ブータンの牛乳生産量推移を示すデータによると、1961年から一貫して緩やかな増加傾向が続いていたものの、1990年を境に一度大幅な生産量のピークを迎えました。その後2000年代初頭には急激な減少を見せた後、2010年代に入ると再び著しい増加に転じました。しかし2020年代に入ってからは徐々に減少傾向にあり、2023年には40,368トンと、直近のピークである2019年の57,547トンから大幅に減少しています。この推移は農業政策や地域の発展段階、気候条件の変化など、複合的な要因に関連しています。
ブータンの牛乳生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 40,368 |
-4.47% ↓
|
2022年 | 42,255 |
-22.69% ↓
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2021年 | 54,654 |
-5.63% ↓
|
2020年 | 57,912 |
0.63% ↑
|
2019年 | 57,547 |
9.62% ↑
|
2018年 | 52,496 |
4.47% ↑
|
2017年 | 50,251 |
6.31% ↑
|
2016年 | 47,270 |
18.64% ↑
|
2015年 | 39,844 |
14.47% ↑
|
2014年 | 34,807 |
12.57% ↑
|
2013年 | 30,920 |
4.37% ↑
|
2012年 | 29,625 |
8.14% ↑
|
2011年 | 27,396 |
6.52% ↑
|
2010年 | 25,720 |
0.11% ↑
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2009年 | 25,692 |
12.28% ↑
|
2008年 | 22,883 |
14.08% ↑
|
2007年 | 20,059 |
-6.43% ↓
|
2006年 | 21,437 |
-40.42% ↓
|
1990年 | 35,980 |
16.67% ↑
|
1989年 | 30,840 |
9.09% ↑
|
1988年 | 28,270 |
0.46% ↑
|
1987年 | 28,142 |
0.46% ↑
|
1986年 | 28,013 |
0.46% ↑
|
1985年 | 27,885 |
0.07% ↑
|
1984年 | 27,864 |
0.39% ↑
|
1983年 | 27,756 |
0.09% ↑
|
1982年 | 27,730 |
0.37% ↑
|
1981年 | 27,628 |
7.5% ↑
|
1980年 | 25,700 |
1.52% ↑
|
1979年 | 25,315 |
0.51% ↑
|
1978年 | 25,186 |
3.16% ↑
|
1977年 | 24,415 |
2.15% ↑
|
1976年 | 23,901 |
4.49% ↑
|
1975年 | 22,873 |
3.49% ↑
|
1974年 | 22,102 |
2.38% ↑
|
1973年 | 21,588 |
1.2% ↑
|
1972年 | 21,331 |
2.47% ↑
|
1971年 | 20,817 |
2.53% ↑
|
1970年 | 20,303 |
2.6% ↑
|
1969年 | 19,789 |
2.67% ↑
|
1968年 | 19,275 |
2.74% ↑
|
1967年 | 18,761 |
2.82% ↑
|
1966年 | 18,247 |
1.43% ↑
|
1965年 | 17,990 |
2.94% ↑
|
1964年 | 17,476 |
3.03% ↑
|
1963年 | 16,962 |
1.54% ↑
|
1962年 | 16,705 |
3.17% ↑
|
1961年 | 16,191 | - |
国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ブータンの牛乳生産量は1961年以降20世紀末にかけて、比較的緩やかに増加してきたとされています。1961年の16,191トンから1990年には35,980トンまで増加しました。この期間は農業が主な産業であり、牛乳生産がブータンの農村地域において持続可能な生活の礎となっていたことを反映しています。しかしこれ以降、2006年には21,437トンと急激な減少が見られ、何らかの構造的な変化が影響を与えたことが考えられます。これには市場価格の低下、畜産業の効率性の課題、あるいは都市化の進展による農村人口の減少が関連している可能性があります。
2010年代に入ると、生産量は再び増加に転じ、2019年には57,547トンと過去最高を記録しました。この回復はブータン政府が進めた農村部への支援や、牛種改良プログラム(乳生産性向上を目的)の実施が要因の一部であるとみられます。また、この時期には工業化と都市化が進む中で、国内市場での乳製品需要が増加したことも背景にあると考えられます。一方で、2020年代に入ると牛乳の生産量は再び減少に転じ、2023年には40,368トンと約30%の減少幅が見られました。この変動の主な要因として、新型コロナウイルス感染症の世界的流行が挙げられます。このパンデミックは労働力不足やサプライチェーンの混乱を引き起こし、生産活動全般に悪影響を与えたと考えられます。
さらに不可視的な要因として、地球温暖化による気候変動が畜産業全体に影響を及ぼしている可能性があります。気候変動による牧草地の減少や水資源の枯渇は、乳牛の飼育環境を悪化させ、生産量低下を招いています。これに加え、地域内の紛争や地政学的リスクが畜産物の輸出や国際協力を妨げていることも示唆されます。周辺国であるインドや中国との経済的な相互依存の強さから、そちらの動向も影響を及ぼしている可能性があります。
ブータンの持続可能な牛乳生産を維持するためには、いくつかの具体的な対策が必要です。第一に、乳牛の純粋種や雑種の増加を目的とする牛種改良プログラムの継続と拡大が重要です。乳量の多い種類の牛を選び出し、その飼育を奨励することで生産性を向上させる取り組みが求められます。第二に、効率的な飼料サプライチェーンの構築が不可欠です。特に、輸入飼料への依存率を下げるために国内での飼料生産を高めるべきです。また、気候に適応した農業技術の導入も考慮されるべきです。地域的な課題を克服するためにも、国際機関や地域内協力の枠組みを強化し、近隣諸国との交易環境を改善する必要があります。
これらを実現するためには、農業政策のさらなる最適化と統合的なアプローチが必要です。国や地域社会が連携しつつ、地元の農業従事者が継続して生計を立てやすい支援環境を整えることが今後の主要課題です。地球温暖化の影響を軽減し、経済的・社会的両面での安定化を図るため、持続可能な畜産業モデルを確立することが求められています。このような取り組みは単にブータン国内の課題解決だけでなく、地域全体の食糧安全保障や気候緩和策にも貢献するものと期待されます。