FAO(国際連合食糧農業機関)が2024年に更新したデータによれば、ドミニカの豚飼育数は1960年代初頭には約8,700頭を記録しましたが、1970年代にかけて減少の傾向が続きました。その後、1980年代には特に顕著な減少が見られ、1990年代から2000年以降にかけては約5,000頭付近で安定しています。2015年以降は微増トレンドが観察されるものの、大きな変動は見られない状態が続いています。これは、地域的および世界的な農業政策・貿易背景、疫病の影響、および経済的要因の複合的な影響を示している可能性があります。
ドミニカの豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 5,061 |
2021年 | 5,058 |
2020年 | 5,054 |
2019年 | 5,061 |
2018年 | 5,033 |
2017年 | 5,022 |
2016年 | 5,013 |
2015年 | 5,005 |
2014年 | 5,000 |
2013年 | 5,000 |
2012年 | 5,000 |
2011年 | 5,000 |
2010年 | 5,000 |
2009年 | 5,000 |
2008年 | 5,000 |
2007年 | 5,000 |
2006年 | 5,000 |
2005年 | 5,000 |
2004年 | 5,000 |
2003年 | 5,000 |
2002年 | 5,000 |
2001年 | 5,000 |
2000年 | 5,000 |
1999年 | 5,000 |
1998年 | 5,000 |
1997年 | 5,000 |
1996年 | 5,000 |
1995年 | 5,000 |
1994年 | 5,000 |
1993年 | 4,800 |
1992年 | 4,600 |
1991年 | 4,300 |
1990年 | 4,300 |
1989年 | 4,000 |
1988年 | 4,500 |
1987年 | 5,000 |
1986年 | 5,000 |
1985年 | 4,800 |
1984年 | 5,000 |
1983年 | 5,500 |
1982年 | 6,000 |
1981年 | 7,000 |
1980年 | 8,000 |
1979年 | 7,900 |
1978年 | 7,800 |
1977年 | 7,800 |
1976年 | 7,750 |
1975年 | 7,700 |
1974年 | 7,600 |
1973年 | 7,500 |
1972年 | 7,400 |
1971年 | 7,200 |
1970年 | 7,219 |
1969年 | 7,300 |
1968年 | 7,400 |
1967年 | 7,600 |
1966年 | 7,700 |
1965年 | 7,900 |
1964年 | 8,100 |
1963年 | 8,300 |
1962年 | 8,500 |
1961年 | 8,700 |
ドミニカの豚飼育数の推移は、過去約60年にわたって大きな変化を経験してきました。データによると、1961年の時点での飼育数は8,700頭に達していましたが、これ以降減少傾向が顕著となり、1970年代には7,000頭前後にまで縮小しました。この減少は、地元の畜産インフラや農業政策の不足、さらには市場需要の低迷による影響が考えられます。
特に注目すべきは、1980年代に経験した急激な下降です。1980年には国内飼育数が8,000頭でしたが、1984年には5,000頭に近づき、1989年には最低の4,000頭を記録しました。この時期は、グローバル市場の激動、食肉需要の低下、そして地域的な疫病発生が要因として挙げられる可能性があります。このような疫病の発生は、飼育農家にとって特に深刻な影響を及ぼし、生産コストが急増するとともに市場供給が圧迫される結果を招きました。
1990年代以降、豚の数はおおむね5,000頭程度で安定的に推移していますが、近年においてはわずかに増加の傾向が見られます。2015年には5,005頭、その後も増加が続き、2022年には5,061頭に達しました。この微増の背景には、地元市場の需要が復調しつつあることや、農家による飼育効率の向上、そして政府や国際機関による支援策が影響している可能性があります。
一方で、この数十年の間にドミニカの豚飼育業は他国と比較すると相対的な停滞を示しています。例えば、中国では同時期に豚肉の需要増加に伴い飼育数が大規模に増加しました。また、アメリカやヨーロッパ諸国も飼育技術や生産効率の面で優位に立っています。このような国々では、畜産業の規模拡大に国際貿易政策や技術革新が相まって進展していますが、ドミニカでは国内のインフラ整備や技術投資がおそらく十分ではなかったと言えるかもしれません。
また、地政学的リスクが豚飼育数に与える影響も無視できません。例えば、自然災害に脆弱なドミニカでは、ハリケーンや洪水などが畜産業に及ぼす影響が一定程度予測されています。近年発生した新型コロナウイルスのパンデミックも、輸送網や経済活動に悪影響をもたらし、小規模農家が育てる豚の供給チェーンに混乱を引き起こした要因の一つです。
これらを踏まえると、今後の政策課題も明確です。まず、豚飼育業における技術革新や効率向上が必要です。EUやアメリカなどが採用している飼育技術や自動化設備を部分的に導入するだけでも、収益性の改善が期待できるでしょう。また、小規模農家に対して低利な融資枠を設定することや、防災インフラを強化する支援が急務と言えます。それに加え、地元で消費される豚肉の需要を増大させるためのマーケティング戦略や観光業との連携も考慮すべきです。
さらに、広域的な地域間協力の枠組みも検討する価値があります。中米諸国と連携して、疫病対策や獣医学研究、輸出市場の拡大を目指す包括的な戦略を構築することが可能です。このような協力は、地政学的リスクの軽減にもつながるでしょう。
結論として、ドミニカの豚飼育数の推移は、農業や畜産業の重要性を改めて認識する契機となります。継続的な成長や安定した生産を目指すためには、農家支援、イノベーションの促進、そして国際的な協力が鍵を握ると言えるでしょう。