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ルーマニアのヤギ飼養頭数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、ルーマニアのヤギ飼養頭数は1961年の約40.4万頭から2022年の約148万頭まで、大きな増減を経ながら長期的には増加していることが分かります。特に1980年代後半から1990年代初め、また2000年代後半以降に顕著な増加を見せています。ただし2021年以降はわずかに減少傾向が見られ、将来的な課題への対応が重要と考えられます。

年度 飼養頭数(頭) 増減率
2023年 1,421,700
-4.15% ↓
2022年 1,483,200
-0.62% ↓
2021年 1,492,500
-7.4% ↓
2020年 1,611,800
1.07% ↑
2019年 1,594,800
3.61% ↑
2018年 1,539,300
3.79% ↑
2017年 1,483,100
2.98% ↑
2016年 1,440,151
1.62% ↑
2015年 1,417,176
7.94% ↑
2014年 1,312,967
3.74% ↑
2013年 1,265,676
2.39% ↑
2012年 1,236,143
-0.37% ↓
2011年 1,240,786
35.27% ↑
2010年 917,300
2.15% ↑
2009年 898,000
3.82% ↑
2008年 865,000
18.98% ↑
2007年 727,000
5.82% ↑
2006年 687,000
3.93% ↑
2005年 661,000
-2.51% ↓
2004年 678,000
7.11% ↑
2003年 633,000
20.55% ↑
2002年 525,100
-2.4% ↓
2001年 538,000
-3.58% ↓
2000年 558,000
-4.62% ↓
1999年 585,000
-4.1% ↓
1998年 610,000
-6.78% ↓
1997年 654,400
-7.22% ↓
1996年 705,300
-5.34% ↓
1995年 745,100
-3.98% ↓
1994年 776,000
-3.6% ↓
1993年 805,000
-15.62% ↓
1992年 954,000
-5.06% ↓
1991年 1,004,806
-1.22% ↓
1990年 1,017,200
-5.64% ↓
1989年 1,078,000
8.89% ↑
1988年 990,000
9.51% ↑
1987年 904,000
9.21% ↑
1986年 827,800
9.76% ↑
1985年 754,200
10.25% ↑
1984年 684,100
33.48% ↑
1983年 512,500
11.49% ↑
1982年 459,700
-51.83% ↓
1981年 954,300
154.48% ↑
1980年 375,000
-9.07% ↓
1979年 412,400
2% ↑
1978年 404,300
-8.84% ↓
1977年 443,500
-0.37% ↓
1976年 445,160
0.56% ↑
1975年 442,687
-11.29% ↓
1974年 499,000
-6.62% ↓
1973年 534,390
-5% ↓
1972年 562,514
4.85% ↑
1971年 536,472
-5.02% ↓
1970年 564,827
-10.63% ↓
1969年 632,000
-13.66% ↓
1968年 732,000
-11.57% ↓
1967年 827,800
2.58% ↑
1966年 807,000
8.5% ↑
1965年 743,800
20.26% ↑
1964年 618,500
12.37% ↑
1963年 550,400
-2.05% ↓
1962年 561,900
39.08% ↑
1961年 404,000 -

ルーマニアは豊かな農業資源と伝統的な畜産文化を持つ国です。その中でもヤギの飼養は、農村地帯の生活や経済活動において重要な位置を占めています。FAOが提供するデータによれば、ルーマニアのヤギ飼養頭数は1961年から2022年まで大きな変動を見せながら、長期的には増加し続けています。

1960年代から1970年代初頭にかけては、ヤギ頭数は一時的に増加したものの、その後経済政策や社会的な要因により減少に転じました。特に1970年代後半から1980年代前半にかけては、年ごとの減少が続き、ヤギ頭数は約40万頭台に留まりました。この低迷の背景には、当時の社会主義政策による農業集団化の影響や、伝統的な飼養システムから近代化への移行が関係していると考えられます。

1980年代後半から1990年代初頭にかけて、飼養頭数は一気に増加します。これは主にルーマニアが1989年の革命後に社会主義体制から市場経済へ移行した時期と一致しています。この転換は、個人経営が復活し、家畜の飼養が自由化されたことを意味します。農村部の農家にとってヤギは手間が少なく、ミルクや肉など多様な用途に利用できることから、再び重要な収入源として認識され始めたのです。

その後、2000年代に入ってからもヤギの飼養は増加基調にありました。特に2007年にルーマニアがEUに加盟したことが大きな転機となり、農業分野への補助金や市場アクセスの機会が広がりました。2011年から2018年にかけては、飼養頭数が安定して100万頭以上を維持し、2015年以降は150万頭を突破しました。これはEU内での乳製品や肉製品の需要に対応するための生産能力の向上や、農家の意識が高まったことによると考えられます。

しかしながら2021年以降、飼養頭数はやや減少しています。この背景には複数の課題が挙げられます。新型コロナウイルスの影響により、家畜市場や物流が一時的に停滞したこと、また気候変動に伴う農地環境の変化やエサとなる農作物の価格高騰も要因の一つとされています。さらに、2022年にかけての減少は、ウクライナ情勢の影響による地政学的な不安定さとそれに伴う輸出入の制限、農業用資材や燃料コストの上昇も影響したと考えられます。

未来の課題としては、まず気候変動対策が挙げられます。ルーマニアは気温の上昇や降水量の変化による飼料生産の影響を受けやすい地域であるため、ヤギ飼養に適した地域での持続可能な農業方針の策定が必要です。また、小規模農家を対象とした技術支援やEU農業政策の補助金の活用は、農業者のモチベーション維持と生産性向上のために不可欠です。

さらに、国内および国際市場におけるヤギ乳製品や肉製品の需要拡大を支援するため、品質向上のための教育プログラムや、ブランド化を進めるべきです。こうした取り組みが、地元経済の活性化や雇用創出にも寄与すると期待されます。

結論として、ルーマニアのヤギ飼養頭数は歴史的な増減を経つつも、現在に至るまで重要な産業の柱としての役割を果たしてきました。しかし、直近の減少傾向を解消するには、新たな環境や地政学的リスクへの対応が不可欠です。政府や国際機関が持続可能な畜産業を目指す政策を強化し、農村部の経済を安定させるための具体的な支援策を講じることが重要です。