国際連合食糧農業機関(FAO)が公表した2024年最新データによると、ルーマニアのヤギ肉生産量は1961年の2,700トンから、1980年代後半には8,800トンまで増加し、その後の長期的な低迷期を経て、近年2023年には4,480トンとなっています。このデータは、ルーマニアの農業経済、国内消費、国際市場、そして政策的変化がヤギ肉生産量に大きく影響を及ぼしていることを示しています。
ルーマニアのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 4,480 |
19.79% ↑
|
2022年 | 3,740 |
-2.35% ↓
|
2021年 | 3,830 |
-5.9% ↓
|
2020年 | 4,070 |
-23.21% ↓
|
2019年 | 5,300 |
14.72% ↑
|
2018年 | 4,620 |
-52.51% ↓
|
2017年 | 9,729 |
0.83% ↑
|
2016年 | 9,649 |
11.67% ↑
|
2015年 | 8,641 |
-5.31% ↓
|
2014年 | 9,126 |
7.48% ↑
|
2013年 | 8,491 |
9.8% ↑
|
2012年 | 7,733 |
8.98% ↑
|
2011年 | 7,096 |
-3.26% ↓
|
2010年 | 7,335 |
4.01% ↑
|
2009年 | 7,052 |
69.76% ↑
|
2008年 | 4,154 |
-5.72% ↓
|
2007年 | 4,406 |
35.44% ↑
|
2006年 | 3,253 |
5.11% ↑
|
2005年 | 3,095 |
-50.85% ↓
|
2004年 | 6,297 |
16.61% ↑
|
2003年 | 5,400 |
56.34% ↑
|
2002年 | 3,454 |
-9.53% ↓
|
2001年 | 3,818 |
-3.73% ↓
|
2000年 | 3,966 |
-8.7% ↓
|
1999年 | 4,344 |
27.84% ↑
|
1998年 | 3,398 |
-32.67% ↓
|
1997年 | 5,047 |
-5.66% ↓
|
1996年 | 5,350 |
-10.83% ↓
|
1995年 | 6,000 | - |
1994年 | 6,000 |
-7.69% ↓
|
1993年 | 6,500 |
-7.14% ↓
|
1992年 | 7,000 |
-6.67% ↓
|
1991年 | 7,500 |
7.14% ↑
|
1990年 | 7,000 |
-20.45% ↓
|
1989年 | 8,800 |
10% ↑
|
1988年 | 8,000 |
11.11% ↑
|
1987年 | 7,200 |
5.88% ↑
|
1986年 | 6,800 |
9.68% ↑
|
1985年 | 6,200 |
12.73% ↑
|
1984年 | 5,500 |
30.95% ↑
|
1983年 | 4,200 |
10.53% ↑
|
1982年 | 3,800 |
18.75% ↑
|
1981年 | 3,200 |
-17.95% ↓
|
1980年 | 3,900 |
-9.3% ↓
|
1979年 | 4,300 |
19.44% ↑
|
1978年 | 3,600 |
-7.69% ↓
|
1977年 | 3,900 |
14.71% ↑
|
1976年 | 3,400 |
-2.86% ↓
|
1975年 | 3,500 | - |
1974年 | 3,500 | - |
1973年 | 3,500 |
9.38% ↑
|
1972年 | 3,200 |
-3.03% ↓
|
1971年 | 3,300 |
-13.16% ↓
|
1970年 | 3,800 |
15.15% ↑
|
1969年 | 3,300 |
32% ↑
|
1968年 | 2,500 |
-13.79% ↓
|
1967年 | 2,900 |
20.83% ↑
|
1966年 | 2,400 |
-4% ↓
|
1965年 | 2,500 | - |
1964年 | 2,500 |
-3.85% ↓
|
1963年 | 2,600 |
-3.7% ↓
|
1962年 | 2,700 | - |
1961年 | 2,700 | - |
ルーマニアのヤギ肉生産量の推移を見ていくと、1960年代初頭から1980年代後半にかけて、生産量は概ね増加傾向にありました。特に、1984年から1989年にかけては顕著な増加が観察され、8,800トンのピークを記録しました。この期間の成長は、主に家畜飼育技術の進展や消費需要の拡大、さらには政府の国内農業振興政策の影響を受けたと考えられます。
しかし、1990年代に入ると、冷戦終結後の経済移行期に伴い、ルーマニアの農業セクター全体が混乱しました。この影響で、1996年から1998年にかけてヤギ肉生産量は大幅に減少し、最低点の3,398トンを記録します。これは、当時の農業構造改革や主要消費市場の変化、市場競争力の不足が主要因とされています。
2000年代には持ち直しの動きが見られる一方で、2005年以降は再度生産量がばらつき、大幅な変動が見られました。この時期は、欧州連合(EU)への加盟準備や新たな貿易政策、気候変動の影響もまた重要な要因であったと言えます。特に、ルーマニアがEUに加盟した2007年以降、加盟国として新たな農業規制が導入され、多くの小規模農家が適応に苦しんだ可能性があります。
直近のデータを見てみると、2016年から2017年にかけて一時的に9,700トン近辺まで生産量が上昇しましたが、2018年以降は再度減少が見られました。2020年から2023年にかけては主に4,000トン台で推移し、安定した供給には至っていません。これは、新型コロナウイルスの感染拡大を契機とした経済的ショックや物流網の混乱、さらに食生活の変化が影響している可能性が高いです。
現在の生産量の減少は、輸出競争力の低下や農業従事者の減少、さらに地球温暖化による牧草地の減少といった課題を反映しています。加えて、都市化の進行により農村部の労働力が減少していることも無視できません。中国やインドといった大規模なヤギ肉消費国に対して、ルーマニアの競争力は限定的である一方、EU内部でも他国の豚肉や鶏肉との競争が大きな課題とされています。
今後の課題としては、農業従事者の技術向上支援や、持続可能な牧草地の管理による生産基盤の強化が挙げられます。また、国内需要の伸び悩みを考慮すると、輸出市場の開拓が鍵となるでしょう。一例として、高品質なオーガニックヤギ肉を製品化し、高付加価値市場への売り込みを図る戦略が有望です。
さらに政府は、気候変動の影響を軽減するための水管理や、耐乾寒性のある牧草品種の導入を推進するべきです。地政学的には、ルーマニアは地理的にヨーロッパとアジアの貿易ルート上にあるため、この位置を活用して急成長するアジア市場への輸出を増やす機会を模索すべきです。
結論として、ルーマニアのヤギ肉生産量は長期的に変動しており、現在の減少傾向を改善するには、政策的支援と国際市場への対応が鍵となります。そのためには、農家支援、エコ農業の推進、国際競争力の強化といった包括的対策が必要不可欠です。このような対策を進めることで、持続可能な成長基盤を構築し、国内消費とともに輸出市場における地位も高めることが期待されます。