国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization)が提供する2024年最新データによると、ブータンの柿生産量は、過去20年間で大きな変動を見せており、一時的に急激な増加を見せた年もありましたが、近年では減少傾向が続いています。2007年には過去最大の1,753トンを記録しましたが、その後は生産量が乱高下し、2023年には84トンと最低水準に達しています。このトレンドは、気候変動の影響、生産者の減少、農業技術の導入状況などさまざまな要因が影響していると考えられます。
ブータンの柿生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 84 |
-11.15% ↓
|
2022年 | 95 |
-2.38% ↓
|
2021年 | 97 |
-53.09% ↓
|
2020年 | 207 |
-11.85% ↓
|
2019年 | 235 |
-12.66% ↓
|
2018年 | 269 |
78.08% ↑
|
2017年 | 151 |
212.22% ↑
|
2016年 | 48 |
-64.25% ↓
|
2015年 | 135 |
-40.03% ↓
|
2014年 | 225 |
0.05% ↑
|
2013年 | 225 |
-61.61% ↓
|
2012年 | 587 |
-75.95% ↓
|
2011年 | 2,439 |
1790.4% ↑
|
2010年 | 129 |
-22.28% ↓
|
2009年 | 166 |
-71.82% ↓
|
2008年 | 589 |
-66.4% ↓
|
2007年 | 1,753 |
171.55% ↑
|
2006年 | 646 |
4.38% ↑
|
2005年 | 618 |
604% ↑
|
2004年 | 88 | - |
ブータンの柿生産量推移を見ると、長期的な変動が特徴的で、生産量が急上昇したり、急落したりする年が目立ちます。例えば、2004年の88トンという生産量に対し、2007年には1,753トンまで急増しましたが、翌年の2008年には589トンと大幅に減少しました。この間の要因として、農業政策の変更や気候変動、生産者の切り替えなどが考えられます。また、2011年には再び2,439トンと記録的な増産がなされていますが、以降は断続的な減少傾向が続き、2023年の84トンは過去最低水準となっています。
このような生産量の推移には、いくつかの背景が想定されます。まず一つ目に、ブータンは山岳地帯が多い地理的環境の中で農業を行っているため、気候条件や土地利用の制約を受けやすい地域的特性があります。柿は特に気温や降水量に敏感な果物であるため、気候変動の影響が大きく反映される可能性があります。また、2010年代以降、ブータン全般で農村から都市への人口移動が進み、多くの農地が放棄されているという課題も、生産性低迷につながっていると考えられます。
さらに、地域衝突や疫病の影響も無視できません。例えば、新型コロナウイルスのパンデミックによる物流の制約や農業労働力不足の問題、さらに輸出市場へのアクセスの減少などが、2020年以降の生産量減少に寄与した可能性があります。特にブータンのような小規模な農業主体の国では、こうした外的要因が生産に即座に影響を及ぼします。
また、農業技術の不足も重要な課題です。他国と比較してみると、日本などの先進国では新しい品種の育成や栽培技術の導入によって安定的な生産を維持しています。一方で、ブータンでは、農業の効率化が十分進んでいないとされており、持続可能な農業への転換が求められています。
今後、ブータンが柿生産量を持続的に増加させるためには、具体的な対策が必要です。例えば、農業技術の導入や教育の充実を通じて、生産性の向上を図ることが重要です。さらに、気候変動への適応策として、耐寒性や耐乾燥性に優れた品種の開発と普及を進めるべきでしょう。国際的な支援機関の協力を得て、気候変動リスクのモニタリング体制を構築し、生産者が早期に対応できるようにすることも効果的です。
加えて、経済面でのサポートも欠かせません。都市部への人口集中や農村の衰退を防ぐためには、農村への資金投入や物流インフラの整備、さらには若者が農業に関心を持つような教育と啓発活動が必要です。また、近隣諸国との貿易拡大による市場確保も目指すべき課題の一つです。
結論として、ブータンの柿は、その生産量推移が示すように多くの課題に直面しており、持続可能な農業の実現が長期的な目標となります。このため、政府や国際機関が協力して、人的資本の強化や気候変動への対応、農村振興策を進めることが極めて重要になります。これにより、ブータンの柿生産が安定し、経済的および社会的な恩恵を生み出す可能性が広がるでしょう。