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アイルランドのラズベリー生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、アイルランドのラズベリー生産量は長期的な変動を示しています。1970年代まで安定して100トンの生産量を維持していましたが、1982年に一気に1,000トンへと大幅な増加を記録しました。その後は1990年代を通じて低下し、2000年には220トンと減少しました。2010年代には再び徐々に回復する兆しが見え、2022年に480トンのピークに達しました。一方、2023年には410トンと減少傾向にあり、長期的に安定した増加は確認されていません。近年の変動には気候条件や農業政策、国際市場の影響も考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 410
-14.58% ↓
2022年 480
50% ↑
2021年 320 -
2020年 320 -
2019年 320
6.67% ↑
2018年 300
-12.02% ↓
2017年 341
3.33% ↑
2016年 330
6.45% ↑
2015年 310 -
2014年 310
6.9% ↑
2013年 290
16% ↑
2012年 250
56.25% ↑
2011年 160 -
2010年 160 -
2009年 160 -
2008年 160
-15.79% ↓
2007年 190
-9.52% ↓
2006年 210
16.67% ↑
2005年 180
20% ↑
2004年 150
25% ↑
2003年 120
20% ↑
2002年 100
-50% ↓
2001年 200
-9.09% ↓
2000年 220
-56% ↓
1999年 500 -
1998年 500 -
1997年 500
-16.67% ↓
1996年 600
50% ↑
1995年 400
-33.33% ↓
1994年 600
20% ↑
1993年 500
-16.67% ↓
1992年 600
-25% ↓
1991年 800
33.33% ↑
1990年 600
20% ↑
1989年 500 -
1988年 500 -
1987年 500 -
1986年 500
-50% ↓
1985年 1,000 -
1984年 1,000 -
1983年 1,000 -
1982年 1,000
900% ↑
1981年 100 -
1980年 100 -
1979年 100 -
1978年 100 -
1977年 100 -
1976年 100 -
1975年 100 -
1974年 100 -

アイルランドのラズベリー生産量推移をデータから振り返ると、いくつかの重要なトレンドが見られます。1974年から1981年の間は100トンで横ばいを示していましたが、1982年に突然1,000トンへと飛躍しました。この増加は、新たな農業技術の導入や栽培エリアの拡大に起因する可能性があります。また、この時期は欧州全体でラズベリーを含む果実の需要が高まっていた時期でもあり、国内の生産環境がこれと連動したと考えられます。

しかし、1986年以降は500トン前後で推移し、その後1990年代に入るとさらに漸減する傾向が見られます。この背景には、農業の多様化によるラズベリーから他の作物への転作や、国際競争の激化、あるいは地元市場の縮小が影響していると推測されます。中でも2000年にはわずか220トンまで減少し、1982年のピークから大きな落ち込みを記録しました。特にこの期間は、欧州では他国がより効率的な生産体制を構築し、アイルランド産のラズベリーが価格競争力を失った時期とされています。

2010年代に入ると、持続可能な農業政策や品質向上の取り組みが功を奏し、緩やかながらも生産量が増加に転じたことが見受けられます。この10年で310トン以上を記録する年も複数あり、アイルランドのラズベリー産業は回復の兆しを見せ始めていました。特に、気候変動への対応として耐寒性や干ばつに強い品種の導入が進んだことが改善に寄与したと思われます。ただし、2022年の480トンという回復後、2023年には410トンへと再び減少しており、生産基盤が再び不安定になりつつある点は懸念材料です。

地域的な特徴として、アイルランドの農業は家畜や穀物生産が中心となりがちで、ラズベリーのような特定の果実が十分な支援を受けられないことがしばしば課題となっています。他国の状況と比較すると、隣国イギリスは大規模な温室栽培や輸出基盤を整えており、また中央・東欧の国々ではコストが安い人件費が競争力となっています。これに対して、アイルランドのラズベリー生産の競争力を維持するためには、高品質な製品を武器に付加価値を高める戦略が重要です。

さらに、地政学的な背景として、イギリスのEU離脱(ブレグジット)や国際市場の変動が、アイルランドの農業全体、特に輸出型の産品に影響を与えています。輸出関税や物流面での課題がラズベリー生産にも波及する恐れがあり、将来的なリスクを避けるための対策が必要です。また、気候変動や新型コロナウイルスによる物流の中断も、生産量や収益に影響を及ぼしました。このような外的環境の影響を軽減するためには、地域内での生産と消費の循環を促進する政策が求められるでしょう。

今後の具体的な対策として、効率的な栽培方法の研究開発を強化するとともに、持続可能性を意識した農業を進めることが挙げられます。例えば、先進的な温室栽培技術や、省エネルギー型の灌漑システムを導入するなどの取り組みです。また、地元市場の需要を喚起するため、ラズベリーの健康面での利点や新たな加工品の開発に力を入れることが重要です。さらに、EU共通政策を活用し、地域間での協力を通じて安定的な供給体制を築く努力も必要です。

結論として、アイルランドのラズベリー生産量は過去数十年間で大きな波を経てきましたが、持続的な発展の可能性を秘めているといえます。多様化する市場ニーズに応えながら環境負荷を最小限に抑える農業モデルを構築することで、アイルランドにとってラズベリー産業が再び輝きを取り戻すことが期待されます。

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