国際連合食糧農業機関の最新データによると、ブータンのトウモロコシ生産量は、1961年に48,000トンから始まり、1980年代には急増と急減を経て変動が見られました。1990年代以降、全体的に不安定な推移を示しつつ、2004年には88,231トン、2005年には過去最高の93,968トンに達しています。しかし、近年は大幅に減少しており、2022年には25,981トンと過去60年以上で最も低い水準を記録しました。
ブータンのトウモロコシ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 25,981 |
2021年 | 30,939 |
2020年 | 40,965 |
2019年 | 46,235 |
2018年 | 55,259 |
2017年 | 94,052 |
2016年 | 82,035 |
2015年 | 83,714 |
2014年 | 77,243 |
2013年 | 75,717 |
2012年 | 73,024 |
2011年 | 79,826 |
2010年 | 57,663 |
2009年 | 61,158 |
2008年 | 69,252 |
2007年 | 84,729 |
2006年 | 80,079 |
2005年 | 93,968 |
2004年 | 88,231 |
2003年 | 49,681 |
2002年 | 41,412 |
2001年 | 60,000 |
2000年 | 48,500 |
1999年 | 70,000 |
1998年 | 85,000 |
1997年 | 85,000 |
1996年 | 80,000 |
1995年 | 70,000 |
1994年 | 60,000 |
1993年 | 50,000 |
1992年 | 40,000 |
1991年 | 41,530 |
1990年 | 40,000 |
1989年 | 31,100 |
1988年 | 31,130 |
1987年 | 50,000 |
1986年 | 73,500 |
1985年 | 76,000 |
1984年 | 79,566 |
1983年 | 83,000 |
1982年 | 80,730 |
1981年 | 80,700 |
1980年 | 77,500 |
1979年 | 76,000 |
1978年 | 74,500 |
1977年 | 73,000 |
1976年 | 71,500 |
1975年 | 70,000 |
1974年 | 68,500 |
1973年 | 67,000 |
1972年 | 65,500 |
1971年 | 64,000 |
1970年 | 62,500 |
1969年 | 61,000 |
1968年 | 59,500 |
1967年 | 57,000 |
1966年 | 55,500 |
1965年 | 54,000 |
1964年 | 52,500 |
1963年 | 51,000 |
1962年 | 49,500 |
1961年 | 48,000 |
ブータンのトウモロコシ生産量の長期的な推移を見ると、1961年から1980年代前半まではおおむね増加傾向が続きました。この期間における農業の発展や農地拡大、農業技術の向上が主な要因と考えられます。しかし、1984年以降、急激な変動が見られ、1988年には31,130トンまで著しく減少しました。この時期の急減については、自然災害や気候の変動、農業政策の変化が影響した可能性が高いと考えられます。
1990年代以降はある程度の回復を見せ、一部の年では80,000トンを超える記録が見られるなど、再び上昇傾向を示しました。しかし、2000年代半ば以降は再び減少に向かい、特に2018年以降の下落が顕著でした。2022年には25,981トンと、1960年代初期を大きく下回る水準に留まりました。この長期的な減少にはいくつかの要因が考えられます。まず、気候変動が挙げられ、大雨や干ばつの頻度や強度が増加していることがトウモロコシ収量の減少に影響を与えている可能性があります。特に、近年の気候変動はヒマラヤ地域における生態系への影響を顕在化させており、ブータンの農業にもその影響が及んでいると考えられます。
さらに、農業従事者の高齢化や若年層の農業離れといった人的な要因も無視できません。都市部への人口移動は農村部の労働力不足を引き起こし、古い農業技術に依存している生産体制が効率性を損ねています。また、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、国際的な農業供給チェーンへの依存が増大し、輸入肥料や農機具の不足が国内生産の減少を加速させた側面も見逃せません。
この現状を踏まえると、ブータンのトウモロコシ生産における課題として、生産者を支援する政策の強化、災害に強い品種の研究開発、農業労働力の確保が挙げられます。また、気候変動に適応した農業技術の導入や、他国や国際機関との協力を通じて持続可能な方法で農業を再構築することも必要です。たとえば、インドや中国といった近隣諸国では、気候に強い作物の育成や灌漑システムの近代化が推進されており、こうした取り組みの成功事例を参考にすることが重要です。
さらに、地域間の協力が鍵となります。国際連合食糧農業機関やアジア開発銀行などが主導するプロジェクトの活用により、気候変動に対する適応力を高める具体的な技術支援や資金援助を積極的に受け入れるべきです。また、地政学的リスクへの対処として、農業に依存する複数の経済体との貿易協定を結ぶことで、輸出市場の多様化や安定供給への足掛かりを作ることが期待されます。
結論として、ブータンではトウモロコシ生産の減少を食い止め、安定化させるために、多面的かつ包括的なアプローチが必要です。これには、技術的な進歩、自然災害や気候変動への適応、人材育成、周辺諸国との連携が含まれます。今後、こうした方策を進展させることで、トウモロコシ生産の減少トレンドを抑え、安定した収穫を可能とする道が開けると考えられます。