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アイルランドのキャベツ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、アイルランドのキャベツ生産量は1961年から2022年までの間で大きく変動しており、特に1980年代から1990年代にかけて急激な増減が見られます。1960年代は比較的安定して約25,000トンで推移していたのに対し、1990年代にピーク時で71,000トンを記録しましたが、2000年以降は減少傾向が続いています。直近の2022年には23,960トンとなり、1960年代初期レベルにまで落ち込んでいます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 20,210
-15.65% ↓
2022年 23,960
-10.73% ↓
2021年 26,840
6.59% ↑
2020年 25,180 -
2019年 25,180
-3.04% ↓
2018年 25,970
5.72% ↑
2017年 24,566
2.79% ↑
2016年 23,900 -
2015年 23,900
-1.65% ↓
2014年 24,300
1.67% ↑
2013年 23,900
12.21% ↑
2012年 21,300
-30.39% ↓
2011年 30,600
19.53% ↑
2010年 25,600
-14.67% ↓
2009年 30,000
20.48% ↑
2008年 24,900
-10.43% ↓
2007年 27,800
-2.8% ↓
2006年 28,600
-6.23% ↓
2005年 30,500
3.04% ↑
2004年 29,600 -
2003年 29,600
1.02% ↑
2002年 29,300
-15.32% ↓
2001年 34,600
-2.81% ↓
2000年 35,600
7.23% ↑
1999年 33,200
-34.9% ↓
1998年 51,000
-1.92% ↓
1997年 52,000 -
1996年 52,000
-20% ↓
1995年 65,000
-2.99% ↓
1994年 67,000 -
1993年 67,000
-5.63% ↓
1992年 71,000 -
1991年 71,000
2.9% ↑
1990年 69,000
25.45% ↑
1989年 55,000
-6.78% ↓
1988年 59,000 -
1987年 59,000
-6.35% ↓
1986年 63,000
16.31% ↑
1985年 54,166
-8.76% ↓
1984年 59,367
5.09% ↑
1983年 56,493
87.68% ↑
1982年 30,100
-1.63% ↓
1981年 30,600
-0.33% ↓
1980年 30,700
-4.06% ↓
1979年 32,000
-3.03% ↓
1978年 33,000 -
1977年 33,000
10% ↑
1976年 30,000 -
1975年 30,000 -
1974年 30,000 -
1973年 30,000 -
1972年 30,000 -
1971年 30,000 -
1970年 30,000 -
1969年 30,000
11.11% ↑
1968年 27,000 -
1967年 27,000 -
1966年 27,000 -
1965年 27,000
8% ↑
1964年 25,000 -
1963年 25,000 -
1962年 25,000 -
1961年 25,000 -

アイルランドのキャベツ生産量は、地域の農業政策や市場需要、気候条件の影響を受け、大きな変遷を経てきました。当初1961年では約25,000トンと安定的な生産が見られましたが、1969年からは段階的に増加し、1980年代には目覚ましい成長を遂げました。この急成長の背景には、当時の農業技術の向上や市場環境の好転があったと考えられます。例えば、1986年には63,000トン、1991年にはピークの71,000トンを記録し、アイルランドのキャベツ農業が一時期絶頂を迎えました。

しかし、2000年に入ると、生産量はほぼ一貫して減少傾向を示しています。この減少の理由としては、国内の農業労働力の縮小や世界的な競争の激化、さらには気候変動による作物の生育環境の悪化が挙げられます。例えば、冬季の強い寒波や夏季の熱波の影響で収穫が難しくなるとともに、病害虫の発生リスクも高まっています。特に2012年には21,300トンと、過去50年以上の最低水準にまで達しました。このことは、キャベツが気候条件に敏感な作物であることを示しており、近年の生産において気候変動の影響が深刻であることを裏付けています。

地域比較を行うと、キャベツ生産量が増加している国としてアメリカや中国が挙げられます。例えば、中国は世界全体の生産量の50%以上を占めており、大規模な生産体制が確立されています。一方、日本や韓国などアジア諸国は国内消費向けに需要が高く、生産の維持に向けた努力が続けられています。アイルランドと共通する課題として、労働人口の減少や農業従事者の高齢化が各国で見られるため、生産規模の縮小は世界的な課題といえるでしょう。

地政学的観点から見ると、ヨーロッパ全体で進行するエネルギー問題やウクライナ危機の影響が、アイルランドの農業に間接的な影響を与えることが懸念されています。燃料費の高騰は機械化コストを引き上げ、その結果、効率的な農業生産が困難になっている可能性があります。これらの外的要因により、農業従事者がキャベツ生産から他の収益性の高い作物へ転向する動きも見受けられています。

これらの課題に対応するためには、具体的な政策と戦略が必要です。まず、気候変動に耐えられる種子の開発と導入が急務です。さらに、EUの農業支援プログラムを最大限活用し、持続可能な農業技術の導入や灌漑インフラの整備を推進するべきでしょう。また、国内市場での消費者の需要を喚起するために、ローカルフード運動や健康志向商品としての普及促進を進めることも重要です。これにより、国内市場の安定化が期待されます。

また、地域衝突や疫病の発生など外部要因が生産に与える影響を最小化するためにも、国際的な協力が求められます。特に感染症の拡大防止や自然災害への対応として、農業従事者の早期支援体制を構築することが不可欠です。

結論として、アイルランドのキャベツ農業は過去数十年で大きな変遷を遂げつつも、気候変動や経済的圧力の影響を強く受けています。これを乗り越えるには、継続的な政策支援と技術革新、並びに地域間の協力が鍵となるでしょう。今後も農業の持続可能性を確保するために、多方面からの取り組みを進めることが必要です。