国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、フィンランドのカリフラワー・ブロッコリー生産量は過去60年にわたり大きな変動を見せています。特に1970年代から1980年代にかけて生産量は増加傾向を示しましたが、2000年代以降は減少傾向が見られ、2023年の生産量は3,580トンと、ピーク時である1979年の5,960トンから大きく減少しています。一部の年では天候や政策の影響が顕著であり、近年の低下は気候変動や農業従事者の減少が要因として考えられます。
フィンランドのカリフラワー・ブロッコリー生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 3,580 |
26.95% ↑
|
2022年 | 2,820 |
-15.32% ↓
|
2021年 | 3,330 |
-28.08% ↓
|
2020年 | 4,630 |
14.32% ↑
|
2019年 | 4,050 |
23.1% ↑
|
2018年 | 3,290 |
-23.27% ↓
|
2017年 | 4,288 |
25.97% ↑
|
2016年 | 3,404 |
-25.87% ↓
|
2015年 | 4,592 |
16.02% ↑
|
2014年 | 3,958 |
-15.63% ↓
|
2013年 | 4,691 |
15.4% ↑
|
2012年 | 4,065 |
2.99% ↑
|
2011年 | 3,947 |
74.8% ↑
|
2010年 | 2,258 |
-52.97% ↓
|
2009年 | 4,801 |
33.99% ↑
|
2008年 | 3,583 |
-7.08% ↓
|
2007年 | 3,856 |
-16.81% ↓
|
2006年 | 4,635 |
-5.91% ↓
|
2005年 | 4,926 |
15.12% ↑
|
2004年 | 4,279 |
-16.15% ↓
|
2003年 | 5,103 |
21.01% ↑
|
2002年 | 4,217 |
-5.24% ↓
|
2001年 | 4,450 |
-9.42% ↓
|
2000年 | 4,913 |
5.36% ↑
|
1999年 | 4,663 |
15.11% ↑
|
1998年 | 4,051 |
-11.49% ↓
|
1997年 | 4,577 |
10.32% ↑
|
1996年 | 4,149 |
-13.58% ↓
|
1995年 | 4,801 |
8.08% ↑
|
1994年 | 4,442 |
10.58% ↑
|
1993年 | 4,017 |
-18.9% ↓
|
1992年 | 4,953 |
13.63% ↑
|
1991年 | 4,359 |
0.11% ↑
|
1990年 | 4,354 |
-9.37% ↓
|
1989年 | 4,804 |
-4.51% ↓
|
1988年 | 5,031 |
19.84% ↑
|
1987年 | 4,198 |
-12.85% ↓
|
1986年 | 4,817 |
1.6% ↑
|
1985年 | 4,741 |
-10.83% ↓
|
1984年 | 5,317 |
129.18% ↑
|
1983年 | 2,320 |
-16.55% ↓
|
1982年 | 2,780 |
13.47% ↑
|
1981年 | 2,450 |
-38.13% ↓
|
1980年 | 3,960 |
-33.56% ↓
|
1979年 | 5,960 |
33.04% ↑
|
1978年 | 4,480 |
27.64% ↑
|
1977年 | 3,510 |
30% ↑
|
1976年 | 2,700 |
-17.68% ↓
|
1975年 | 3,280 |
-13.68% ↓
|
1974年 | 3,800 |
52% ↑
|
1973年 | 2,500 |
13.64% ↑
|
1972年 | 2,200 |
-18.52% ↓
|
1971年 | 2,700 |
58.82% ↑
|
1970年 | 1,700 | - |
1969年 | 1,700 |
6.25% ↑
|
1968年 | 1,600 |
14.29% ↑
|
1967年 | 1,400 |
-12.5% ↓
|
1966年 | 1,600 |
14.29% ↑
|
1965年 | 1,400 |
27.27% ↑
|
1964年 | 1,100 |
-15.38% ↓
|
1963年 | 1,300 |
-18.75% ↓
|
1962年 | 1,600 |
6.67% ↑
|
1961年 | 1,500 | - |
1961年から2023年までのフィンランドにおけるカリフラワー・ブロッコリーの生産量データを見ると、1960年代には年間1,500トンから1,700トン程度の安定した生産量が続いていましたが、1970年代に入ると徐々に増加し、1979年には5,960トンというピークに達しました。この時期の生産量増加には、農業技術の改良や欧州内での需要増加が影響していたと考えられます。
しかし1980年代以降、生産量はある程度の変動を見せながらもゆるやかに低下しており、2000年代中盤には再び5,000トンを超える年もあったものの、2010年代後半から2023年にかけては4,000トンを下回る年が増えてきました。2023年の3,580トンという値は、長期的なトレンドを踏まえると明らかに低調な状態といえます。
これらの変化にはいくつかの要因が関連していると考えられます。まず、気候変動による影響が挙げられます。フィンランドのような寒冷地では、農産物の生育は気象条件に大きく依存しています。極端な気温変化や長期的な気候の変化により、作物の安定的な生産が難しくなっている可能性があります。また、他の北欧諸国でも似たような傾向が見られる一方で、ドイツやフランスなど温暖な気候を持つ国々では比較的安定した生産量を維持していることから、フィンランド特有の地理的条件が影響していると考えられます。
もう一つの課題として、農業従事者の減少があります。都市化や高齢化に伴い、農業に従事する労働力の確保が難しくなり、生産効率が低下しています。また、フィンランドにおけるカリフラワーやブロッコリーの国内需要自体も飽和状態にあり、生産者が他の農作物へシフトしていることも一因として挙げられるでしょう。
さらに、輸出競争力の問題も無視できません。フィンランドは隣接するスウェーデンやデンマークと比較して広大な農地を持たないため、価格競争や輸送コストの面で不利な状況にあります。そのため、国内市場を支える供給力は限られざるを得ず、生産量全体には上限が設けられている状態です。
解決策として、第一に政府主導での気候変動対応政策の強化が求められます。耐寒性の高い品種の研究開発や導入を促進することで、寒冷地特有のリスクを軽減できる可能性があります。また、農業分野でのデジタル技術やスマート農業の導入を進め、生産効率を高める取り組みが必要です。特に若年層を農業分野に引き込むための教育プログラムや補助金制度の充実が効果的でしょう。
さらに、フィンランドがEU農業政策の枠組みの中で地域間協力を強化し、スウェーデンや他の北欧諸国と共同で貿易ルートの最適化を図ることが考えられます。これにより、隣国市場への適切な供給が可能となり、輸送コスト削減や需要の拡大につながる可能性があります。
最後に、国際的な視点では新型コロナウイルスパンデミックの影響による貿易の停滞やサプライチェーンの混乱が、近年の生産低下にどの程度影響したかも注視する必要があります。この影響を受けた農業部門の失地回復には、国際連携を強化することが鍵となるでしょう。
これらを総合的に考慮すると、フィンランドのカリフラワー・ブロッコリー生産量を持続的に増やしていくためには、気候変動への対応、農業の担い手強化、国際競争力向上の3つの柱が重要となります。