の変化や極端な気象条件の発生は、牧草生産や畜産への影響をさらに大きくさせる可能性があります。
この課題に対処するためには、いくつかの具体的な政策提案が考えられます。まず、収益性を高めるために羊乳製品のさらなるブランド化を進めることが重要です。「マルタ産」としての知名度を活かし、国外市場への輸出拡大を図ることができるでしょう。第二に、畜産に適した土地利用を進めるため、効率的な土地利用計画を策定することが求められます。第三に、気候変動への対応として、水管理技術の導入や耐乾燥性のある飼料作物の利用を支援する仕組みが重要です。
今回のデータは、マルタ農業が多様な社会経済的および環境的要因に影響を受けやすいことを示しています。この小規模な島国において、持続可能な羊飼養業の発展を進めるためには、国際協力や技術導入も含めた多角的なアプローチの必要性が明らかです。国際連合食糧農業機関や欧州連合との連携をさらに深め、資源の効率的利用を図ることが未来に向けた鍵となるでしょう。