国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、オランダは1961年から2023年の間に牛乳生産量を大きく伸ばしてきました。1961年の生産量は約695万トンで、その後、1980年代前半には急成長し、近年では1400万トンを超えています。特に2023年には1468万5300トンと記録的な値を達成しました。この間には一時的な減少傾向や安定期を挟みつつも、全体的には生産量が増加していることが確認されています。
オランダの牛乳生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 14,685,300 |
1.04% ↑
|
2022年 | 14,533,740 |
2.23% ↑
|
2021年 | 14,217,250 |
-2.1% ↓
|
2020年 | 14,522,000 |
-0.23% ↓
|
2019年 | 14,555,000 |
3.3% ↑
|
2018年 | 14,090,000 |
-1.45% ↓
|
2017年 | 14,297,361 |
-0.19% ↓
|
2016年 | 14,324,294 |
7.45% ↑
|
2015年 | 13,330,873 |
6.88% ↑
|
2014年 | 12,473,023 |
2.13% ↑
|
2013年 | 12,212,690 |
4.6% ↑
|
2012年 | 11,675,448 |
0.29% ↑
|
2011年 | 11,641,718 |
0.13% ↑
|
2010年 | 11,626,123 |
1.37% ↑
|
2009年 | 11,468,570 |
1.62% ↑
|
2008年 | 11,285,910 |
2.03% ↑
|
2007年 | 11,061,750 |
0.66% ↑
|
2006年 | 10,989,100 |
1.31% ↑
|
2005年 | 10,847,000 |
-0.53% ↓
|
2004年 | 10,905,000 |
-1.53% ↓
|
2003年 | 11,075,000 |
3.73% ↑
|
2002年 | 10,677,000 |
-2.67% ↓
|
2001年 | 10,970,000 |
-1.66% ↓
|
2000年 | 11,155,000 |
-0.17% ↓
|
1999年 | 11,174,000 |
1.63% ↑
|
1998年 | 10,995,000 |
0.67% ↑
|
1997年 | 10,922,310 |
-0.82% ↓
|
1996年 | 11,012,592 |
-2.49% ↓
|
1995年 | 11,293,929 |
3.87% ↑
|
1994年 | 10,872,660 |
-0.73% ↓
|
1993年 | 10,952,650 |
-7.97% ↓
|
1992年 | 11,901,700 |
7.73% ↑
|
1991年 | 11,047,340 |
-1.59% ↓
|
1990年 | 11,226,000 |
-0.84% ↓
|
1989年 | 11,321,000 |
-0.95% ↓
|
1988年 | 11,430,000 |
-2.45% ↓
|
1987年 | 11,717,000 |
-7.81% ↓
|
1986年 | 12,710,000 |
1.48% ↑
|
1985年 | 12,525,000 |
-2.01% ↓
|
1984年 | 12,782,000 |
-3.39% ↓
|
1983年 | 13,231,000 |
4.12% ↑
|
1982年 | 12,708,000 |
4.61% ↑
|
1981年 | 12,148,000 |
3.08% ↑
|
1980年 | 11,785,000 |
1.93% ↑
|
1979年 | 11,562,000 |
1.72% ↑
|
1978年 | 11,367,000 |
7.11% ↑
|
1977年 | 10,612,000 |
1.16% ↑
|
1976年 | 10,490,000 |
2.63% ↑
|
1975年 | 10,221,000 |
3.09% ↑
|
1974年 | 9,915,000 |
6% ↑
|
1973年 | 9,354,000 |
4.5% ↑
|
1972年 | 8,951,000 |
6.66% ↑
|
1971年 | 8,392,000 |
1.87% ↑
|
1970年 | 8,238,000 |
4.08% ↑
|
1969年 | 7,915,000 |
1.59% ↑
|
1968年 | 7,791,000 |
3.6% ↑
|
1967年 | 7,520,000 |
3.84% ↑
|
1966年 | 7,242,000 |
1.4% ↑
|
1965年 | 7,142,000 |
2.67% ↑
|
1964年 | 6,956,000 |
-0.91% ↓
|
1963年 | 7,020,000 |
-3.43% ↓
|
1962年 | 7,269,000 |
4.54% ↑
|
1961年 | 6,953,000 | - |
オランダの牛乳生産量について詳しく分析すると、1961年以降、長期的な成長傾向が明らかです。1960年代から1970年代には穏やかな増加が見られ、特に1970年代後半から1980年代前半にかけては急成長を遂げました。例えば、1970年の823万8000トンから1983年の1323万1000トンへと、この13年間で約60%の増加を記録しています。この成長の背景には、酪農業の技術革新や国際市場の需要増加、さらにはEU農業政策の支援が大きく寄与したと考えられます。
しかし、1984年以降はEUの乳製品に対する生産制限政策である「ミルク・クオータ制度」が導入され、これにより生産量の増加は一旦抑えられました。その影響で、1984年から1989年にかけては安定または微減する傾向が続きました。この期間はオランダの酪農業にとって慎重な調整が求められた時期でした。
その後、1990年代以降、クオータ制度の中での生産効率向上や輸出需要への適応などが進み、生産量は再び徐々に上向き始めます。そして2015年にEUがミルク・クオータ制度を廃止したことを契機に、オランダの牛乳生産量は大幅に増加しました。この制度廃止後、特に2015年から2016年にかけて、約1年間で13%の増加を記録しています。この部分は、規制の解除による生産活動の自由度が増したことと、酪農業への投資が加速したことが影響していると分析できます。
2023年には1468万5300トンという過去最高の生産量を達成しましたが、これに伴う課題も生じています。特に環境面では、牛の飼育に関連する温室効果ガス排出量や水質汚染が深刻な問題となっています。オランダ政府はこれに対処すべく、窒素排出量の削減や持続可能な酪農業の推進に取り組んでいますが、多くの農家が規制の厳しさに対して不満の声を上げています。国内外の需要に応える一方で、持続可能性への配慮が求められる難しい状況です。
また、地政学的リスクとして、オランダ産乳製品の主要輸出先であるEU市場や英国との経済関係の変化も注視すべき点です。例えば、イギリスのEU離脱(ブレグジット)は輸出コストを増大させ、国際競争力に影響を及ぼしています。オランダはこうしたリスクを軽減するため、輸出先の多様化や非EU諸国への開拓を強化する必要があります。
未来に向けては、環境負荷を軽減しつつ生産量を維持するための政策が重要です。例えば、革新的技術を利用したメタン排出抑制や飼料の効率化が挙げられます。また、地域間での協力を深め、特に環境負担を軽減するためのノウハウを共有する取り組みも効果的です。さらに、消費者の健康志向やエコ志向に対応した高付加価値乳製品の開発も、新しい需要を創出する一助となるでしょう。
結論として、オランダの牛乳生産量は一定の増加を保っていますが、持続可能な発展のためには環境配慮型の酪農業への転換が不可欠です。政策的な支援と技術革新の融合により、世界的な食品需要の増加にも柔軟に対応できる仕組みづくりを進めていくべきです。また、地政学的リスクや国際貿易の変化に備えた戦略的なバランスも重要となります。