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アイルランドのオート麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、アイルランドのオート麦生産量は1960年代後半から1980年代にかけて急激に減少しましたが、2000年代以降には増減を繰り返しながらも、近年は比較的安定した水準にあります。2023年では180,910トンの生産量となり、2021年と2022年の230,000トンを超えるピークからの減少が見られました。全体として1960年代初頭の40万トン近い水準には及ばないものの、近年の生産量は1990年代の平均水準を明らかに上回っています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 180,910
-22.88% ↓
2022年 234,580
2.23% ↑
2021年 229,460
27.29% ↑
2020年 180,260
-6.62% ↓
2019年 193,030
63.78% ↑
2018年 117,860
-42.52% ↓
2017年 205,049
11.87% ↑
2016年 183,300
-7.28% ↓
2015年 197,700
32.06% ↑
2014年 149,700
-22.23% ↓
2013年 192,500
23% ↑
2012年 156,500
-6.9% ↓
2011年 168,100
13.5% ↑
2010年 148,100
1.65% ↑
2009年 145,700
-16.41% ↓
2008年 174,300
9.55% ↑
2007年 159,100
9.57% ↑
2006年 145,200
28.72% ↑
2005年 112,800
-27.32% ↓
2004年 155,200
0.06% ↑
2003年 155,100
16.09% ↑
2002年 133,600
12.55% ↑
2001年 118,700
-6.24% ↓
2000年 126,600
-6.91% ↓
1999年 136,000
14.29% ↑
1998年 119,000
-9.85% ↓
1997年 132,000
-9.59% ↓
1996年 146,000
13.18% ↑
1995年 129,000
0.78% ↑
1994年 128,000
-0.78% ↓
1993年 129,000
-5.15% ↓
1992年 136,000
-4.9% ↓
1991年 143,000
-0.69% ↓
1990年 144,000
7.46% ↑
1989年 134,000
-8.84% ↓
1988年 147,000
38.68% ↑
1987年 106,000
3.92% ↑
1986年 102,000
-3.77% ↓
1985年 106,000
-24.82% ↓
1984年 141,000
41% ↑
1983年 100,000
-0.99% ↓
1982年 101,000
12.22% ↑
1981年 90,000
-1.1% ↓
1980年 91,000
-13.33% ↓
1979年 105,000
-11.02% ↓
1978年 118,000
-13.87% ↓
1977年 137,000
5.38% ↑
1976年 130,000
-21.21% ↓
1975年 165,000
5.1% ↑
1974年 157,000
-3.21% ↓
1973年 162,200
-9.33% ↓
1972年 178,900
-13.66% ↓
1971年 207,200
0.1% ↑
1970年 207,000
-17.66% ↓
1969年 251,400
-11.94% ↓
1968年 285,500
-2.76% ↓
1967年 293,600
3.75% ↑
1966年 283,000
-12.73% ↓
1965年 324,269
3.7% ↑
1964年 312,700
-15.1% ↓
1963年 368,300
-6.99% ↓
1962年 396,000
3.83% ↑
1961年 381,400 -

アイルランドのオート麦生産量推移のデータから、いくつかの重要な歴史的・地政学的背景や農業の構造的変化が推測されます。まず、1960年代初頭のオート麦生産量は約40万トンと安定していましたが、その後、次第に減少に転じ、1970年代後半から1980年代にかけては10万トン前後にとどまりました。このような大幅な減少の背景には、作物需要の変化や農業用途のシフトが関係していると考えられます。当時、多くの西欧諸国で農業の機械化と多作物化の進展が急速に進みました。また、化学肥料の導入や耕地転作政策の影響で、オート麦に対する優先度が低下したことが推察されます。

2000年代に入り、生産量は再び15万トン前後に回復しています。例えば、2008年の174,300トンや2011年の168,100トンのように、比較的高い水準を記録しています。この回復には、農業技術の向上やEUなどヨーロッパ内でのオート麦の需要増加が影響を与えた可能性があります。特に健康志向の高まりから、オート麦が食料用途や家畜用飼料としての需要を伸ばし始めました。また、2020年代に入ってからは、食品安全保障や国内消費拡大の政策も一定の役割を果たしていると言えるでしょう。

2022年には過去数十年間で最高となる234,580トンが記録されましたが、翌2023年には180,910トンに減少しました。この変動要因としては、気候変動の影響や国際的な需給バランスの変化、新型コロナウイルス感染拡大後の物流問題などが考えられます。また2022年の記録は、異常気象や特定の政策的支援による一時的な増加であった可能性もあります。

アイルランドと類似する気候・農業条件を持つ国々としては、イギリスやドイツが挙げられます。これらの国々でも近年、オート麦の需要が健康食品市場で拡大している点が共通しています。しかし、アイルランドは耕地面積や農地条件が限られているため、国際市場での競争力を維持するためには、質の向上と安定供給の仕組みを確立する必要があります。

気候変動も課題の一つとなっています。オート麦は寒冷地での栽培に比較的適していますが、異常気象は収穫量に大きな影響を及ぼす可能性があります。持続可能な農業を推進するためには、天候リスクを分散させる灌漑技術の活用や品種改良、新しい栽培方法の導入が重要です。

さらに、地政学的な観点から見ると、EU内での協調も鍵になるでしょう。アイルランドの農産物はEU市場への輸出が主力となっており、EU内での輸出規制や関税政策の変更が今後の生産量や価格動向に影響を与えることが予想されます。特に、英国のEU離脱(ブレグジット)後の貿易関係の変化がその一端を担っています。

以上を踏まえ、アイルランドはオート麦生産を持続的に伸ばしていくためにいくつかの具体的な対策を講じるべきです。まず、政策面では農家への技術支援や資金援助を拡充する必要があります。また、研究機関や農家との連携を強化し、気候変動対策に適合した持続可能な農地運営モデルの構築を目指すべきです。さらに、農産物の輸出戦略を刷新し、EUだけでなくアジアや中東市場への進出も視野に入れる必要があります。

結論として、データからはアイルランドのオート麦生産が様々な要因によって変動していることが明らかです。持続可能な農業や市場拡大、気候変動への対応を進めることで、アイルランドはオート麦生産の安定成長を目指すことが可能です。そして、これにより国民の生活を支えつつ、国際市場においても競争力を高める道が開けるでしょう。