国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、バヌアツにおける馬の飼養数は、1961年の1,350頭から2022年の2,303頭へと推移しています。この間、一時的な増加傾向とその後の大幅な減少が見られ、特に2007年以降の上昇期と2015年以降の急激な減少が特徴的です。このデータは、バヌアツにおける家畜産業や社会経済状況、さらに気候影響などの関連性を示唆しています。
バヌアツの馬飼養数推移(1961年~2023年)
年度 | 飼養数(頭) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 1,514 |
-34.26% ↓
|
2022年 | 2,303 |
-27.87% ↓
|
2021年 | 3,193 |
-17.06% ↓
|
2020年 | 3,850 |
-13.95% ↓
|
2019年 | 4,474 |
-16.03% ↓
|
2018年 | 5,328 |
-6.95% ↓
|
2017年 | 5,726 |
-3.42% ↓
|
2016年 | 5,929 |
-10.79% ↓
|
2015年 | 6,646 |
2.25% ↑
|
2014年 | 6,500 |
4.84% ↑
|
2013年 | 6,200 |
3.33% ↑
|
2012年 | 6,000 | - |
2011年 | 6,000 | - |
2010年 | 6,000 |
3.45% ↑
|
2009年 | 5,800 |
28.89% ↑
|
2008年 | 4,500 |
12.5% ↑
|
2007年 | 4,000 |
29.03% ↑
|
2006年 | 3,100 | - |
2005年 | 3,100 | - |
2004年 | 3,100 | - |
2003年 | 3,100 | - |
2002年 | 3,100 | - |
2001年 | 3,100 | - |
2000年 | 3,100 | - |
1999年 | 3,100 | - |
1998年 | 3,100 | - |
1997年 | 3,100 | - |
1996年 | 3,100 | - |
1995年 | 3,100 | - |
1994年 | 3,100 | - |
1993年 | 3,100 |
3.33% ↑
|
1992年 | 3,000 | - |
1991年 | 3,000 | - |
1990年 | 3,000 | - |
1989年 | 3,000 | - |
1988年 | 3,000 | - |
1987年 | 3,000 |
7.14% ↑
|
1986年 | 2,800 |
55.56% ↑
|
1985年 | 1,800 |
63.64% ↑
|
1984年 | 1,100 |
8.37% ↑
|
1983年 | 1,015 |
-1.46% ↓
|
1982年 | 1,030 |
-1.9% ↓
|
1981年 | 1,050 |
-1.87% ↓
|
1980年 | 1,070 |
-2.73% ↓
|
1979年 | 1,100 | - |
1978年 | 1,100 | - |
1977年 | 1,100 | - |
1976年 | 1,100 | - |
1975年 | 1,100 | - |
1974年 | 1,100 |
10% ↑
|
1973年 | 1,000 | - |
1972年 | 1,000 |
-9.09% ↓
|
1971年 | 1,100 |
-8.33% ↓
|
1970年 | 1,200 |
-1.07% ↓
|
1969年 | 1,213 |
-2.41% ↓
|
1968年 | 1,243 |
-5.4% ↓
|
1967年 | 1,314 |
-10.67% ↓
|
1966年 | 1,471 |
-0.88% ↓
|
1965年 | 1,484 |
7.54% ↑
|
1964年 | 1,380 |
-1.43% ↓
|
1963年 | 1,400 | - |
1962年 | 1,400 |
3.7% ↑
|
1961年 | 1,350 | - |
バヌアツの馬飼養数推移のデータを見ると、明確な時系列的な変化が浮かび上がります。1961年から1980年代初頭までは、ほぼ毎年1,000頭から1,100頭の間で安定して推移していましたが、1985年以降急激な増加が見られ、1990年代以降約3,000頭台で横ばいの状況が続きました。その後の2007年以降は急速に上昇し、2015年には約6,646頭と過去最高を記録しました。しかし、このピークを境に減少傾向に転じ、2022年には約2,303頭にまで落ち込んでいます。
この長期にわたる推移は、いくつかの要因によって説明することができます。まず、1980年代後半から1990年代に見られた大幅な増加は、バヌアツの農村地域で家畜としての馬の重要性が見直されたことや、観光業などで馬の役割が増えた影響が寄与していると考えられます。この時期には農業政策の改定や農村経済の発展の影響もあったと推測されます。
2000年代の後半から2015年にかけての増加期は、観光業がバヌアツ経済における主要産業として成長を続け、馬を利用したエコツーリズムや伝統文化体験が人気を博したことと関連するとみられます。しかし、2015年以降の急激な減少は、いくつかの懸念すべき要因が重なった結果です。一つは、気候変動による自然災害の頻発です。具体的には、サイクロンによる牧草地や馬小屋への損害が考えられます。また、疫病の発生による馬の健康状態への悪影響や、飼育コストの増加も減少を加速させた要因である可能性があります。さらに、都市部への経済的集中や若年層の農村離れが進む中、農村部での馬の飼養が困難になったことも理由の一つと考えられます。
このような環境の中で、馬飼養数の減少はバヌアツの農業・観光の持続可能性に影響を与える可能性があります。それに加え、馬の飼養減少は地域経済や文化にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。例えば、伝統行事における馬の使用減少は文化的な喪失に繋がるリスクがあると考えられます。
今後、持続可能な馬の飼養を実現するためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、気候変動による影響を軽減するための強化された牧草地管理や自然災害への備えを整えることが重要です。たとえば災害時に迅速に対応できる避難施設や家畜保護のためのインフラ整備が考えられます。また、若年層の農業参加を促進するための教育プログラムや雇用創出の取り組みも必要です。さらに、観光業との連携を強化し、馬に関連した文化体験やエコツーリズムを再活性化させることで、馬の飼養の経済的価値を高めることが期待されます。
結論として、このデータはバヌアツにおける馬飼養の動向を明確に示しており、自然災害や社会的変化が馬飼養に与える影響の大きさを示唆しています。適切な政策の導入と持続可能な開発への努力が、この貴重な資源を保護する鍵となるでしょう。国際的な協力の中で、FAOや地域団体が関与するプログラムを通じて支援を拡大し、バヌアツの未来の家畜産業と文化を守ることが求められます。