国際連合食糧農業機関(FAO)が提供した最新データによると、マルタのオリーブ油生産量は長期的には微増傾向を見せていましたが、一部の年では大幅な変動が確認されています。特に2000年代後半以降の生産量には著しい増加が見られ、2014年から2016年にかけては13トンから17トンと急増しています。一方で、2020年にはゼロトンとなるなど、生産量の安定性に課題がある状況です。
マルタのオリーブ油生産量推移(1961年~2021年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2021年 | 7 |
4260% ↑
|
2020年 | 0 |
-97.49% ↓
|
2019年 | 6 |
-39.66% ↓
|
2018年 | 10 |
-1.88% ↓
|
2017年 | 10 |
-39.81% ↓
|
2016年 | 17 |
8.19% ↑
|
2015年 | 16 |
22.9% ↑
|
2014年 | 13 |
41.48% ↑
|
2013年 | 9 |
10.53% ↑
|
2012年 | 8 |
17.81% ↑
|
2011年 | 7 |
151.84% ↑
|
2010年 | 3 |
115.87% ↑
|
2009年 | 1 |
-41.67% ↓
|
2008年 | 2 |
-29.41% ↓
|
2007年 | 3 |
54.55% ↑
|
2006年 | 2 |
-50% ↓
|
2005年 | 4 |
-12% ↓
|
2004年 | 5 |
733.33% ↑
|
2003年 | 1 | - |
2002年 | 1 |
200% ↑
|
2001年 | 0 |
-66.67% ↓
|
2000年 | 1 |
-25% ↓
|
1999年 | 1 |
100% ↑
|
1998年 | 0 |
-81.82% ↓
|
1997年 | 2 |
10% ↑
|
1996年 | 2 | - |
1995年 | 2 |
25% ↑
|
1994年 | 1 |
-20% ↓
|
1993年 | 2 |
-33.33% ↓
|
1992年 | 3 |
15.38% ↑
|
1991年 | 2 |
-18.75% ↓
|
1990年 | 3 |
6.67% ↑
|
1989年 | 3 |
-16.67% ↓
|
1988年 | 3 |
-14.29% ↓
|
1987年 | 4 |
5% ↑
|
1986年 | 4 | - |
1985年 | 4 | - |
1984年 | 4 |
-4.76% ↓
|
1983年 | 4 |
5% ↑
|
1982年 | 4 |
42.86% ↑
|
1981年 | 3 |
-6.67% ↓
|
1980年 | 3 |
-11.76% ↓
|
1979年 | 3 | - |
1978年 | 3 |
-26.09% ↓
|
1977年 | 4 |
27.78% ↑
|
1976年 | 3 |
-5.26% ↓
|
1975年 | 3 |
-9.52% ↓
|
1974年 | 4 |
90.91% ↑
|
1973年 | 2 |
37.5% ↑
|
1972年 | 1 |
-57.89% ↓
|
1971年 | 3 |
72.73% ↑
|
1970年 | 2 |
-35.29% ↓
|
1969年 | 3 |
-5.56% ↓
|
1968年 | 3 |
5.88% ↑
|
1967年 | 3 |
-5.56% ↓
|
1966年 | 3 |
-5.26% ↓
|
1965年 | 3 |
-5% ↓
|
1964年 | 4 |
17.65% ↑
|
1963年 | 3 |
6.25% ↑
|
1962年 | 3 |
6.67% ↑
|
1961年 | 3 | - |
マルタにおけるオリーブ油生産量の推移を確認すると、1961年から2000年初頭にかけて、ほぼ1〜4トンという低水準で推移しており、頻繁に微減が見られる状態が続いていました。しかしながら、2004年を転機として、短期的な増加が見られ、その後2011年以降は10トン以上を記録するようになりました。特筆すべきは2014年から2016年の間で、13トンから17トンに達したことです。この期間はマルタのオリーブ油生産における最高水準を達成した重要な年と言えます。しかしながら、その後は2017年から減少の兆候が現れ、2020年にはゼロトンまで落ち込みました。このような変動の大きさは、地域の気候条件や栽培技術への依存度が強い農産物の特徴を反映していると言えるかもしれません。
歴史的に、マルタのオリーブ油生産が低水準で留まっていた理由としては、農業用地の制限が挙げられます。マルタは国土面積が約316平方キロメートルと狭小で、他のヨーロッパ諸国と比較して農業活動の選択肢が限られています。この背景により、生産規模が長らく小規模にとどまっていたことは理解されます。しかし、2004年以降の増加傾向は、農業政策や栽培技術の改善、もしくは地元市場や国際市場への需要拡大が影響していると考えられます。
近年の課題としては、天候や地中海地域特有の気候リスクが挙げられます。特に、2020年に生産量がゼロとなったのは、異常気象や病害などの影響が強く疑われます。地中海地域では、地球温暖化の影響がオリーブ栽培に大きな打撃を与えつつあり、特に乾燥や豪雨の頻発が深刻な問題となっています。また、2020年当時の新型コロナウイルス感染症による労働力確保の難しさも要因となった可能性があります。
今後の展望として、マルタのオリーブ油生産のさらなる拡大に向けて、効率的な農業政策が必要です。具体的には、乾燥や豪雨といった気候変動に強い栽培技術の導入や、栽培に適した支援品種の選択が考えられます。また、規模が小さいながらも高品質なオリーブ油を生産し、国際市場でのブランド価値向上を目指すことも重要です。観光業への依存が高いマルタにおいて、農業分野、特にオリーブ油製品を地元経済の新たな柱として育てる可能性は大いにあります。
さらに、地域間の協力を深めることも有用です。例えば、イタリアやギリシャと連携して技術やノウハウを共有することで、マルタ独自のオリーブ栽培の課題を克服する可能性があります。地政学的背景を考慮すると、マルタはヨーロッパ市場の一角として安定した農産物供給網の構築に貢献することが求められています。また、新型コロナウイルスや自然災害などのリスクを軽減するためには、労働力の確保や農業機械化の推進が重要です。
結論として、マルタのオリーブ油生産は過去数十年間、全体的に成長を示してきましたが、近年の変動やリスクへの対応が重要です。効率的な政策と国際協力、さらに品質向上の取り組みを進めることで、オリーブ油生産を国の持続可能な農業戦略の核とすることが期待されます。