国連食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、フィンランドの鶏飼養数は1961年の6,459千羽から、2022年には13,364千羽となり、大きな増加を見せています。この間、全体的な増加傾向の一方で、1980年代から1990年代初頭にかけて飼養数が減少し、1990年代半ば以降に再び回復する様子がうかがえます。2022年の最新データでは、これまでで最も高い水準を記録しています。これらのデータは、フィンランドの農業政策の変遷や食料需要の変化を示唆しています。
フィンランドの鶏飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(羽) |
---|---|
2022年 | 13,364.00 |
2021年 | 12,707.00 |
2020年 | 12,715.00 |
2019年 | 13,407.00 |
2018年 | 13,190.00 |
2017年 | 12,266.00 |
2016年 | 12,394.00 |
2015年 | 11,970.00 |
2014年 | 11,355.00 |
2013年 | 10,813.00 |
2012年 | 9,682.00 |
2011年 | 9,146.00 |
2010年 | 8,443.00 |
2009年 | 8,173.00 |
2008年 | 9,204.00 |
2007年 | 8,559.00 |
2006年 | 8,874.00 |
2005年 | 9,057.00 |
2004年 | 8,930.00 |
2003年 | 9,412.00 |
2002年 | 9,342.00 |
2001年 | 9,008.00 |
2000年 | 11,391.00 |
1999年 | 10,859.00 |
1998年 | 11,240.00 |
1997年 | 8,741.00 |
1996年 | 7,416.00 |
1995年 | 6,437.00 |
1994年 | 5,554.00 |
1993年 | 5,108.00 |
1992年 | 4,967.00 |
1991年 | 5,188.00 |
1990年 | 5,858.00 |
1989年 | 5,704.00 |
1988年 | 6,276.00 |
1987年 | 6,626.00 |
1986年 | 6,726.00 |
1985年 | 6,909.00 |
1984年 | 6,913.00 |
1983年 | 8,509.00 |
1982年 | 7,763.00 |
1981年 | 7,807.00 |
1980年 | 9,376.00 |
1979年 | 9,227.00 |
1978年 | 9,032.00 |
1977年 | 8,556.00 |
1976年 | 9,091.00 |
1975年 | 8,660.00 |
1974年 | 9,088.00 |
1973年 | 9,628.00 |
1972年 | 9,865.00 |
1971年 | 8,376.00 |
1970年 | 8,553.00 |
1969年 | 7,564.00 |
1968年 | 6,940.00 |
1967年 | 7,284.00 |
1966年 | 6,960.00 |
1965年 | 6,878.00 |
1964年 | 6,824.00 |
1963年 | 6,876.00 |
1962年 | 6,509.00 |
1961年 | 6,459.00 |
フィンランドの鶏飼養数の推移から、いくつかの重要なトレンドが確認できます。まず、1960年代から1970年代初めまで、鶏の飼養数は比較的一定の増加を見せ、1972年には9,865千羽に達しました。しかし、その後1980年代前半から1990年代初頭にかけて飼養数は大幅に減少し、1991年には5,188千羽という最低値を記録しました。この時期の減少は、EUへの加盟や農業構造改革、農産物市場の自由化といった政策的変化が影響した可能性があります。また、鶏肉需要の変動や生産コストの上昇もなかったとは言えないでしょう。
その後、フィンランドは1995年のEU加盟をきっかけに農業政策の再編を進めました。この影響で、鶏飼養数は1995年以降急速に回復し、1998年に11,240千羽、2018年には13,190千羽に達し、2022年には13,364千羽と記録を更新しました。この増加は国内外での鶏肉需要の高まりと、農業技術の進歩や効率的な大規模生産の導入が要因となったと考えられます。
フィンランド国内の鶏肉需要の増加には、健康志向の高まりや赤身肉(特に牛肉)の消費減少が影響しています。また、国外市場への輸出増加も重要な要素です。特に近隣諸国であるスウェーデンやエストニアなどへの輸出が伸びており、この国際的な需要に対応する形で生産量が増加しています。ただし、2020年から2021年にわずかに飼養数が減少していることは、新型コロナウイルス感染症の影響や物流の混乱を反映していると考えられます。
一方で、鶏飼養数の増加は持続可能性への課題も伴います。フィンランドは、自然環境と調和した農業を重視する国であり、鶏の飼養による環境負荷、特に飼料生産に伴う輸入穀物依存や温室効果ガスの排出削減が課題となっています。また、動物福祉の観点から過密な飼育環境を改善する取り組みも望まれています。これらの課題に対応するためには、飼料源の多様化や持続可能な農業技術の導入、さらには国際協力による環境規制の強化が必要です。
フィンランドの場合、気候変動の影響も無視できません。北欧地域では、気温上昇が農業や飼養環境に影響を及ぼし、鶏飼育に必要な資源の確保が今後さらに難しくなる可能性があります。これに対処するためには、気候変動に適応した飼育システムの導入が不可欠です。
総じて、フィンランドの鶏飼養数推移データは、農業政策の変遷や国内外の需要動向、環境問題への対応が反映された結果だと言えます。今後は、持続可能な生産へのシフトを進めつつ、国内外の需要に応えられるバランスのとれた農業生産体制を構築することが重要です。フィンランド政府は、技術革新の支援や環境政策の強化、国際市場における競争力強化のための戦略を引き続き推進するべきです。これにより、国内の食料安全保障を守りつつ、持続可能で競争力のある農業を実現できるでしょう。