国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、バヌアツの馬肉生産量は、1961年には10トンであったところ、その後大きな変動を見せながら2010年代には一時的に増加しました。2013年にはピークの25トンに達しましたが、その後減少傾向が続き、2023年には6トンにまで落ち込んでいます。この長期的な推移は、農業方針、気候変動、需要の変化などさまざまな要因に影響されていると考えられます。
バヌアツの馬肉推移(1961年~2023年)
年度 | (トン) | 増減率 |
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2023年 | 6 |
-33.89% ↓
|
2022年 | 8 |
-27.38% ↓
|
2021年 | 12 |
-16.56% ↓
|
2020年 | 14 |
-13.35% ↓
|
2019年 | 16 |
-15.51% ↓
|
2018年 | 19 |
-6.49% ↓
|
2017年 | 20 |
-4.67% ↓
|
2016年 | 21 |
-15.21% ↓
|
2015年 | 25 |
-4.8% ↓
|
2014年 | 26 |
4.17% ↑
|
2013年 | 25 |
5% ↑
|
2012年 | 24 | - |
2011年 | 24 | - |
2010年 | 24 |
6.67% ↑
|
2009年 | 23 |
50% ↑
|
2008年 | 15 |
25% ↑
|
2007年 | 12 |
14.29% ↑
|
2006年 | 11 |
16.67% ↑
|
2005年 | 9 | - |
2004年 | 9 | - |
2003年 | 9 | - |
2002年 | 9 | - |
2001年 | 9 | - |
2000年 | 9 | - |
1999年 | 9 | - |
1998年 | 9 | - |
1997年 | 9 | - |
1996年 | 9 | - |
1995年 | 9 | - |
1994年 | 9 | - |
1993年 | 9 | - |
1992年 | 9 | - |
1991年 | 9 | - |
1990年 | 9 | - |
1989年 | 9 | - |
1988年 | 9 | - |
1987年 | 9 | - |
1986年 | 9 | - |
1985年 | 9 | - |
1984年 | 9 | - |
1983年 | 9 | - |
1982年 | 9 |
-10.45% ↓
|
1981年 | 10 |
11.67% ↑
|
1980年 | 9 |
9.09% ↑
|
1979年 | 8 | - |
1978年 | 8 | - |
1977年 | 8 | - |
1976年 | 8 |
-17.91% ↓
|
1975年 | 10 |
-48.46% ↓
|
1974年 | 20 |
188.89% ↑
|
1973年 | 7 | - |
1972年 | 7 |
-59.09% ↓
|
1971年 | 17 | - |
1970年 | 17 |
80.33% ↑
|
1969年 | 9 |
-1.61% ↓
|
1968年 | 9 |
-17.33% ↓
|
1967年 | 11 |
-53.13% ↓
|
1966年 | 24 |
116.22% ↑
|
1965年 | 11 |
7.25% ↑
|
1964年 | 10 |
-1.43% ↓
|
1963年 | 11 | - |
1962年 | 11 |
2.94% ↑
|
1961年 | 10 | - |
バヌアツにおける馬肉生産の歴史的推移を見ると、最初の記録となる1961年の10トンから1970年代までは比較的不安定な動きを見せています。それ以降、1980年代から1990年代はほぼ一定で年間9トンの生産が続き、安定期といえる状況が見られました。しかし、2000年代に入ってからは上昇傾向が始まり、2013年には過去最高生産量の25トンを記録しています。この増加は、観光業や輸出の需要が増加したこと、ならびに国内の肉消費の多様化が要因と考えられます。
しかし、近年のデータは減少傾向を示しており、2023年には6トンへと大幅に減少しました。この要因としては、まず気候変動の影響が挙げられます。太平洋地域での台風頻度の増加や気候の不安定化は、飼料提供や家畜管理の効率を大きく制限します。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により国内外の輸送が滞り、観光業をはじめとする関連産業が打撃を受けたことで馬肉の需要低下が起こった可能性があります。
バヌアツのこの馬肉生産量の低下は、単に国内の需要低迷を表しているだけではなく、地域全体の経済環境や畜産業の生産性にも波及的な影響を及ぼしています。他国と比較すると、日本や韓国では馬肉の消費はニッチな範囲に留まっていますが、ヨーロッパ諸国では一定のマーケットを持っており、特にフランスやベルギーでは高需要の特殊市場が存在します。そのため、バヌアツにおける国際的需要への応答力が充分であれば、生産量低下を抑制する道も考えられますが、現段階ではその課題解決に向けた体制が整っていないと言えます。
課題としては、まず畜産業への投資が十分であるかどうかが挙げられます。持続可能な畜産を支えるためのインフラや技術支援が不十分である場合、一部の農家しか馬肉生産に対応できず、生産量は自然に低下していきます。また、地政学的視点からも、バヌアツの地理的条件が課題となります。本国は小島嶼(しょうとうしょ)国家であり、輸送コストの負担や災害時の対応能力が他国と比べて劣る可能性が高いです。
未来に向けての提言として、まず畜産業全般における技術向上が必要です。家畜管理の効率を最大化するため、新しい飼育技術や飼料管理方法を導入することで生産性向上を目指すべきです。また、国際市場での競争力を更に高めるため、品質保証の強化や特定市場に向けた製品開発も有効な戦略となるでしょう。たとえば、環境に優しい飼育方法や、有機馬肉として認証を受けた商品を展開することで、高付加価値を持つ市場を狙うことが可能です。
さらに、輸送インフラの整備や地域間協力も重要です。隣国との共同輸送や共同生産の枠組みを構築することで、コストや効率の面で大きな改善が期待されます。国内だけで完結させるのではなく、地域的な枠組みを通じてより広範囲の経済圏との結びつきを強化することも考慮すべきでしょう。
また、気候変動への対応や災害対策の強化も避けて通れません。この地域は自然災害のリスクが高いため、災害時に迅速かつ効率的な支援が可能になるよう、地域全体での連携体制の構築が求められます。これら全ての対策は、単に馬肉生産量を回復させるだけでなく、バヌアツの農業や観光業を活性化するための基盤となるでしょう。
結論として、バヌアツの馬肉生産推移を分析することで、同国が抱える農畜産業や経済構造の課題が浮き彫りとなりました。長期的な対策としては、技術支援、インフラ強化、国際市場開拓、気候変動対応という複数の視点を組み合わせて総合的に対処することが重要です。この方針を一貫して進めることで、バヌアツの馬肉生産は再び安定した成長軌道を描く可能性があります。