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ルーマニアの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、ルーマニアの羊肉生産量は1961年から2023年の期間にわたり、増減を繰り返しながら推移しており、ピークは1990年の101,500トン、最も少ない年は2006年の41,993トンでした。近年では2022年に58,350トンを記録し、安定傾向がありますが、長期的に見ると減少傾向を示しています。この動向は、国内の経済状況、農業政策、気候変動、国際市場の影響を反映しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 54,520
-6.56% ↓
2022年 58,350
8.94% ↑
2021年 53,560
5.91% ↑
2020年 50,570
1.94% ↑
2019年 49,610
4.44% ↑
2018年 47,500
-35.31% ↓
2017年 73,426
-5.1% ↓
2016年 77,375
9.01% ↑
2015年 70,982
4.8% ↑
2014年 67,734
-0.55% ↓
2013年 68,108
-0.58% ↓
2012年 68,504
9.77% ↑
2011年 62,407
-0.23% ↓
2010年 62,552
-1.9% ↓
2009年 63,765
36.87% ↑
2008年 46,589
-7.48% ↓
2007年 50,357
19.92% ↑
2006年 41,993
-13.75% ↓
2005年 48,688
-27.06% ↓
2004年 66,752
7.49% ↑
2003年 62,100
21.84% ↑
2002年 50,968
6.05% ↑
2001年 48,062
-2.25% ↓
2000年 49,168
-8.25% ↓
1999年 53,588
0.19% ↑
1998年 53,486
-9.63% ↓
1997年 59,186
-10.5% ↓
1996年 66,126
-4.4% ↓
1995年 69,172
-7.15% ↓
1994年 74,500
-12.35% ↓
1993年 85,000
-8.11% ↓
1992年 92,500
6.94% ↑
1991年 86,500
-14.78% ↓
1990年 101,500
15.47% ↑
1989年 87,900
18.46% ↑
1988年 74,200
-10.06% ↓
1987年 82,500
11.49% ↑
1986年 74,000
-5.13% ↓
1985年 78,000
-7.14% ↓
1984年 84,000
24.08% ↑
1983年 67,700 -
1982年 67,700
11.35% ↑
1981年 60,800
-17.95% ↓
1980年 74,100
-8.18% ↓
1979年 80,700
19.73% ↑
1978年 67,400
-9.04% ↓
1977年 74,100
15.78% ↑
1976年 64,000
-4.76% ↓
1975年 67,200
1.05% ↑
1974年 66,500
1.22% ↑
1973年 65,700
9.5% ↑
1972年 60,000
-5.66% ↓
1971年 63,600
-16.21% ↓
1970年 75,900
22.42% ↑
1969年 62,000
18.1% ↑
1968年 52,500
-4.02% ↓
1967年 54,700
18.14% ↑
1966年 46,300
-1.91% ↓
1965年 47,200
0.21% ↑
1964年 47,100
-3.29% ↓
1963年 48,700
-5.62% ↓
1962年 51,600
1.98% ↑
1961年 50,600 -

ルーマニアは歴史的に畜産国として知られ、とりわけ羊の畜産は長年にわたり国内農業と農村地域経済の重要な一部を占めてきました。しかし、羊肉生産量の長期的な推移を分析すると、異なる時期における農業政策、社会経済状況、および外部要因の影響を受けていることが明らかです。

データは、1960年代から1970年代初頭にかけて生産量が増加傾向を示した後、1980年代まで比較的高い水準を維持する特徴を持っています。特に1990年には記録的な101,500トンを達成しています。この高い生産量は、農業集団化政策に基づく大規模生産とソビエト圏の市場への供給に支えられていました。しかし、1990年代に入り社会体制変換期を迎えると、農業の効率低下や市場構造の変化、資金不足によって大きな減少傾向が見られるようになります。この減少は、1999年から2006年にかけて最も顕著で、生産量は50,000トン前後で推移しました。

2000年代以降、生産量は徐々に回復するとともにいくらかの変動が見られましたが、過去のピーク時期には及びません。2016年には77,375トンを記録し一定の成長を見せたものの、その後の数年間で再び減少に転じ、直近の2023年は54,520トンという数値が示されています。

この長期推移に影響を及ぼした要因をいくつか挙げます。第一に、EU加盟後の農業政策の変化が挙げられます。EU規制が導入されたことで、食品安全や環境対策に伴う生産コストが増加し、小規模農家にとって競争環境が厳しくなったことが一因となっています。第二に、都市化や国内人口構造の変化が農村の労働力減少を招き、伝統的な畜産活動に対する志向が減少したことも指摘されます。第三には、気候変動です。近年では長期的な干ばつや異常気象が飼料生産に影響を与え、畜産全体の効率の低下をもたらしていることが確認されています。

将来的な課題については、まず持続可能性の向上が重要です。ルーマニア政府や農家は、気候変動の影響を軽減するため、牧草地管理の改善や飼料の多様化などの施策を検討する必要があります。また、EUの農村開発基金など外部資金を活用し、小規模農家の近代化やテクノロジー導入への支援を強化することが鍵になります。さらに、国内市場や輸出市場をターゲットにした競争力強化政策も併せて推進することが求められます。

国際的には、ルーマニアの羊肉は品質で一定の評価を得ていますが、オーストラリアやニュージーランドといった他の主要生産国との競争が厳しい状況です。このため、差別化されたブランド構築や有機・地産地消の取り組みを積極的に進めるべきです。また、中国をはじめとした新興経済国への輸出開拓は中長期的な成長を実現する有力な方向性といえます。

結論として、ルーマニアの羊肉生産量はこれまで多くの外部要因に左右され変動してきましたが、特に近年は環境的な課題や市場構造の変化が顕著となっています。将来的な安定と成長には持続可能な畜産政策と対応力の高い農業戦略が不可欠です。地域間協力や国際貿易の枠組みを通じて競争力を高めると同時に、国内の農村開発促進を通じた生産基盤の強化が望まれます。