国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、オランダの羊飼養数は1961年から2022年の間で、最小で約43万匹(1961年)、最大で約195万匹(1992年)と大きく変動してきました。1960年代から1980年代までは増加傾向を示し、1990年代にピークに達したものの、その後は減少に転じ、近年では約72万匹(2022年)まで減少しています。この変化は農業政策の転換や土地利用の変化、消費需要の動向など、複数の要因が絡み合っていると考えられます。
オランダの羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 723,000 |
2021年 | 729,000 |
2020年 | 710,000 |
2019年 | 758,000 |
2018年 | 743,000 |
2017年 | 798,830 |
2016年 | 1,040,000 |
2015年 | 1,032,000 |
2014年 | 1,076,000 |
2013年 | 1,033,570 |
2012年 | 1,042,760 |
2011年 | 1,088,490 |
2010年 | 1,129,500 |
2009年 | 1,116,610 |
2008年 | 1,213,000 |
2007年 | 1,369,000 |
2006年 | 1,376,000 |
2005年 | 1,363,000 |
2004年 | 1,236,000 |
2003年 | 1,185,000 |
2002年 | 1,186,000 |
2001年 | 1,296,000 |
2000年 | 1,308,000 |
1999年 | 1,401,000 |
1998年 | 1,394,000 |
1997年 | 1,465,000 |
1996年 | 1,627,000 |
1995年 | 1,674,000 |
1994年 | 1,766,000 |
1993年 | 1,916,000 |
1992年 | 1,954,000 |
1991年 | 1,882,000 |
1990年 | 1,725,000 |
1989年 | 1,405,000 |
1988年 | 1,169,000 |
1987年 | 984,572 |
1986年 | 868,112 |
1985年 | 814,342 |
1984年 | 765,529 |
1983年 | 772,342 |
1982年 | 776,404 |
1981年 | 814,942 |
1980年 | 858,084 |
1979年 | 895,411 |
1978年 | 841,080 |
1977年 | 799,629 |
1976年 | 780,017 |
1975年 | 760,102 |
1974年 | 749,182 |
1973年 | 657,307 |
1972年 | 592,089 |
1971年 | 572,153 |
1970年 | 610,272 |
1969年 | 554,463 |
1968年 | 552,000 |
1967年 | 529,218 |
1966年 | 558,315 |
1965年 | 484,117 |
1964年 | 443,090 |
1963年 | 468,368 |
1962年 | 482,305 |
1961年 | 438,072 |
オランダの羊飼養数の推移は農業、食肉産業、環境政策など多岐にわたる分野の変化を映し出しています。このデータからは、おおむね3つの重要な時期に分類される長期的な動向が見られます。まず、1960年代から1970年代半ばにかけては持続的な増加がありました。この増加は、当時の農業の集約化や、ヨーロッパ全般での需要拡大が背景にありました。その後、1980年代から1990年代初頭にかけて劇的な増加が見られました。飼養数は1988年の約116万匹から1992年にはその1.6倍の195万匹にまで達しています。この急増は、欧州連合(EU)内での補助金政策や農家の出荷増加の動機付けなど、政策的要因が関連していると考えられます。
しかし、1990年代後半から飼養数は減少傾向に転じました。この減少の一因として、欧州同盟内の農業政策の見直しが挙げられます。特に環境負荷の削減が求められる中、羊の生産が環境対応型の農業政策にそぐわなくなりつつありました。また、輸出競争の激化や、国内需要の変化も影響していると考えられます。2000年代に入り、オランダの羊飼養数は幾度かの微増を挟みつつも、全体的には緩やかな減少を続けています。2022年のデータを見ると、ピーク時の1992年と比べて60%以上減少しており、過去最大規模から大きくその姿を変えました。
また、新型コロナウイルスのパンデミックが引き起こした消費行動の変化も、最近の飼養数減少に影響を与えている可能性があります。多くの国で外食産業が落ち込む中、羊肉の消費量が減少したことも影響しているかもしれません。ただし、この傾向は他のヨーロッパ諸国(例えば、イギリスやフランス)よりも緩やかです。
現在の水準では、オランダの羊飼養業は収益力と持続可能性の観点からいくつかの課題に直面しています。例えば、土地利用の競争が激化する中、飼料の確保が難しくなっていることや、環境への影響を評価する規制が強化されていることが挙げられます。他方、羊毛や乳製品の需要創出が特化型の農家に注目される新しい動きも見られます。
地政学的な背景として、農業政策に対する影響力の大きいEUの動向に加え、オランダの輸出志向の強い経済構造がこれらの動態に関与しています。特に、貿易紛争や国際輸出市場の競争力は、羊飼養数の維持可能性に直接的な影響を与えると考えられます。
今後の課題として、国内需要をどのように増加させ、持続可能な農業として羊飼育を位置づけるかが重要になるでしょう。具体的な対策として、以下のような点が挙げられます。第一に、羊を含む家畜の生産に付加価値をつけるための「地産地消」の促進が考えられます。第二に、政策的な枠組みを利用し、環境負荷を軽減する技術を導入して生産効率を改善することが求められます。さらに、国際市場での競争力を保つため、輸出先の多様化やブランド戦略の強化も鍵となります。
オランダは長い農業の歴史を持つ国ですが、近年の羊飼養数の減少は、世界中の農業と食糧システムの変化を反映していると言えます。これからの持続可能な農業の構築に向けて、新しい技術や市場の変化に合わせた柔軟な対応が必要です。今後も、データを注視しながら継続的な方向性を模索していくことが重要です。