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マルタのニンニク生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の2024年7月に更新されたデータによれば、マルタのニンニク生産量は1960年代において急伸した後、中長期的に減少傾向を示しています。1967年にピークの4,108トンを記録したものの、それ以降は変動の幅が大きく、2000年代からさらに大幅な減少となりました。2023年の生産量は320トンに留まり、ピーク時の約8%に減少しています。この長期的な減少傾向は、地政学的背景や気候条件の変化、農業政策の影響などが複合的に作用した結果とみられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 320
-33.33% ↓
2022年 480
2.13% ↑
2021年 470
-12.96% ↓
2020年 540 -
2019年 540
-6.9% ↓
2018年 580
62.01% ↑
2017年 358
-25.32% ↓
2016年 479
-22.12% ↓
2015年 616
-0.24% ↓
2014年 617
-15.01% ↓
2013年 726
21.81% ↑
2012年 596
10.99% ↑
2011年 537
4.07% ↑
2010年 516
-21.7% ↓
2009年 659
19.38% ↑
2008年 552
26.03% ↑
2007年 438
-23.02% ↓
2006年 569
11.79% ↑
2005年 509
7.16% ↑
2004年 475
-43.72% ↓
2003年 844
58.95% ↑
2002年 531
-12.52% ↓
2001年 607
-47.4% ↓
2000年 1,154
-1.87% ↓
1999年 1,176
12.21% ↑
1998年 1,048
-1.78% ↓
1997年 1,067
6.7% ↑
1996年 1,000
-20.99% ↓
1995年 1,266
-15.79% ↓
1994年 1,503
-10.6% ↓
1993年 1,681
-16.02% ↓
1992年 2,002
9.61% ↑
1991年 1,826
-1.92% ↓
1990年 1,862
-6.9% ↓
1989年 2,000 -
1988年 2,000 -
1987年 2,000 -
1986年 2,000 -
1985年 2,000 -
1984年 2,000 -
1983年 2,000 -
1982年 2,000 -
1981年 2,000 -
1980年 2,000 -
1979年 2,000 -
1978年 2,000 -
1977年 2,000
-20% ↓
1976年 2,500 -
1975年 2,500
13.64% ↑
1974年 2,200 -
1973年 2,200
-15.38% ↓
1972年 2,600
4% ↑
1971年 2,500
19.05% ↑
1970年 2,100
-30% ↓
1969年 3,000
45.49% ↑
1968年 2,062
-49.81% ↓
1967年 4,108
36.93% ↑
1966年 3,000
20% ↑
1965年 2,500
25% ↑
1964年 2,000 -
1963年 2,000
33.33% ↑
1962年 1,500 -
1961年 1,500 -

マルタにおけるニンニクの生産量は、1960年代から1970年代にかけて高い水準で推移していました。特に1967年には4,108トンを記録し、過去最も高い生産量となっています。しかしながら、それ以降は20世紀末から長期的な減少傾向に入りました。2000年代に入ると生産量は1,000トンを大きく下回り、2010年代においても500トン前後と低迷しました。そして近年では、2023年の320トンと著しい縮小を見せています。

この動向には、いくつかの要因が影響していると考えられます。まず、マルタは地中海に位置する小国であり、土地と資源が限られています。農業用地の縮小や都市化の進展に伴い、ニンニクの栽培面積が減少したと推測されます。また、競争力のある価格で流通する他国、特に中国やインドなどの主要生産国からの輸入品の影響も無視できません。これらの国々は国土面積が広く、集約農業を行うことで生産効率を高めています。例えば、中国では世界のニンニク生産量の大部分を占め、生産コストの低さと輸出競争力で市場を支配する状況にあります。

一方、気候変動による天候の不確実性や、乾燥化した環境により、マルタの農業はさらに厳しい状況に置かれています。特に雨量の不足や高温がニンニクの栽培環境に影響を与え、品質や収穫量にマイナスの影響を及ぼしている可能性があります。さらに昨今では、新型コロナウイルスの影響でサプライチェーンが混乱し、ニンニクの生産から流通に至るまで全体で悪影響が広がった可能性もあります。

マルタ政府や農業関係者が取り組むべき課題として、まず挙げられるのは、地方農業の保護政策や支援の強化です。他国の安価な輸入品との競争に対抗するため、地域ブランドの確立や高付加価値のニンニク製品開発が有効と考えられます。例えば、有機栽培による高品質製品の輸出や観光業との連携による地元産品のマーケティング強化が期待できます。

また、持続可能な農業の推進も重要です。気候変動への適応策として、灌漑技術の高度化や乾燥耐性の高い品種の導入が推奨されます。さらには、地域間協力の枠組みづくりにより、EUの農業助成金を活用してインフラや技術力の向上を図ることも重要です。

一方で、地政学的リスクとして挙げられるのは、輸入品への依存が高まることで自国の食糧安全保障が脅かされる可能性です。輸入先が紛争や貿易摩擦などの影響を受けた場合、国内での供給が不安定となるリスクが想定されます。そのため、持続可能な国産生産体系を構築することで、経済や社会の安定に寄与することが目指されるべきです。

結論として、マルタのニンニク生産量の長期的な減少は、多様な内外的要因が絡み合い複雑な現象となっています。この現状を踏まえ、近代的な農業技術の導入や政策支援による生産性向上を基盤に、新たな市場機会を創出するとともに、気候変動に対応した農業の深化が求められるでしょう。国際社会との協力やEUの支援を活用し、小国の特性を活かした効率的な農業モデルを構築することが鍵となると考えられます。

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