Food and Agriculture Organizationが発表した最新データによると、オランダの豚飼育数は1961年の約286万頭から1987年には約1435万頭に達し、1970年代から1980年代にかけて急激に増加しました。しかし、1990年代以降は全般的に減少傾向を示し、2022年には約1070万頭とピーク時の約75%の水準に縮小しています。この長期の変化は、農業の経済的要因、政策、環境問題などが複合的に関連しています。
オランダの豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 10,706,000 |
2021年 | 10,872,000 |
2020年 | 11,541,000 |
2019年 | 11,921,000 |
2018年 | 11,909,000 |
2017年 | 12,409,000 |
2016年 | 12,479,000 |
2015年 | 12,603,000 |
2014年 | 12,238,000 |
2013年 | 12,212,300 |
2012年 | 12,233,650 |
2011年 | 12,429,140 |
2010年 | 12,254,970 |
2009年 | 12,186,450 |
2008年 | 11,900,000 |
2007年 | 11,600,000 |
2006年 | 11,200,000 |
2005年 | 11,200,000 |
2004年 | 11,100,000 |
2003年 | 11,100,000 |
2002年 | 11,500,000 |
2001年 | 12,800,000 |
2000年 | 13,100,000 |
1999年 | 13,600,000 |
1998年 | 12,800,000 |
1997年 | 13,700,000 |
1996年 | 13,900,000 |
1995年 | 14,100,000 |
1994年 | 13,900,000 |
1993年 | 13,800,000 |
1992年 | 13,800,000 |
1991年 | 13,400,000 |
1990年 | 13,700,000 |
1989年 | 13,729,000 |
1988年 | 13,934,000 |
1987年 | 14,348,744 |
1986年 | 13,481,358 |
1985年 | 12,382,600 |
1984年 | 11,146,085 |
1983年 | 10,656,113 |
1982年 | 10,253,907 |
1981年 | 10,315,234 |
1980年 | 10,137,516 |
1979年 | 9,721,803 |
1978年 | 9,171,571 |
1977年 | 8,288,015 |
1976年 | 7,507,124 |
1975年 | 7,279,071 |
1974年 | 6,719,074 |
1973年 | 6,425,045 |
1972年 | 6,232,782 |
1971年 | 6,158,472 |
1970年 | 5,650,360 |
1969年 | 4,755,157 |
1968年 | 4,682,525 |
1967年 | 4,295,348 |
1966年 | 3,918,172 |
1965年 | 3,751,891 |
1964年 | 3,268,366 |
1963年 | 2,923,020 |
1962年 | 2,800,416 |
1961年 | 2,860,269 |
オランダはEU内でも大規模な畜産国として知られており、とくに豚肉の生産と輸出で主要な役割を果たしてきました。データを確認すると、1961年には約286万頭に過ぎなかった豚の飼育数が1978年には900万頭を超え、その後1980年代に入るとさらに急増し、1987年には約1435万頭に達しました。この大幅な増加は技術革新や農地の集約化、国際市場での需要の増加などが後押ししたと考えられます。また大型の集約型農場が普及したことにより、高効率の飼育体制が実現しました。
しかし、1990年代以降、オランダの豚飼育数は徐々に減少し始めました。この減少の背景には、いくつかの重要な要因が挙げられます。まず、EUの農業政策が転換し、農業支援金の削減や環境規制の強化が進められました。また、オランダ国内では持続可能な発展を目指し、集約的な畜産の影響を制御するための法律や規制が施行されました。特に豚の飼育に伴う二酸化炭素やアンモニアの排出が環境問題として指摘され、これが農家の経営方針に大きな影響を及ぼしたと言えます。
さらに1997年から2001年にかけて発生した豚コレラ(伝染性の高い動物疾病)は、飼育頭数の急激な減少をもたらしました。その結果、豚農家の多くが生産規模を縮小または事業から撤退しました。疫病に加え、20世紀末以降に高まった動物福祉の意識の高まりも、飼育環境改善のコスト増加を引き起こし、経済的な要素として減少に寄与しています。
直近の2022年時点では約1070万頭と、かつてのピーク時に比べて約24%減少しています。この長期的な減少傾向は、グローバルな畜産の縮小に伴い、オランダ特有の課題に直面しているとも言えます。
今後さらに重要なのは、環境規制と経済的利益のバランスです。環境・動物福祉に配慮した産業への転換には、持続可能性が問われ、多国間での協力が欠かせません。例えば、EU全体での環境基準を調和させたり、国際市場での「環境にやさしい豚肉」のブランド形成を図ることが効果的な方策です。また、ノウハウや技術を共有するために他国との協働プログラムを創設することも検討すべきです。
さらに、オランダのような生産効率の高い国で推進されるべきは、環境負荷を大幅に削減する新たな技術の導入です。メタン削減技術や飼料改善に向けた研究開発を進め、現場に導入することで、コストを抑えつつ環境への影響を軽減することができます。最終的には、こうした転換は国内外の消費者の信頼獲得につながり、持続的な豚肉生産を実現するための鍵を握るでしょう。