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オランダのラズベリー生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、オランダのラズベリー生産量は、1960年代から2023年にかけて大幅な変動を見せました。初期の1960年代には年間生産量が5,000~8,000トンで推移していましたが、その後急激に減少し、1970年代には1,000トン未満の低水準が続きました。特に1976年では500トンと最低記録を更新しました。一方で、2000年代後半以降は増加傾向が見られ、2016年と2017年にはピークとなる6,500トンに達しました。しかし、その後は再び減少に転じ、2023年には3,210トンとやや低迷した水準にあります。この長期的な推移は、農業技術や経済政策、気候、国際市場動向と密接に関連していると言えます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,210
7% ↑
2022年 3,000
-17.58% ↓
2021年 3,640
1.11% ↑
2020年 3,600
-20.18% ↓
2019年 4,510
-1.96% ↓
2018年 4,600
-29.23% ↓
2017年 6,500 -
2016年 6,500
62.5% ↑
2015年 4,000
-11.11% ↓
2014年 4,500
28.88% ↑
2013年 3,492
26.92% ↑
2012年 2,751
11.7% ↑
2011年 2,463
11.36% ↑
2010年 2,212
225.25% ↑
2009年 680
-11.69% ↓
2008年 770
30.51% ↑
2007年 590
13.46% ↑
2006年 520
15.56% ↑
2005年 450
12.5% ↑
2004年 400 -
2003年 400
-20% ↓
2002年 500
25% ↑
2001年 400 -
2000年 400 -
1999年 400
33.33% ↑
1998年 300
-50% ↓
1997年 600
20% ↑
1996年 500 -
1995年 500
25% ↑
1994年 400 -
1993年 400 -
1992年 400
33.33% ↑
1991年 300 -
1990年 300 -
1989年 300
-25% ↓
1988年 400
33.33% ↑
1987年 300
-25% ↓
1986年 400
33.33% ↑
1985年 300
-50% ↓
1984年 600
-14.29% ↓
1983年 700 -
1982年 700 -
1981年 700 -
1980年 700
16.67% ↑
1979年 600
-40% ↓
1978年 1,000
66.67% ↑
1977年 600
20% ↑
1976年 500
-77.27% ↓
1975年 2,200
-4.35% ↓
1974年 2,300
-23.33% ↓
1973年 3,000
25% ↑
1972年 2,400
-25.09% ↓
1971年 3,204
-18.74% ↓
1970年 3,943
-23.21% ↓
1969年 5,135
25.43% ↑
1968年 4,094
-29.1% ↓
1967年 5,774
5.62% ↑
1966年 5,467
-8.44% ↓
1965年 5,971
-12.64% ↓
1964年 6,835
29.89% ↑
1963年 5,262
-23.47% ↓
1962年 6,876
-13.64% ↓
1961年 7,962 -

オランダのラズベリー生産量は、これまでに複雑な推移を示してきました。1960年代は、オランダ農業がまだ伝統的な栽培技術に依存していた時代で、比較的安定的な高生産量が維持されていました。しかし、その後の1970年代から1980年代にかけて、生産量が激減しました。この背景には、オランダ国内での農業政策の転換や国際競争激化、農地の用途転換などの要因があると考えられます。特に、オランダでは都市開発や花卉園芸(花や観葉植物の栽培業)への土地利用が進む中で、果実栽培の優先度が低下しました。さらに、この時期における気候条件の不安定化も、ラズベリー生産に影響を与えた可能性があります。

2000年代後半からの生産量回復の背景には、栽培技術の進歩や品種改良、ハイテク農業施設の導入が挙げられます。グリーンハウスや水耕栽培の採用により、生産効率が大幅に改善されました。また、健康志向の消費者需要増加を背景とした市場の拡大、特にEU域内や隣接国ドイツ、イギリスへ輸出する流通網の整備も貢献しました。この時期、農業技術や輸出を奨励する政策が、オランダのラズベリー生産を一時的に押し上げたと考えられます。

しかし、2020年代に入ると、再び生産量の減少が見られます。この要因の一つとして、気候変動の影響が指摘されています。高温化や異常気象が植物の成長を阻害し、病害虫の発生を助長するリスクが高まっています。また、ラズベリーは繊細な作物であるため、収穫労働コストが高い点が他の果実と比較してデメリットとなります。加えて、新型コロナウイルスのパンデミックによる国際物流の混乱や労働力不足が、近年の成長減速に拍車をかけたと考えられます。

将来的に考慮すべき課題として、まず挙げられるのは、気候変動への適応です。これには耐候性の高い品種の開発や、さらなる効率化を追求した栽培施設の普及が含まれます。また、ヨーロッパ地域では果物栽培における労働力の不足が共通の課題であるため、外国人労働者政策の見直しや、自動化技術の導入も重要となります。さらに、過剰な農薬・化学肥料使用を抑えるため、持続可能な農業技術を推進し、環境負荷を軽減することも国際的な流れの中で求められる方向性です。

地政学的観点から見ると、オランダのラズベリー生産には、EU域内の貿易政策の影響も無視できません。特に英国がEUを離脱したブレグジット以降、オランダ農産物の輸出条件に変更が生じました。この変化がラズベリーの取引にどう波及するのか注視が必要です。また、近年ではウクライナ紛争の影響でエネルギー価格が上昇しており、これがグリーンハウス栽培のコスト上昇を招いている点も無視できません。

結論として、オランダのラズベリー生産量は、農業技術の進歩に伴う一時的な増加を見せてきたものの、気候や国際市場、地政学的リスクなどの多くの課題に直面しています。これらを解決するために、政策的な支援として、耐候性品種研究への投資拡大、農業労働力の確保・効率化、さらには欧州内市場の強化が求められています。同時に、持続可能な農業の促進や地域協力の枠組み作りが、オランダ農業全体の競争力を高める鍵となるでしょう。

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