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バヌアツのコーヒー豆生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、バヌアツのコーヒー豆の生産量は過去60年にわたって大きな変動を経験してきました。1960年代に200トン以上の生産量を記録していたバヌアツのコーヒー産業は、その後の数十年間で急激な減少が見られ、1980年代には20トンを割り込む年もありました。最近の生産量は2010年代以降ある程度安定しており、2020年から2022年には36トン前後で推移しています。この推移は、気候変動や地政学的な要因、農業政策の影響など多岐にわたる要因を反映していると考えられます。

年度 生産量(トン)
2022年 36
2021年 36
2020年 36
2019年 37
2018年 35
2017年 37
2016年 38
2015年 32
2014年 41
2013年 42
2012年 34
2011年 40
2010年 24
2009年 15
2008年 15
2007年 16
2006年 16
2005年 14
2004年 16
2003年 16
2002年 20
2001年 15
2000年 30
1999年 45
1998年 50
1997年 38
1996年 40
1995年 33
1994年 31
1993年 28
1992年 30
1991年 42
1990年 15
1989年 25
1988年 15
1987年 53
1986年 57
1985年 65
1984年 55
1983年 38
1982年 21
1981年 61
1980年 60
1979年 80
1978年 60
1977年 60
1976年 60
1975年 60
1974年 120
1973年 120
1972年 120
1971年 120
1970年 120
1969年 180
1968年 240
1967年 300
1966年 250
1965年 250
1964年 200
1963年 200
1962年 200
1961年 240

バヌアツのコーヒー豆生産量の推移を分析すると、1960年代には240~300トンという比較的高い生産量を維持していました。この時期はおそらく、農業技術の普及や地元消費の需要に支えられていたと推測されます。しかし、1970年代に入ると生産量は急激に低下し、1975年にはわずか60トンにまで落ち込みます。その後も減少傾向は続き、1980年代には年間平均で50トンを下回る低水準が続きました。この時期には、コーヒーの市場競争力の喪失や世界市場での価格低迷、そしてバヌアツの独立(1980年)の影響による政治的・経済的不安定が背景にあると考えられます。

1990年代に入ると、生産量は20~40トンで安定し、その後2000年代にはさらに低迷するものの、2010年代にはやや回復し、40トン前後で推移しています。この復調には、バヌアツ政府や農業団体による品質向上や輸出奨励の取り組みが寄与していると考えられます。一方で、バヌアツ独自の地理的条件、たとえばサイクロンや火山活動といった自然現象の影響が、農業全般における大きなリスクとして残っていることも否めません。

近年の気候変動によるリスクも軽視できません。コーヒーの生育には特定の気候条件が必要ですが、気温の上昇や降雨パターンの変化がバヌアツのコーヒー生産に負の影響を与えている可能性があります。また、2015年のサイクロン・パムのような自然災害はコーヒー農家に深刻な被害をもたらし、生産基盤の脆弱性を露呈させました。

一方、国際競争力の観点から見た場合、バヌアツの生産量は他の主要生産国と比べて極めて少量にとどまっています。ブラジルやベトナムといった世界的な大規模生産国に比べると、バヌアツの生産量は非現実的な競争環境に置かれていると言えます。バヌアツはその強みを「数量」ではなく、「質」に求めるべきでしょう。持続可能な農業手法やオーガニック認証を活用し、ニッチな市場を狙うことで国際的なブランド化を図ることが有望です。

コーヒーを輸出産品として位置付ける場合、品質向上のための技術研修やインフラ整備が不可欠となります。また、小規模農家の多いバヌアツでは、農業協同組合の組織化や、フェアトレードのように小規模農家を支援する国際的な枠組みを活用することも重要です。

バヌアツの地政学的特徴や経済的課題を考慮すると、国際機関や近隣諸国との地域協力が欠かせません。たとえば、南太平洋地域全体での農業技術交換の場を設けることや、災害対策を強化するための支援協議を進めることが考えられます。また、気候変動に対応した作物の改良や、災害発生時の被害を最小限に抑える防災措置の導入も必要です。

総じて、バヌアツのコーヒー生産は、過去のデータから見ると今後も大規模な増産は難しいと見込まれますが、品質向上や地域協力を通じた特色ある農業産業の確立が鍵となります。同時に、自然災害や世界市場の変動といった脅威に対する適応力を高めることが求められます。これらの課題に対し、政府や国際機関、そして地元コミュニティが協力して対応することが必要です。