国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データ(2024年更新)によると、コモロのサツマイモ生産量は1960年代から2022年までの長期にわたり、増減を繰り返してきました。生産量は、多くの条件や規模の変動を反映しており、最小4,200トン(1990年)、最大15,000トン(1979~1981年)という幅広いレンジが見られます。近年は2014年の13,145トンをピークに減少傾向にあり、2022年には10,572トンという水準に落ち着いています。この推移は、農業の構造的課題や気候変動、社会的・経済的影響など、複合的な要因に起因すると考えられます。
コモロのサツマイモ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 10,572 |
2021年 | 10,842 |
2020年 | 11,171 |
2019年 | 11,500 |
2018年 | 11,829 |
2017年 | 12,158 |
2016年 | 12,487 |
2015年 | 12,816 |
2014年 | 13,145 |
2013年 | 11,500 |
2012年 | 11,200 |
2011年 | 11,000 |
2010年 | 10,500 |
2009年 | 9,918 |
2008年 | 9,348 |
2007年 | 8,655 |
2006年 | 7,822 |
2005年 | 6,491 |
2004年 | 6,090 |
2003年 | 5,731 |
2002年 | 5,434 |
2001年 | 5,337 |
2000年 | 5,239 |
1999年 | 5,141 |
1998年 | 5,043 |
1997年 | 4,890 |
1996年 | 4,890 |
1995年 | 4,789 |
1994年 | 4,700 |
1993年 | 4,620 |
1992年 | 4,540 |
1991年 | 4,400 |
1990年 | 4,200 |
1989年 | 13,422 |
1988年 | 13,600 |
1987年 | 15,000 |
1986年 | 9,700 |
1985年 | 10,000 |
1984年 | 10,000 |
1983年 | 15,000 |
1982年 | 15,000 |
1981年 | 15,000 |
1980年 | 15,000 |
1979年 | 15,000 |
1978年 | 14,000 |
1977年 | 14,000 |
1976年 | 13,400 |
1975年 | 13,000 |
1974年 | 12,600 |
1973年 | 12,200 |
1972年 | 12,100 |
1971年 | 12,000 |
1970年 | 10,000 |
1969年 | 10,000 |
1968年 | 11,000 |
1967年 | 10,000 |
1966年 | 11,000 |
1965年 | 10,000 |
1964年 | 9,000 |
1963年 | 8,000 |
1962年 | 7,000 |
1961年 | 7,000 |
コモロにおけるサツマイモ生産量の推移を見ると、1960年代から1980年代にかけては、全体的に上昇する傾向がみられます。特に、1970年代後半から1980年代初頭にかけての時期には、15,000トンという高い生産量を維持しています。この時期は、農業技術の発展や地域ごとの気候条件が比較的安定していたことがこの生産改善の一因と考えられます。
しかしながら、1984年以降急激な下降傾向が現れ、その後、1990年には過去最低の4,200トンを記録しました。このような大幅な減少には、同時期の地政学的リスクや政治的混乱が影響していると推測されます。さらに、自然災害や土地の劣化、人口増加による耕作可能地の縮小、他作物への関心のシフトといった要因も一役買っています。この減少期の影響は長く尾を引き、以降1990年代から2000年代初頭は5,000トン程度で推移し、回復に苦労する時期が続きました。
その後、2006年から2014年にかけて顕著な回復が見られ、特に2014年に記録した13,145トンは1980年代以降では最も高い水準に達しました。これは、地域の農業政策改革や技術支援が一定の成果を上げたこと、加えて気候条件の改善が関係しているとされます。しかし、2015年以降には緩やかな減少傾向が再び現れ、直近2022年の10,572トンまで落ち込みました。この傾向は、干ばつや洪水といった極端な気象条件の頻発、気候変動の影響、また国内のインフラ整備の遅れや農業に投入される資源の不足が影響していると見られます。
コモロは小島嶼国であり、人口増加による農地の過剰利用と共に、気候変動の影響を大きく受けやすい立地に位置しています。このため、持続可能な農業の導入が急務といえます。温暖化の進行による雨量の偏りや、海面上昇が低地での農業活動に与える悪影響も具体的に懸念されており、セクター全体で包括的な対応が求められます。比較として、日本や韓国のような効率的な農業技術導入の成功事例を活かすこと、またインドや中国が進める地域ごとの農業革新センターの設置などが参考になるでしょう。
今後、コモロが持続可能な生産体制を構築するためには、地域レベルでの協力や技術支援の強化、例えば乾燥地向けの耐性作物開発や灌漑インフラの整備が重要です。さらに、気候変動に対する政策立案を国際機関と連携して進めることは不可欠です。また、さつまいもは食糧安全保障の一翼を担う作物であるため、戦略的に経済支援を行うことで収量だけでなく、地域住民の生活水準全般にわたる向上を目指すべきです。コモロの農業政策、地域内外の協力体制、そして持続可能な開発目標(SDGs)に基づく取り組みが強化されることで、サツマイモ生産量は将来的に安定した回復基調へ向かう可能性が考えられます。