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フィンランドの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、フィンランドの牛乳生産量は1961年から2023年の間で長期的に減少傾向にあります。1960年代前半には年間360万トン以上であった生産量が、2023年には約223万トンにまで減少しました。特に1980年代後半以降、政策の変化や需要の減少などの影響が顕著で、これが生産量の低下に反映されています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 2,239,000
-0.87% ↓
2022年 2,258,630
-2.43% ↓
2021年 2,314,850
-3.81% ↓
2020年 2,406,520
1.35% ↑
2019年 2,374,360
-0.98% ↓
2018年 2,397,880
-0.33% ↓
2017年 2,405,761
-0.98% ↓
2016年 2,429,595
-0.26% ↓
2015年 2,435,847
1.49% ↑
2014年 2,400,003
3.1% ↑
2013年 2,327,800
1.35% ↑
2012年 2,296,694
-0.17% ↓
2011年 2,300,711
-1.52% ↓
2010年 2,336,253
0.18% ↑
2009年 2,332,023
0.91% ↑
2008年 2,310,908
-1.9% ↓
2007年 2,355,600
-2.38% ↓
2006年 2,412,981
-0.83% ↓
2005年 2,433,190
-0.65% ↓
2004年 2,449,031
-0.92% ↓
2003年 2,471,690
-2.38% ↓
2002年 2,532,050
0.1% ↑
2001年 2,529,600
3.24% ↑
2000年 2,450,100
1.95% ↑
1999年 2,403,200
-1.8% ↓
1998年 2,447,342
-0.63% ↓
1997年 2,462,833
1.3% ↑
1996年 2,431,233
-1.48% ↓
1995年 2,467,695
-1.75% ↓
1994年 2,511,682
2.01% ↑
1993年 2,462,249
-0.53% ↓
1992年 2,475,355
-3.54% ↓
1991年 2,566,264
-8.9% ↓
1990年 2,816,844
2.32% ↑
1989年 2,752,960 -
1988年 2,752,860
-6.3% ↓
1987年 2,938,000
-4.32% ↓
1986年 3,070,800
-0.4% ↓
1985年 3,083,100
-4.36% ↓
1984年 3,223,700
-0.38% ↓
1983年 3,236,150
2.09% ↑
1982年 3,170,000
-0.63% ↓
1981年 3,190,000
-2.6% ↓
1980年 3,275,200
1.04% ↑
1979年 3,241,600
0.52% ↑
1978年 3,224,900
-0.19% ↓
1977年 3,231,000
-1.33% ↓
1976年 3,274,500
3.6% ↑
1975年 3,160,700
0.22% ↑
1974年 3,153,700
-1.65% ↓
1973年 3,206,700
-2.41% ↓
1972年 3,285,900
-0.23% ↓
1971年 3,293,400
-0.5% ↓
1970年 3,310,100
-8.04% ↓
1969年 3,599,400
0.09% ↑
1968年 3,596,100
1.03% ↑
1967年 3,559,400
-3.51% ↓
1966年 3,689,000
-2.12% ↓
1965年 3,769,000
-1.49% ↓
1964年 3,825,900
1.81% ↑
1963年 3,758,000
3.14% ↑
1962年 3,643,600
0.54% ↑
1961年 3,624,000 -

フィンランドの牛乳生産量は、1961年の約362万トンのピークから次第に減少し、1970年代中頃に入ると一旦生産量が安定の兆しを見せました。しかし、1980年代後半から2000年代初頭にかけて、グローバルな乳製品市場の変化やEU農業政策への適応が進むに連れ、再び減少傾向が顕著となりました。また、フィンランド国内の食生活の多様化やライフスタイルの変化が、乳製品の需要低下につながった可能性があります。これらの要因が、牛乳生産量の長期的な減少に寄与していると考えられます。

特に1987年以降の減少幅が大きく、年間生産量は約294万トンから1990年には281万トン、さらに1993年には約246万トンまで落ち込みました。この減少は、国際市場との統合にあたり、フィンランドが欧州連合(EU)に加盟した影響も一因であるとされています。EUの農業共通政策(CAP)は、各国の農業構造を調整し、過剰生産を抑制する方針に基づいて管理されており、フィンランドの乳業もこれに従った形で生産量を抑える結果となりました。

近年の動向をみると、2000年代中頃には一時的な回復が見られたものの、2020年以降は再び減少に転じています。例えば、2015年から2023年にかけて生産量は2,435,847トンから2,239,000トンへと減少しています。これは、少子高齢化による国内消費減少に加え、豆乳やアーモンドミルクなどの代替乳製品への需要増など、市場の変化による影響が背景にあります。

フィンランドの農業は環境への配慮を重視しており、サステイナブルな農法が推進されています。そのため、牛乳生産では地元の草地での放牧を基本とするエコロジカルな方法が取られています。その一方で、地球温暖化や異常気象が乳牛の飼育環境に負荷を与え、生産効率の低下を招いている可能性もあります。また、2022年からのウクライナでの地域衝突が穀物価格の上昇を引き起こし、飼料コストが増加した点も影響していると考えられます。

フィンランドの牛乳生産低下に対する今後の課題としては、生産効率の改善、国内外での消費需要の活性化、さらには国際市場での競争力の強化が挙げられます。特に国内では、乳製品の健康効果を広く発信し、若年層を中心とした需要を喚起することが必要です。また、地域間の協力を深め、北欧各国が連携して乳製品の輸出を推進する枠組みの強化も一案として挙げられます。

さらに環境問題への対応として、環境負荷をさらに削減するための畜産技術の投資や、デジタル化を活用した効率的な管理手法の導入が可能性として示唆されます。一方で、ウクライナを巡る地政学的リスクや穀物価格の高騰が中長期的にフィンランドの乳業に与える影響を軽減するため、国内の飼料供給体制を強化することが重要です。

牛乳の生産量推移から見える事実は、フィンランドの乳業が直面する課題を端的に映し出しています。これらの課題を克服し、安定した生産体制を築くためには、農業政策を柔軟かつ戦略的に展開し、国内外の市場ニーズに適応する努力が欠かせません。新たな市場開拓や需要創出を目指す施策が今後の鍵となるでしょう。