ドミニカの牛乳生産量推移（1961年～2023年）

国際連合食糧農業機関（FAO）が発表した最新データによると、ドミニカにおける牛乳生産量は1961年から2023年にかけて、短期的な変動はあったものの、長期間で見ると大きな上昇傾向を示しています。特に1970年代から1980年代にかけて急激な増加が見られ、その後は相対的に安定した水準で推移しています。2023年の生産量は7,024トンで、わずかではありますが持続的な増加の兆しを見せています。

ドミニカの牛乳生産量データを長期的に見ると、いくつかの特徴的な変動が確認できます。まず、1960年代には年間約500トン程度の小規模な生産に留まっていましたが、1970年代から急激に増加し、1975年には1,400トン、1980年には2,800トンと、わずか10年間で2倍以上の成長を遂げています。この成長は、農業政策の強化や効果的な乳牛品種の導入などによるものである可能性が高いと考えられます。また、1980年代においても成長は続き、1989年には6,620トンに達し、拡大期を迎えました。

一方で、1990年代以降は6,000トン前後で推移し、成長率が鈍化します。また、1992年や1995年など、一時的に生産量が減少する年も見られます。この減少要因には、天候不順や経済的な困難が影響している可能性があります。ただし、2000年代にはやや安定した生産量を示し、2010年には7,500トンと一時的に大幅な増加が見られました。この増加は、農業技術の改善や輸出需要の拡大が寄与したと考えられます。しかし、その後は緩やかな成長または停滞が続いており、特に2013年から2019年にかけては6,950トン前後でほぼ横ばいの時期が続きました。

直近では、2020年以降にゆるやかな回復傾向が見られ、2023年には7,024トンと過去最高値を更新しました。この成長には、近年の畜産業への投資や農業生産性向上の取り組みが背景にあると推測されます。ただし、近年の新型コロナウイルス感染症の影響は、他国同様、ドミニカの農業セクターにも少なからず影響を与えたと考えられます。物流の混乱や労働力不足などを克服しながらの生産増加は、評価に値します。

牛乳生産が安定しない地域的・社会的な課題もあります。気候の季節変動や地政学的リスク、さらには国内の経済的不安定さが影響する中で、いくつかの具体的な提言が考えられます。まず、気候変動に対応するため、生乳の保存や運搬過程を強化し、特に高温多湿な条件下でも品質を保持できる技術支援が重要です。また、地元の乳業協同組合や中小規模農家への資金援助や技術教育、さらに家畜飼料の安定供給体制の整備が、生産量向上に直接寄与するでしょう。

さらに、近隣諸国との経済協力や地域連携を深めることも重要です。たとえば、ハイチや中米諸国との牛乳や乳製品に関する貿易協定を結ぶことで、市場規模の拡大が期待されます。感染症や自然災害などのリスクも無視できないため、牛の健康管理システムや災害時の生産維持計画を組み込むべきです。

結論として、ドミニカの牛乳生産量は過去半世紀にわたって着実な増加を示しており、特に直近の回復傾向は注目に値します。今後、生産量をさらに伸ばすためには、国内基盤の強化と地域間協力を進めつつ、グローバルな市場機会を活かす柔軟な政策が必要です。国際機関やドナー国も、これらの取り組みを支援することで、持続可能な農業セクターの構築に寄与できると考えられます。