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ルーマニアの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年の最新データによると、ルーマニアの牛乳生産量は、1960年代から2023年にかけて変動を見せています。特に1970年代後半から1980年代にかけては生産量が大幅に増加し、1990年代にはやや安定期を迎えましたが、2000年代中盤には再び増加傾向を示しました。しかし、2010年代後半から2020年代にかけては生産量が再び減少し、2023年には3,618,800トンという数字に落ち着きました。この推移は、ルーマニア農業の政策的背景や経済的要因、地政学的な影響などと密接に関連しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,618,800
-0.08% ↓
2022年 3,621,800
-0.42% ↓
2021年 3,637,000
-1.16% ↓
2020年 3,679,600
0.45% ↑
2019年 3,663,200
-3.54% ↓
2018年 3,797,600
-0.43% ↓
2017年 3,814,132
-3.55% ↓
2016年 3,954,331
-1.29% ↓
2015年 4,005,994
-3% ↓
2014年 4,129,838
3.74% ↑
2013年 3,981,053
2.06% ↑
2012年 3,900,610
-4.72% ↓
2011年 4,093,735
3.25% ↑
2010年 3,964,882
-15.32% ↓
2009年 4,682,071
-4.12% ↓
2008年 4,883,436
-2.88% ↓
2007年 5,028,254
-5.37% ↓
2006年 5,313,358
6.1% ↑
2005年 5,007,800
-0.9% ↓
2004年 5,053,100
4.14% ↑
2003年 4,852,149
4.63% ↑
2002年 4,637,438
4.04% ↑
2001年 4,457,353
3.63% ↑
2000年 4,301,259
-1.35% ↓
1999年 4,360,295
-3.36% ↓
1998年 4,511,924
-2.72% ↓
1997年 4,637,954
-1.03% ↓
1996年 4,686,204
1.55% ↑
1995年 4,614,700
7.43% ↑
1994年 4,295,500
17.05% ↑
1993年 3,669,700
5.95% ↑
1992年 3,463,469
-4.31% ↓
1991年 3,619,480
6.2% ↑
1990年 3,408,176
2.56% ↑
1989年 3,323,000
-16.21% ↓
1988年 3,966,000
4.76% ↑
1987年 3,785,800
-0.11% ↓
1986年 3,790,000
-3.14% ↓
1985年 3,913,000
-3.62% ↓
1984年 4,059,860
5.38% ↑
1983年 3,852,700
14.5% ↑
1982年 3,364,800
-6.56% ↓
1981年 3,601,200
-9.86% ↓
1980年 3,995,000
-8.48% ↓
1979年 4,365,000
-0.08% ↓
1978年 4,368,600
3.72% ↑
1977年 4,212,000
10.08% ↑
1976年 3,826,400
10.65% ↑
1975年 3,458,100
2.11% ↑
1974年 3,386,800
-0.09% ↓
1973年 3,390,000
7.15% ↑
1972年 3,163,800
11.81% ↑
1971年 2,829,600
2.72% ↑
1970年 2,754,800
0.61% ↑
1969年 2,738,000
-0.35% ↓
1968年 2,747,500
-7.62% ↓
1967年 2,974,200
11.13% ↑
1966年 2,676,300
16.15% ↑
1965年 2,304,200
8.8% ↑
1964年 2,117,800
-3.11% ↓
1963年 2,185,700
-9.11% ↓
1962年 2,404,900
-3.73% ↓
1961年 2,498,100 -

ルーマニアの牛乳生産は、国の農業部門において重要な位置を占めており、その推移から国内および国際市場の変化を見ることができます。1960年代の生産量は2,500,000トン前後でスタートし、その後1970年代中盤には3,000,000トンを超え、1977年から1980年にかけてピークを迎えました。特筆すべきは1978年の4,368,600トンで、過去最高値を記録したことです。この高い生産量は、当時の社会主義体制下で集中的な農業政策が進められたことと、農業インフラが整備された背景に起因していると考えられます。

しかし、1980年代の後半から1990年代初頭にかけて、社会主義体制の終焉とともに、牛乳生産は一定の減少を見せ始めます。この期間、国内の市場経済化と共に家畜業や農作物の生産体制が大きく変化し、これが直接的に生産量に影響しました。特に1989年の生産量は3,323,000トンと、10年前に比べて減少がみられます。一方で、1990年代中盤以降は回復基調に転じ、1996年には4,686,204トンに達しました。この時期の増加は、EUの水準に準拠した農業政策や機械化の進展が貢献したと見られます。

その後、2000年代に入ると成長が徐々に鈍化し、特に2010年には生産量が3,964,882トンに低下しました。この減少は、EU加盟による大規模な市場の影響、新たな規制の導入、そして農村人口の減少が一因と考えられます。また、EU加盟以降、食の安全規制が強化され、これに対応するためのコストが小規模な農家にとって負担となり、一部の農場が廃業に追い込まれた可能性も指摘されています。

さらに2020年以降、新型コロナウイルス感染症の影響が牛乳生産にも影響を与えました。物流の混乱や飼料価格の上昇により、経済的な影響が広がりました。2023年の生産量は3,618,800トンで、ここ数年間は減少傾向に歯止めがかからない状況が続いています。

この生産量の変化は、地政学的リスク、特にウクライナ情勢による飼料輸入への影響や、エネルギー価格の高騰とも関係しています。ルーマニアは多くの農産物を地域および国際市場に依存しており、こうした経済圧力が生産効率や国内の農業活動に影響を及ぼしていると考えられます。

今後、持続可能な牛乳生産を確保するには、いくつかの具体的な対策が必要です。例えば、農業労働力の確保を支援するための移民政策の強化、もしくは地元農家への直接的な補助金の提供が考えられます。また、気候変動による影響を緩和するため、飼料生産や家畜管理の効率化を促進する技術の導入も効果的です。そして国際的にも、生産および輸送のコストを抑えるための地域協力を強化し、より適応力の高い農業生産体制を築くことが求められます。

結論として、ルーマニアの牛乳生産は過去数十年の間に多くの変遷を経てきました。この変化は、国内外の複雑な要因によるものですが、特に経済的および地政学的な背景と密接に関連しています。今後、ルーマニアの牛乳生産を維持・発展させるためには、効率的な政策や技術導入、および国際協力が不可欠となります。このような対策によって、同国は長期的に安定した農業生産を実現し、地域経済にも大きく寄与することが期待されます。