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アイルランドの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

アイルランドにおける羊肉生産量の推移を示すデータを見ると、1961年から2023年までの間に大きな変動が観察されます。特に、1990年代に大幅な増加を示した一方で、その後は減少と回復を繰り返す傾向が見られます。最新のデータでは2023年の生産量が69,720トンと、近年やや上昇に転じていますが、ピーク時の1993年(95,800トン)を下回っています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 69,720
2.2% ↑
2022年 68,220
7.55% ↑
2021年 63,430
-4.23% ↓
2020年 66,230
0.29% ↑
2019年 66,040
-3.46% ↓
2018年 68,410
1.95% ↑
2017年 67,100
10% ↑
2016年 61,000
4.45% ↑
2015年 58,400
1.21% ↑
2014年 57,700
0.17% ↑
2013年 57,600
7.46% ↑
2012年 53,600
10.97% ↑
2011年 48,300
1.26% ↑
2010年 47,700
-13.43% ↓
2009年 55,100
-6.29% ↓
2008年 58,800
-10.64% ↓
2007年 65,800
-6.4% ↓
2006年 70,300
-4.09% ↓
2005年 73,300
2.09% ↑
2004年 71,800
13.43% ↑
2003年 63,300
-4.81% ↓
2002年 66,500
-14.85% ↓
2001年 78,100
-5.79% ↓
2000年 82,900
-8.19% ↓
1999年 90,300
4.15% ↑
1998年 86,700
14.83% ↑
1997年 75,500
-14.69% ↓
1996年 88,500
1.03% ↑
1995年 87,600
-3.42% ↓
1994年 90,700
-5.32% ↓
1993年 95,800
7.4% ↑
1992年 89,200
3.36% ↑
1991年 86,300
0.35% ↑
1990年 86,000
36.51% ↑
1989年 63,000
26.76% ↑
1988年 49,700
4.58% ↑
1987年 47,525
2.89% ↑
1986年 46,191
-4.37% ↓
1985年 48,300
18.04% ↑
1984年 40,919
2.81% ↑
1983年 39,800
-1.73% ↓
1982年 40,500
-7.95% ↓
1981年 44,000
4.76% ↑
1980年 42,000
7.69% ↑
1979年 39,000
-4.88% ↓
1978年 41,000
10.81% ↑
1977年 37,000 -
1976年 37,000
-19.57% ↓
1975年 46,000
2.22% ↑
1974年 45,000
3.78% ↑
1973年 43,363
-3.68% ↓
1972年 45,021
-4.78% ↓
1971年 47,280
19.11% ↑
1970年 39,693
-9.11% ↓
1969年 43,671
-1.01% ↓
1968年 44,115
-2.87% ↓
1967年 45,418
-6.38% ↓
1966年 48,513
8.41% ↑
1965年 44,748
-4.31% ↓
1964年 46,765
-2.36% ↓
1963年 47,895
1.87% ↑
1962年 47,017
26.35% ↑
1961年 37,211 -

アイルランドの羊肉生産量は、1960年代から2023年までの60年以上にわたるデータから多くのことが読み取れます。初期段階にあたる1961年、アイルランドの羊肉生産量は37,211トンで、それ以降はやや上昇する傾向が見られます。特に1990年代には大きな増加が記録され、1993年に生産量は95,800トンに達しました。この時期は世界的な羊肉需要の増加や、アイルランドの農業生産力の向上が関連していると考えられます。

その後、2000年代に入ると生産量は減少し、特に2009年には55,100トンまで落ち込んでいます。この減少には、EU共通農業政策(CAP)の改定や、それに伴う農業支援補助金の見直しが影響した可能性があります。また、2008年以降の世界的な金融危機も、アイルランドの農業セクターへ大きな経済的影響を与えたと考えられます。この時期、牧草地の維持管理費や販売価格の低迷により、多くの農家が羊肉の生産を続けることが難しくなったことが要因とされています。

近年では、2018年以降、生産量は安定的に推移しており、2023年の生産量は69,720トンとなっています。この上昇基調に転じた背景には、消費者の健康志向による羊肉需要の回復や、アイルランド政府による輸出振興政策が寄与していると考えられます。特に中国や中東諸国への輸出マーケットの開拓が、アイルランドの畜産業に新たな成長の機会をもたらしました。

しかし、いまだいくつかの課題も残っています。まず第一に、地政学的リスクや国際市場での価格変動が、羊肉輸出に与える不確実性です。たとえば、ブレグジット後のEUとイギリス間の貿易ルールの変更は、大きな貿易相手国であるイギリスへの輸出に影響を及ぼしています。また、2022年以降の世界的な物価高騰や燃料価格上昇が、牧草地の維持コストや物流コストにも悪影響を与えている点は否定できません。さらに、地球温暖化による気候変動もアイルランドの農地環境に徐々に影響を与えており、飼料生産や放牧条件が変化する可能性があります。

これらの課題への対応として、以下のような具体的な対策が提言されます。一つは、気候変動に対応するための環境配慮型農業の推進です。例えば、アイルランド政府はカーボンニュートラル政策の一環として、再生可能エネルギーや持続可能な牧草地管理システムの導入を促進するべきです。また、国内市場の需要を拡大するための食文化促進キャンペーンを展開し、単なる輸出依存型から多角的な市場構造に移行することも有益でしょう。さらに、国際的な食糧安全保障を支援する政策の一環として、発展途上国への技術支援や食糧援助を行うことで、アイルランド畜産業が国際社会における信頼を強化する機会も考えられます。

近年はアイルランド農業部門全体が新型コロナウイルス感染症によるサプライチェーンの混乱を経験しましたが、これが教訓となり、安心・安全な食材供給への意識が高まりました。こうした経験から、マーケットの多角化や輸送経路の健全化を図るべき時期に来ています。

データは過去の動向だけではなく、未来の方向性を示唆しています。アイルランドは特有の自然環境を活用し、持続可能な羊肉生産モデルの確立を目指すべきです。政府と農家、企業、研究者が連携し、効率的かつ環境に優しい畜産モデルを推し進めることで、国際市場での競争力を高め、安定した牧畜農業を維持することが可能になるでしょう。このような取り組みが成功すれば、アイルランドの羊肉生産はより持続可能かつ繁栄を続けるものと期待されます。