Food and Agriculture Organization(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、ドミニカのプランテン(調理用バナナ)の生産量は、1970年代から2023年までの間で数回の急激な増減を経ながらも、長期的には安定的な成長傾向を示しています。特に、1988年に6,217トンの急増を記録した後、1993年には8,097トンへと大幅に拡大しました。その後、2000年代にかけて生産量は安定を見せていますが、一部の減少期を挟みつつ2023年には8,699トンに達しています。このデータは、ドミニカ国内の農業および食品供給の動向を理解するうえで重要な指標といえます。
ドミニカのプランテン・調理用バナナ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 8,699 |
0.86% ↑
|
2022年 | 8,625 |
0.2% ↑
|
2021年 | 8,608 |
0.19% ↑
|
2020年 | 8,592 |
-0.57% ↓
|
2019年 | 8,642 |
-0.12% ↓
|
2018年 | 8,652 |
-0.02% ↓
|
2017年 | 8,654 |
1.14% ↑
|
2016年 | 8,556 |
0.84% ↑
|
2015年 | 8,485 |
3.84% ↑
|
2014年 | 8,171 |
-3.19% ↓
|
2013年 | 8,440 |
-1.85% ↓
|
2012年 | 8,599 |
-7.91% ↓
|
2011年 | 9,338 |
13.81% ↑
|
2010年 | 8,205 |
-20.47% ↓
|
2009年 | 10,317 |
36.85% ↑
|
2008年 | 7,539 |
17.08% ↑
|
2007年 | 6,439 |
-17.3% ↓
|
2006年 | 7,786 |
5.44% ↑
|
2005年 | 7,384 |
-5.43% ↓
|
2004年 | 7,808 |
2.15% ↑
|
2003年 | 7,644 |
1.18% ↑
|
2002年 | 7,555 |
-1.15% ↓
|
2001年 | 7,643 |
-5.17% ↓
|
2000年 | 8,060 |
6.22% ↑
|
1999年 | 7,588 |
0.38% ↑
|
1998年 | 7,559 |
0.85% ↑
|
1997年 | 7,495 |
0.54% ↑
|
1996年 | 7,455 |
-0.27% ↓
|
1995年 | 7,475 |
0.91% ↑
|
1994年 | 7,408 |
-8.51% ↓
|
1993年 | 8,097 |
22% ↑
|
1992年 | 6,637 |
8.31% ↑
|
1991年 | 6,128 |
88.09% ↑
|
1990年 | 3,258 |
-41.77% ↓
|
1989年 | 5,595 |
-10% ↓
|
1988年 | 6,217 |
192.98% ↑
|
1987年 | 2,122 |
-1.8% ↓
|
1986年 | 2,161 |
18.74% ↑
|
1985年 | 1,820 |
18.95% ↑
|
1984年 | 1,530 |
9.83% ↑
|
1983年 | 1,393 |
-10.99% ↓
|
1982年 | 1,565 |
5.89% ↑
|
1981年 | 1,478 |
9.97% ↑
|
1980年 | 1,344 |
-40.82% ↓
|
1979年 | 2,271 |
-17.51% ↓
|
1978年 | 2,753 |
0.36% ↑
|
1977年 | 2,743 |
16.72% ↑
|
1976年 | 2,350 | - |
ドミニカのプランテン生産量は、その長い歴史の中で気候変動、農業技術の発展、国際市場の需要変動といったさまざまな要因の影響を受けてきました。このデータを見ると、1976年から1980年にかけて生産量が急減していることが確認できます。この期間の背景には、干ばつや洪水などの自然災害、あるいはプランテン栽培に従事する農家のインフラや設備の不足といった問題が存在した可能性があります。特に1980年には1,344トンと最低水準を記録しています。
一方で、1982年以降は徐々に回復し、1988年には一気に6,217トンまで上昇しました。この大幅な増加の要因として、政府の農業支援策の導入や、灌漑技術の進化が挙げられるかもしれません。また、この時期に国際的な市場での調理用バナナの需要が高まったことも影響したと考えられます。その後、生産量は1993年の8,097トンまで増加を続け、以降は年間7,000トン前後の安定した水準が長期的に維持されています。
ただし、2009年に10,317トンという記録的な高生産量を達成した一方で、それ以降はわずかながらも減少傾向を示していました。しかし、近年では緩やかな回復が見られ、2023年には8,699トンと過去数年の数値を上回っています。こうした生産量の推移は、長年にわたる農業政策の成果や、プランテンを中心としたドミニカの農業セクターの回復力を反映しているとみられます。
このデータが示す現状を踏まえ、将来的には以下の課題と取り組みが重要になります。まず、安定生産のための気候変動対策が急務です。農地における灌漑システムの高度化、耐寒性や耐乾性を備えた品種の導入、または農業技術者の人材育成を進める必要があります。さらに、プランテンの輸出量拡大に向けての国際市場でのプレゼンス向上が重要です。最近ではアメリカやヨーロッパ市場で調理用バナナ製品の需要が拡大しており、これを活用するための流通インフラの整備も不可欠です。
また、地政学的な背景にも注意が必要です。ドミニカはカリブ海地域に位置しており、貿易ルートの安定性や、特に自然災害の影響を受けやすいという課題があります。これは2020年以降のパンデミックやハリケーンの影響によって農業セクターが一時的に圧迫されたことを見ても明らかです。このため、国際社会との連携による災害対策基金の整備や、地域内協力体制の強化が望まれます。
結論として、ドミニカのプランテン生産は長期的にみて自律的な成長を遂げてきましたが、未来に向けたさらなる安定と拡大を達成するためには、気候変動対策、流通インフラの充実、国際市場での戦略的アプローチといった複数の要素の統合的な対応が必要です。これらに取り組むことで、同国の農業セクター全体における競争力向上が見込まれます。