国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月時点のデータによると、アイルランドのニンジンおよびカブ類の生産量は、1961年から2023年にかけて大きな変動を見せています。特に1960年代後半から生産量が急増し、2000年代以降安定した増加傾向が見られるものの、気候変動や農業政策の影響を受け、一部の年には大幅な減産が記録されています。近年では、2023年の生産量が60,860トンとなり、全体として過去10年の平均水準をやや上回っています。
アイルランドのニンジン・カブ類生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 60,860 |
-2.42% ↓
|
2022年 | 62,370 |
3.01% ↑
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2021年 | 60,550 |
18.12% ↑
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2020年 | 51,260 |
-3.26% ↓
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2019年 | 52,990 |
11.98% ↑
|
2018年 | 47,320 |
-7.61% ↓
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2017年 | 51,220 |
-28.66% ↓
|
2016年 | 71,800 |
20.27% ↑
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2015年 | 59,700 | - |
2014年 | 59,700 |
6.23% ↑
|
2013年 | 56,200 |
20.34% ↑
|
2012年 | 46,700 |
-21.91% ↓
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2011年 | 59,800 |
21.3% ↑
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2010年 | 49,300 |
-0.4% ↓
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2009年 | 49,500 |
-13.01% ↓
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2008年 | 56,900 |
-3.72% ↓
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2007年 | 59,100 |
-1.17% ↓
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2006年 | 59,800 |
3.1% ↑
|
2005年 | 58,000 |
28.6% ↑
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2004年 | 45,100 | - |
2003年 | 45,100 |
23.22% ↑
|
2002年 | 36,600 |
-15.08% ↓
|
2001年 | 43,100 |
2.13% ↑
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2000年 | 42,200 |
72.95% ↑
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1999年 | 24,400 |
10.91% ↑
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1998年 | 22,000 |
-1.35% ↓
|
1997年 | 22,300 |
-34.41% ↓
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1996年 | 34,000 |
4.62% ↑
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1995年 | 32,500 |
-4.41% ↓
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1994年 | 34,000 |
2.1% ↑
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1993年 | 33,300 |
-7.24% ↓
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1992年 | 35,900 |
-20.22% ↓
|
1991年 | 45,000 |
14.21% ↑
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1990年 | 39,400 |
-0.76% ↓
|
1989年 | 39,700 |
-5.48% ↓
|
1988年 | 42,000 |
7.14% ↑
|
1987年 | 39,200 |
-8.33% ↓
|
1986年 | 42,762 |
6.1% ↑
|
1985年 | 40,305 |
-1.22% ↓
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1984年 | 40,804 |
14.29% ↑
|
1983年 | 35,701 |
-25.62% ↓
|
1982年 | 48,000 |
33.33% ↑
|
1981年 | 36,000 |
-10.67% ↓
|
1980年 | 40,300 |
6.05% ↑
|
1979年 | 38,000 |
5.56% ↑
|
1978年 | 36,000 |
2.86% ↑
|
1977年 | 35,000 | - |
1976年 | 35,000 | - |
1975年 | 35,000 | - |
1974年 | 35,000 | - |
1973年 | 35,000 | - |
1972年 | 35,000 | - |
1971年 | 35,000 | - |
1970年 | 35,000 | - |
1969年 | 35,000 |
105.88% ↑
|
1968年 | 17,000 | - |
1967年 | 17,000 | - |
1966年 | 17,000 | - |
1965年 | 17,000 | - |
1964年 | 17,000 | - |
1963年 | 17,000 | - |
1962年 | 17,000 | - |
1961年 | 17,000 | - |
アイルランドのニンジンおよびカブ類の生産量は、1961年の17,000トンから始まり、1969年には約倍となる35,000トンへと急増しました。この転換は、当時の技術革新や農業政策、そして市場需要の増加が主な要因と考えられます。その後も1970年代から1980年代にかけて順調に増加し、1980年には40,000トンを超えました。しかしながらデータを見ると、1990年代には不安定な時期があり、特に1997年の22,300トンへの減少は注目に値します。この背景には、国内政策や経済的要因、さらには気候条件が関与している可能性が考えられます。
2000年に入り生産量の再びの増加が顕著になり、特に2005年には58,000トン、2006年には59,800トンと記録的な数値に達しました。この時期の生産効率の向上は、品種改良、肥料の活用、および輸出の需要拡大に起因すると考えられます。一方で、2008年と2009年に記録された40,000トン台後半への減少や、近年の2017年の51,220トン、2018年の47,320トンにおける減少は、地球温暖化による異常気象や輸送路の問題、さらには農業労働力不足が影響している可能性を示唆しています。
近年では、2020年代初頭のCOVID-19パンデミックにより一部の年で物流や輸出に乱れが生じましたが、2021年以降の回復傾向が見られます。2021年の60,550トン、2022年の62,370トン、そして2023年の60,860トンという安定した高水準の生産量は、アイルランドの農業部門の強靭性を示しています。特に、アイルランドはEU域内での農産物輸出の重要な供給源であり、近年のこの回復基調は市場における安定感をもたらしました。
地政学的な背景としては、EU離脱後のイギリスとの貿易関係の変化が、アイルランドの農産物における輸出市場構造に影響を与える要因と考えられます。加えて、気候変動により北西ヨーロッパの全体的な農業生産性が影響を受ける中で、アイルランドはその湿潤な気候が過剰な干ばつを回避できるため、有利な立地条件を享受しているといえます。
しかしながら課題も多く存在します。安定した生産の実現には、さらに効率的な灌漑システムの導入や、気候変動に強い品種の研究・開発が重要です。また、若年層の農業離れが進む中、人材育成や農業技術教育の充実が求められます。さらに、EU内外の貿易協定や食糧安全保障への対応強化も不可欠です。これらの具体策としては、他国と連携した研究開発の推進や、補助金を利用した設備投資支援が挙げられるでしょう。
今後、アイルランドはその地理的利点や高品質な農産物製品を活かしつつ、変化する自然環境と市場の動向に適応する柔軟な農業政策を展開することが求められます。地球規模での食糧需要の増加に対し、アイルランドが引き続き貢献できるよう、国やEUが技術支援や投資を拡大することが鍵となるでしょう。