国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、1961年以降のルーマニアのテンサイ(甜菜)生産量は、起伏のある大きな変動を示しています。特に1960年代後半から1980年代にかけて、生産量は年間400万~700万トンで推移する高い生産期を持っていましたが、1990年以降は大幅に減少し、2022年には28万トン、2023年には40万トン近くにまで落ち込んでいます。これにより、テンサイ生産は過去数十年間で急激な縮小傾向にあると言えます。
ルーマニアのテンサイ(甜菜)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 403,670 |
43.49% ↑
|
2022年 | 281,330 |
-64.09% ↓
|
2021年 | 783,530 |
9.05% ↑
|
2020年 | 718,480 |
-21.66% ↓
|
2019年 | 917,160 |
-6.25% ↓
|
2018年 | 978,270 |
-16.71% ↓
|
2017年 | 1,174,502 |
16.04% ↑
|
2016年 | 1,012,186 |
-2.75% ↓
|
2015年 | 1,040,827 |
-25.58% ↓
|
2014年 | 1,398,570 |
35.89% ↑
|
2013年 | 1,029,209 |
42.99% ↑
|
2012年 | 719,788 |
8.98% ↑
|
2011年 | 660,497 |
-21.17% ↓
|
2010年 | 837,895 |
2.58% ↑
|
2009年 | 816,814 |
15.59% ↑
|
2008年 | 706,660 |
-5.63% ↓
|
2007年 | 748,839 |
-35.01% ↓
|
2006年 | 1,152,200 |
57.91% ↑
|
2005年 | 729,658 |
8.46% ↑
|
2004年 | 672,723 |
-12% ↓
|
2003年 | 764,475 |
-19.92% ↓
|
2002年 | 954,630 |
9.04% ↑
|
2001年 | 875,485 |
31.28% ↑
|
2000年 | 666,870 |
-52.87% ↓
|
1999年 | 1,414,928 |
-40.08% ↓
|
1998年 | 2,361,359 |
-13.36% ↓
|
1997年 | 2,725,512 |
-4.31% ↓
|
1996年 | 2,848,169 |
7.29% ↑
|
1995年 | 2,654,610 |
-3.95% ↓
|
1994年 | 2,763,783 |
55.59% ↑
|
1993年 | 1,776,327 |
-38.68% ↓
|
1992年 | 2,896,691 |
-38.4% ↓
|
1991年 | 4,702,693 |
43.48% ↑
|
1990年 | 3,277,705 |
-51.59% ↓
|
1989年 | 6,771,100 |
39.08% ↑
|
1988年 | 4,868,600 |
-6.68% ↓
|
1987年 | 5,217,200 |
-3.33% ↓
|
1986年 | 5,397,100 |
-12.17% ↓
|
1985年 | 6,144,600 |
-12.45% ↓
|
1984年 | 7,018,500 |
45.66% ↑
|
1983年 | 4,818,558 |
-27.51% ↓
|
1982年 | 6,647,266 |
22.16% ↑
|
1981年 | 5,441,226 |
2.71% ↑
|
1980年 | 5,297,500 |
-13.29% ↓
|
1979年 | 6,109,131 |
4.52% ↑
|
1978年 | 5,844,679 |
-6.43% ↓
|
1977年 | 6,246,165 |
-9.61% ↓
|
1976年 | 6,910,600 |
40.89% ↑
|
1975年 | 4,905,070 |
-0.85% ↓
|
1974年 | 4,947,100 |
12.94% ↑
|
1973年 | 4,380,200 |
-21.52% ↓
|
1972年 | 5,581,400 |
40.41% ↑
|
1971年 | 3,975,000 |
36.07% ↑
|
1970年 | 2,921,300 |
-22.78% ↓
|
1969年 | 3,783,000 |
-3.89% ↓
|
1968年 | 3,936,000 |
2.77% ↑
|
1967年 | 3,829,800 |
-12.32% ↓
|
1966年 | 4,368,000 |
44.96% ↑
|
1965年 | 3,013,200 |
-17.85% ↓
|
1964年 | 3,668,000 |
59.6% ↑
|
1963年 | 2,298,200 |
5.4% ↑
|
1962年 | 2,180,400 |
-25.09% ↓
|
1961年 | 2,910,800 | - |
ルーマニアはかつてテンサイの生産が盛んな地域で、1960年代から1980年代中盤までは年間400万~700万トンに及ぶ安定した生産力を誇っていました。これは、当時の中央計画経済体制の下で、農業の集団化や重農政策が進められていたためです。特に輸出向け砂糖の原料としてこの作物は重要視され、東欧圏内での需給を支える役割を果たしていました。しかし、1989年に社会主義体制が崩壊し、農業政策が転換して以降、生産量は急激に減少しました。1990年まで600万トンを超えていた生産量は、2000年には66万トンにまで低下しています。この急落の背景には、農地区画整理の混乱、農業政策の不安定さ、設備投資の不足が挙げられます。
さらに近年では、気候変動が大きな影響を及ぼしている可能性が高いです。特に2022年と2023年には、記録的な猛暑や干ばつの影響が深刻で、テンサイの収穫量は28万トン、40万トン近くと極めて低い水準にとどまりました。こうした自然災害の影響に加え、ルーマニアがEU加盟後にテンサイ生産における競争優位を失い、農家が他の作物への転換を進めていることも要因として考えられます。
地政学的な側面では、ウクライナ戦争の影響による物流の混乱や肥料価格の高騰も、近年のテンサイ生産のさらなる低迷に寄与していると考えられます。加えて、COVID-19の影響下では、国全体の経済活動の停滞が農業生産にも波及しました。これらの複合的な要因が生産量減少を加速させています。
将来的な課題として、大きく3つの方向性が示唆されます。まず、気候変動への対応が挙げられます。テンサイの生産を安定化させるためには、灌漑システムや耐干ばつ性品種の導入などが重要です。次に、生産者への支援を強化する政策が必要です。EUの補助金や技術支援を活用して、生産コストの削減や収益性の向上を促進するべきです。最後に、地域間協力の強化が挙げられます。周辺国や他のEU加盟国と連携し、テンサイの生産と供給チェーンを復活させることで、国際市場での競争力を取り戻す努力が求められます。
総じて、ルーマニアのテンサイ生産量の推移は、農業政策の変遷、気候変動、地政学的リスクの影響を大きく受けていることが分かります。今後もこの分野では多岐にわたる課題に対応しながら、新たな生産モデルを構築する必要があります。FAOやEUなど国際機関のサポートを得つつ、環境に配慮した持続可能な農業の実現を目指すことが重要です。