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アイルランドの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、アイルランドの牛乳生産量は1961年の約235万6000トンから始まり、2023年には約873万7000トンに達しています。特に2015年から2022年にかけて急増が見られましたが、2023年にはわずかに減少しています。この推移は、ヨーロッパの酪農政策や貿易、気候条件が密接に関係していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 8,730,710
-4.15% ↓
2022年 9,108,280
0.76% ↑
2021年 9,039,990
5.59% ↑
2020年 8,561,470
3.84% ↑
2019年 8,244,870
5.28% ↑
2018年 7,831,250
4.72% ↑
2017年 7,478,160
9.15% ↑
2016年 6,851,430
4.04% ↑
2015年 6,585,120
13.22% ↑
2014年 5,816,220
4.16% ↑
2013年 5,583,670
3.64% ↑
2012年 5,387,770
-2.69% ↓
2011年 5,536,680
3.94% ↑
2010年 5,327,000
1.89% ↑
2009年 5,228,300
2.72% ↑
2008年 5,089,960
-2.58% ↓
2007年 5,224,770
0.01% ↑
2006年 5,224,390
3.22% ↑
2005年 5,061,250
-3.92% ↓
2004年 5,267,880
-0.8% ↓
2003年 5,310,140
-1.08% ↓
2002年 5,368,000
-0.26% ↓
2001年 5,381,800
4.3% ↑
2000年 5,159,788
0.76% ↑
1999年 5,121,100
0.59% ↑
1998年 5,091,200
-3.14% ↓
1997年 5,256,300
-0.77% ↓
1996年 5,297,100
-0.93% ↓
1995年 5,346,800
0.19% ↑
1994年 5,336,500
1.31% ↑
1993年 5,267,400
-1.1% ↓
1992年 5,326,100
0.84% ↑
1991年 5,281,800
-2.23% ↓
1990年 5,402,400
0.38% ↑
1989年 5,381,800
0.97% ↑
1988年 5,330,300
-3.58% ↓
1987年 5,528,200
-1.65% ↓
1986年 5,621,000
-3.59% ↓
1985年 5,830,300
1.64% ↑
1984年 5,736,500
4.33% ↑
1983年 5,498,300
7.69% ↑
1982年 5,105,600
9.03% ↑
1981年 4,682,800
-0.73% ↓
1980年 4,717,400
-1.48% ↓
1979年 4,788,200
1.94% ↑
1978年 4,697,000
12.98% ↑
1977年 4,157,200
7.62% ↑
1976年 3,862,700
7.51% ↑
1975年 3,593,000
7.57% ↑
1974年 3,340,000
-3.9% ↓
1973年 3,475,500
4.72% ↑
1972年 3,318,900
4.98% ↑
1971年 3,161,400
2.79% ↑
1970年 3,075,600
-2.21% ↓
1969年 3,145,000
-0.12% ↓
1968年 3,148,700
6.68% ↑
1967年 2,951,400
8.64% ↑
1966年 2,716,600
2.99% ↑
1965年 2,637,800
3.51% ↑
1964年 2,548,300
3.54% ↑
1963年 2,461,100
0.42% ↑
1962年 2,450,800
4.02% ↑
1961年 2,356,000 -

アイルランドの牛乳生産量は、1960年代から一貫して増加傾向を示してきました。特に1980年代に入ると、EU共通農業政策(CAP)の枠組みの中で酪農が効率的に組織化され、生産量が安定的に高まりました。しかし1984年にはEUにおいて「生産割当制度(ミルククォータ)」が導入され、これによりアイルランドを含む加盟国は生産量に制限を受けることとなり、その結果、生産量の伸びが一時的に鈍化しました。

2015年にミルククォータが撤廃されると、アイルランドはこの制限が解かれたことを機に生産体制を強化しました。データでは2015年に約658万トンだった生産量が2021年には約904万トンに急増したことが確認できます。この増加には、輸出市場の拡大や、酪農技術の向上、さらにはアジア市場を中心とした乳製品需要の高まりが寄与しています。

一方で、2023年の生産量は約873万トンと直近のピークである2022年の約911万トンから減少しました。この減少は、気候変動や国際市場の需給バランスが影響した可能性があります。アイルランドの酪農は雨量や牧草地の成長に依存しているため、異常気象が与える影響は大きく、将来的にもこのリスクが懸念されます。

また、地域的な地政学的リスクも見逃せません。ヨーロッパではロシア・ウクライナの戦争の影響で飼料コストやエネルギー価格が増加し、これが生産コストにも影響を及ぼしました。これに加え、持続可能な生産手法への移行が求められる中、気候規制による制約がアイルランドの酪農業に新たな課題をもたらしています。

さらに、新型コロナウイルス感染症の影響による輸送問題やサプライチェーンの混乱も、生産と流通に短期的な影響を与えました。このような外部要因は酪農業界全体に不確実性をもたらし、特に中小酪農家にとって大きな負担となっています。

将来に向けて、アイルランドは持続可能性を追求しつつ、生産効率のさらなる向上を目指す必要があります。具体的には、環境保全型の牧草管理や温室効果ガス削減技術の導入、さらには地域間協力による革新技術の共有が重要となります。また、地域衝突や気候変動への対応として、リスク分散のための輸出市場の多角化や、政策的な支援の強化が求められます。

結論として、アイルランドの牛乳生産は過去数十年にわたり顕著に成長してきた一方で、気候や国際政策、需給バランスなど複合的な課題を抱える局面にあります。これらの問題に対処するためには、技術革新や政策の継続的な見直しが不可欠です。アイルランドとEU、さらに国際社会全体が協同して、持続可能かつ安定的な酪農の未来を築いていくべきでしょう。