国際連合食糧農業機関が発表したデータによると、コモロにおけるヤギの飼養頭数は1961年の98,000頭から2022年の121,144頭まで増加トレンドを維持しています。1960年代から1970年代半ばにかけては減少が目立つ一方で、その後徐々に回復し、1980年代以降は比較的安定した成長がみられます。特に1990年代後半には急激な増加がありましたが、その後は相対的に安定した頭数を維持しています。2020年以降、数値の変動は非常に小さく、ほぼ横ばいの動きを示しています。
コモロのヤギ飼養頭数推移(1961年~2023年)
年度 | 飼養頭数(頭) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 121,194 |
0.04% ↑
|
2022年 | 121,144 |
0.05% ↑
|
2021年 | 121,088 |
0.05% ↑
|
2020年 | 121,033 |
-0.09% ↓
|
2019年 | 121,140 |
0.04% ↑
|
2018年 | 121,088 |
0.05% ↑
|
2017年 | 121,031 |
-0.03% ↓
|
2016年 | 121,064 |
-0.27% ↓
|
2015年 | 121,394 |
-0.5% ↓
|
2014年 | 122,000 | - |
2013年 | 122,000 | - |
2012年 | 122,000 | - |
2011年 | 122,000 |
1.67% ↑
|
2010年 | 120,000 |
1.69% ↑
|
2009年 | 118,000 | - |
2008年 | 118,000 | - |
2007年 | 118,000 | - |
2006年 | 118,000 |
2.61% ↑
|
2005年 | 115,000 | - |
2004年 | 115,000 | - |
2003年 | 115,000 | - |
2002年 | 115,000 |
1.63% ↑
|
2001年 | 113,150 | - |
2000年 | 113,150 |
-33.44% ↓
|
1999年 | 170,000 |
20.91% ↑
|
1998年 | 140,600 |
18.05% ↑
|
1997年 | 119,100 |
1.02% ↑
|
1996年 | 117,900 |
1.03% ↑
|
1995年 | 116,700 |
0.95% ↑
|
1994年 | 115,600 |
1.05% ↑
|
1993年 | 114,400 |
1.06% ↑
|
1992年 | 113,200 | - |
1991年 | 113,200 |
0.18% ↑
|
1990年 | 113,000 |
-5.79% ↓
|
1989年 | 119,940 |
2.91% ↑
|
1988年 | 116,550 |
3% ↑
|
1987年 | 113,150 |
7.76% ↑
|
1986年 | 105,000 |
7.14% ↑
|
1985年 | 98,000 |
3.16% ↑
|
1984年 | 95,000 |
2.15% ↑
|
1983年 | 93,000 |
5.68% ↑
|
1982年 | 88,000 |
1.15% ↑
|
1981年 | 87,000 | - |
1980年 | 87,000 |
1.16% ↑
|
1979年 | 86,000 |
1.18% ↑
|
1978年 | 85,000 |
1.19% ↑
|
1977年 | 84,000 | - |
1976年 | 84,000 |
2.44% ↑
|
1975年 | 82,000 | - |
1974年 | 82,000 |
1.23% ↑
|
1973年 | 81,000 | - |
1972年 | 81,000 | - |
1971年 | 81,000 | - |
1970年 | 81,000 |
-1.22% ↓
|
1969年 | 82,000 |
-1.2% ↓
|
1968年 | 83,000 |
-1.19% ↓
|
1967年 | 84,000 |
-6.67% ↓
|
1966年 | 90,000 |
-3.23% ↓
|
1965年 | 93,000 |
-1.06% ↓
|
1964年 | 94,000 |
-1.05% ↓
|
1963年 | 95,000 |
-2.06% ↓
|
1962年 | 97,000 |
-1.02% ↓
|
1961年 | 98,000 | - |
コモロのヤギ飼養頭数の推移を分析すると、長期的には増加傾向が見られるものの、いくつかの特異な変動を伴っています。特に1960年代から1970年代にかけて顕著な減少が見られ、当時の減少要因としては土地利用の変化、牧畜技術の未成熟、もしくは気候変動の影響が想定されます。しかし、1980年代以降は農業や牧畜に関する政策が整備されるにつれ、ヤギの飼養頭数は回復基調に入っています。
1990年代半ばから後半にかけての急激な増加は注目に値します。この急増の背景には、食肉需要の高まりや輸出振興政策が影響している可能性が考えられます。また、1998年から1999年にかけての急激な増加(140,600頭から170,000頭への変動)は異常値とも解釈でき、調査精度や記録方法の変化、または測定誤差の可能性を慎重に考慮すべきです。一方、2000年以降の頭数減少および安定化は、過剰飼養による環境負荷の問題や市場の需要低下が影響している可能性があります。
2020年から現在にかけてのわずかな増減幅は、コロナ禍の影響を含む社会経済的な要因を考慮する必要があります。パンデミックは他の国々と同様、コモロの畜産業にも影響を及ぼし、生育条件や輸送、需要に変化をもたらしたと考えられます。しかし、それにもかかわらず大きな減少が起きなかったことは、現地の牧畜コミュニティが持続的な飼育体制を維持していたことの証ともいえます。
今後の課題としては、自然資源の持続可能な利用が挙げられます。コモロのような島嶼国家では、土地利用の制約が厳しく、過剰な放牧は草地劣化や土壌の肥沃度低下に拍車をかける恐れがあります。また、ヤギの飼養だけでなく、生産性の向上や畜産物の付加価値の創出(例えばヤギ乳製品や皮革製品の加工)にも注力する必要があります。さらに、新技術導入を進めることで、飼養環境を改善しつつ頭数減少を防ぐことが重要です。
地政学的な観点からは、コモロは麻疹島嶼国の特徴として他国からの影響を受けやすく、輸送コストの高さが畜産物の輸出競争力を低下させる可能性があります。対策として、地域内協力による物流の効率化や食品安全基準の整備が考えられます。
結論として、コモロはヤギの飼養頭数を安定的に維持しているものの、持続可能な牧畜を進めるための政策強化が求められます。政府および国際機関には、牧草地環境保全、畜産技術者の育成、さらには市場開拓のための輸出支援政策など複合的なアプローチが期待されます。また、気候変動の深刻化を踏まえ、牧畜業を強靭化するための支援が喫緊の課題となっています。