国連食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータに基づくと、バヌアツにおけるヤギ肉生産量は1961年から1980年代初頭まで緩やかに増加し、その後1990年代にはおおむね安定的に推移しました。しかし、2000年代以降には再び上昇傾向を示し、2006年には41トンと最高潮に達しました。一方で、2010年代半ば以降、特に2020年代にかけて急激な下落に直面し、2023年には10トンにまで減少しました。
バヌアツのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 10 |
-25% ↓
|
2022年 | 14 |
-27.66% ↓
|
2021年 | 19 |
-14.82% ↓
|
2020年 | 22 |
-12.5% ↓
|
2019年 | 26 |
-12.3% ↓
|
2018年 | 29 |
-7.97% ↓
|
2017年 | 32 |
-5.47% ↓
|
2016年 | 33 |
-2.73% ↓
|
2015年 | 34 |
-1.18% ↓
|
2014年 | 35 |
-1.16% ↓
|
2013年 | 35 |
-1.15% ↓
|
2012年 | 36 |
-1.14% ↓
|
2011年 | 36 |
-1.15% ↓
|
2010年 | 36 |
-1.14% ↓
|
2009年 | 37 |
-2.12% ↓
|
2008年 | 38 |
-1.7% ↓
|
2007年 | 38 |
-5.38% ↓
|
2006年 | 41 |
6.02% ↑
|
2005年 | 38 |
6.11% ↑
|
2004年 | 36 |
12.5% ↑
|
2003年 | 32 |
14.29% ↑
|
2002年 | 28 |
7.69% ↑
|
2001年 | 26 | - |
2000年 | 26 | - |
1999年 | 26 | - |
1998年 | 26 | - |
1997年 | 26 | - |
1996年 | 26 | - |
1995年 | 26 | - |
1994年 | 26 | - |
1993年 | 26 | - |
1992年 | 26 |
8.33% ↑
|
1991年 | 24 |
4.35% ↑
|
1990年 | 23 |
4.55% ↑
|
1989年 | 22 |
4.76% ↑
|
1988年 | 21 |
-22.22% ↓
|
1987年 | 27 |
1.89% ↑
|
1986年 | 27 |
1.92% ↑
|
1985年 | 26 |
1.96% ↑
|
1984年 | 26 |
2% ↑
|
1983年 | 25 |
2.04% ↑
|
1982年 | 25 |
2.08% ↑
|
1981年 | 24 |
2.13% ↑
|
1980年 | 24 |
-6% ↓
|
1979年 | 25 |
11.11% ↑
|
1978年 | 23 |
2.27% ↑
|
1977年 | 22 |
2.33% ↑
|
1976年 | 22 |
2.38% ↑
|
1975年 | 21 |
2.44% ↑
|
1974年 | 21 |
2.5% ↑
|
1973年 | 20 |
1.01% ↑
|
1972年 | 20 |
1.54% ↑
|
1971年 | 20 |
1.56% ↑
|
1970年 | 19 |
1.59% ↑
|
1969年 | 19 |
1.61% ↑
|
1968年 | 19 |
3.33% ↑
|
1967年 | 18 |
0.56% ↑
|
1966年 | 18 |
1.99% ↑
|
1965年 | 18 |
1.92% ↑
|
1964年 | 17 |
1.89% ↑
|
1963年 | 17 |
2.05% ↑
|
1962年 | 17 |
2.03% ↑
|
1961年 | 16 | - |
バヌアツにおけるヤギ肉生産量の推移は、その農業政策、経済状況、環境および気候条件、さらに社会的および国際的な要因に大きく影響されてきました。このデータが示す通り、生産量は1960年代から緩やかな右肩上がりを記録し、特に2000年代初頭には顕著な増加が見られました。この時期の成長は、ヤギの飼育に対する関心の高まりや農業技術の向上、さらには地元および国際市場における需要の拡大によるものであると考えられます。
しかし、急激な下落が始まるのは2010年代後半以降です。この流れの背景には、複数の要因が絡み合っていると考えられます。一つには、気候変動の影響が挙げられます。バヌアツは小さな島国であり、台風や洪水、乾燥化など、極端な気候現象が農業生産に深刻な影響を与えることが知られています。特に2020年代初頭にかけて、自然災害を原因とする農地の荒廃や、家畜の死亡が記録されている可能性があります。
また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる間接的な影響にも注目する必要があります。バヌアツのような小国では、外部からの経済支援や観光収益に大きく依存していますが、パンデミックにより国際観光が停止し、経済的な停滞がヤギ飼育業者の運営に悪影響を与えた可能性があります。また、国際的な物流網の混乱が飼料や関連物資の調達を困難にし、家畜飼育の規模縮小につながったと推測されます。
さらに、地政学的リスクとして食料安全保障の変化への対応能力にも限界が生じています。他国と比較した場合、ヤギ肉のような特定の農産物はバヌアツの主要な輸出品ではなく、小規模な家禽事業によって国内需要が補われています。一方、アメリカ、中国、日本、インドのような大国では農業生産が工業化され、安定した生産基盤が確立されています。この差は輸入品競争力の格差として現れています。
今後の課題としては、以下のような幾つかの具体的な政策が検討されるべきです。まず、ヤギ飼育を含む農業分野の気候変動への耐性を高めるため、持続可能な農業技術の導入が求められます。例えば、灌漑技術の改善や、耐久性の高い放牧地の整備などが挙げられます。また、国際社会との協力を深め、外部資源を活用して農業研究や技術支援を強化する必要があります。これらの努力により、災害やその他の不確実性に対するリスクの軽減が期待されます。
さらに経済多様化も重要です。観光業に過度に依存する現状を踏まえ、農業を含む他の経済セクターの強化、特にヤギ肉のような地元資源を活用した新たなビジネスモデルの構築が必要です。たとえば、冷凍加工技術を利用した輸出用の肉製品の生産や、バヌアツ独自のブランド構築が可能性として挙げられます。
結論として、このデータはバヌアツ国内でのヤギ肉生産の極めて困難な状況を浮き彫りにしています。しかし、適切な政策と支援により安定した供給を確保し、国内外での需要に応じた生産体制を整備することは可能です。地域および国際機関との協力を図り、効率的かつ持続可能な農業を実現するための取り組みが今後の重要な課題となります。