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アイルランドのジャガイモ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、アイルランドのジャガイモ生産量は、1961年の2,145,000トンをピークに、長期的には減少傾向にあります。2022年の生産量は367,950トンで、1960年代の生産量と比較すると著しい低下が見られます。この半世紀にわたる減少は、農業技術、気候条件、経済的要因が複雑に絡み合っていることを示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 322,200
-12.43% ↓
2022年 367,950
-9.71% ↓
2021年 407,500
35.77% ↑
2020年 300,150
-21.5% ↓
2019年 382,370
40.06% ↑
2018年 273,010
-33.8% ↓
2017年 412,425
17.17% ↑
2016年 352,000
-2.25% ↓
2015年 360,100
-5.98% ↓
2014年 383,000
-6.61% ↓
2013年 410,100
76.77% ↑
2012年 232,000
-34.85% ↓
2011年 356,100
-15.13% ↓
2010年 419,600
24.84% ↑
2009年 336,100
-2.55% ↓
2008年 344,900
-13.56% ↓
2007年 399,000
4.2% ↑
2006年 382,900
-6.43% ↓
2005年 409,200
-25.9% ↓
2004年 552,200
13.11% ↑
2003年 488,200
-5.86% ↓
2002年 518,600
8.58% ↑
2001年 477,600
5.01% ↑
2000年 454,800
-18.64% ↓
1999年 559,000
15.98% ↑
1998年 482,000
2.12% ↑
1997年 472,000
-35.61% ↓
1996年 733,000
18.61% ↑
1995年 618,000
-3.74% ↓
1994年 642,000
12.83% ↑
1993年 569,000
-10.82% ↓
1992年 638,000
11.73% ↑
1991年 571,000
-5.62% ↓
1990年 605,000
9.21% ↑
1989年 554,000
-17.44% ↓
1988年 671,000
-3.73% ↓
1987年 697,000
12.6% ↑
1986年 619,000
-9.77% ↓
1985年 686,000
-21.15% ↓
1984年 870,000
31.62% ↑
1983年 661,000
-23.94% ↓
1982年 869,000
27.05% ↑
1981年 684,000
-22.27% ↓
1980年 880,000
-2.44% ↓
1979年 902,000
-10.52% ↓
1978年 1,008,000
-34.16% ↓
1977年 1,531,000
29.86% ↑
1976年 1,179,000
15.82% ↑
1975年 1,018,000
-8.37% ↓
1974年 1,111,000
-16.59% ↓
1973年 1,332,000
24.5% ↑
1972年 1,069,900
-25.09% ↓
1971年 1,428,200
-2.72% ↓
1970年 1,468,200
1.07% ↑
1969年 1,452,600
-10.57% ↓
1968年 1,624,200
-7.07% ↓
1967年 1,747,700
4.13% ↑
1966年 1,678,400
1.85% ↑
1965年 1,647,837
7.99% ↑
1964年 1,525,900
-22.52% ↓
1963年 1,969,400
-6.98% ↓
1962年 2,117,100
-1.3% ↓
1961年 2,145,000 -

アイルランドのジャガイモ生産量は、1961年から2022年までの60年以上の間に大きな変化を遂げてきました。1961年の2,145,000トンをピークに徐々に減少を始め、1970年代には1,000,000トン程度、1980年代になるとさらに減少し1,000,000トンを下回るようになりました。それ以降も減少傾向は続き、21世紀に入ると年間500,000トン未満で推移していることが確認できます。特に2012年と2018年には232,000トン、273,010トンという低水準に達しました。このような生産推移は、一つには農業の集約化や作付け面積の減少、若年層の農業離れといった構造的な問題が影響していると考えられます。

アイルランドのジャガイモ生産は、長らく同国の経済や文化、そして食生活の基盤として重要な地位を占めてきました。しかし、1950年代から1970年代の高度経済成長期を境に、肉や乳製品などの畜産物や輸入食品の消費が増大し、アイルランド国内のジャガイモ需要は相対的に低下していきました。また、経済のグローバル化が進む中で、ジャガイモ栽培の収益性が低下したことにより、生産農家の数が減少したことも背景として挙げられます。

気象条件や病害虫の影響も無視できません。アイルランドでは気候変動の影響により、洪水や干ばつのリスクが増加しており、こうした異常気象が収穫量に悪影響を与える可能性があります。たとえば、2012年の記録的な低水準は、記録的な雨量と洪水被害が主な原因とされています。さらに、近年ではヨーロッパ全域で広がる植物疫病が、ジャガイモ栽培の安定に重大なリスクを及ぼしています。

ジャガイモ生産量が減少している一方で、他の国と比較するとその状況がさらに際立っています。たとえば既存のデータからも、アイルランドのジャガイモ生産量は人口規模の近い国の多く、例えばデンマークやオランダに比べてもかなり低い水準にとどまっています。一方で中国やインドのような新興経済国では、生産量が大幅に増加しており、世界全体に占めるシェアが拡大しています。

このような状況を踏まえて、アイルランドがジャガイモの生産基盤を再構築するには、いくつかの具体策を講じる必要があります。まず第一に、農家支援政策と技術革新が鍵となります。具体的には、気象や病害虫のリスクを軽減するための灌漑設備の導入や、気候変動に強い品種の開発が重要です。また、農業教育機関や研究機関の連携を強化し、新規就農者を増やすためのインセンティブを提供することも急務です。

さらに、国内消費を促進するための取り組みも有効でしょう。ジャガイモは安価で栄養価が高いため、食生活の多様化を支援する政策を通じて国内需要を喚起することが考えられます。また、輸出市場を拡大し、安全で高品質なアイルランド産ジャガイモを世界にアピールすることも、同国の農業経済を活性化させるための一手となるでしょう。

結論として、アイルランドのジャガイモ生産量の減少は、歴史的、経済的、気候的な多くの要因によるものですが、適切な政策と技術の導入により、現在の課題に対処することが可能です。アイルランド政府と国際的な協力機関が連携して対策を講じることで、同国の農業が再び力強く成長し、持続可能な未来に貢献する可能性が広がると考えられます。