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ブータンの桃(モモ)・ネクタリン生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の2024年7月に更新されたデータによると、ブータンの桃(モモ)およびネクタリンの生産量は年度別に大きな変動が見られます。2005年に2,576トンという高水準を記録しましたが、近年では減少傾向が目立ち、2023年には486トンという著しく低い生産量となっています。この推移から、ブータン農業が直面する課題とその原因について検討する必要があります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 486
-5.76% ↓
2022年 515
-18.65% ↓
2021年 633
-40.31% ↓
2020年 1,061
-14.83% ↓
2019年 1,246
9.75% ↑
2018年 1,135
1% ↑
2017年 1,124
15.64% ↑
2016年 972
24.14% ↑
2015年 783
-45.44% ↓
2014年 1,435
31.89% ↑
2013年 1,088
-32.63% ↓
2012年 1,615
-4.66% ↓
2011年 1,694
117.46% ↑
2010年 779
-36.87% ↓
2009年 1,234
-41.93% ↓
2008年 2,125
-32.24% ↓
2007年 3,136
29.53% ↑
2006年 2,421
-6.02% ↓
2005年 2,576
348.78% ↑
2004年 574 -

ブータンの桃(モモ)およびネクタリンの生産量は、2000年代半ばに比較的高い水準を維持した後、2009年以降徐々に減少する傾向を示しています。特に2007年の3,136トンをピークに、その後は1,000トン台の水準を前後しながら、2020年以降急激に低下し、2023年には486トンにまで落ち込んでいます。この深刻な減少は、気候変動、資源利用の制限、そして国内外の社会経済的な要因が絡み合った結果と考えられます。

まず気候変動の影響について注視する必要があります。ブータンはヒマラヤ山脈の一部であり、気候変動の直接的な影響を受けやすい地域です。気温上昇によって農業の季節や栽培環境が変化し、果樹の収穫量に悪影響を及ぼしている可能性があります。また、近年、降水量の不安定さや洪水、土壌浸食など自然災害の増加も桃およびネクタリンの栽培に悪影響を与えています。

また、人口や産業の増加に伴う土地利用の変化も無視できない要素です。都市化や他の作物への転換が進む中で、桃およびネクタリン栽培に割ける面積が減少していることが予測されます。これに加え、農業インフラの十分な整備が進んでいないことや、農村部での労働力不足の問題も影響を与えていると考えられます。

さらに、新型コロナウイルスのパンデミックによって国際的なサプライチェーンが混乱したことも、農業資材の入手や輸出の停滞を招き、間接的に生産量に影響を及ぼした可能性があります。輸出が滞った結果、農民が栽培を縮小したり、他の作物への転換を余儀なくされたかもしれません。

政策面では、生産量の減少を食い止めるためには、根本的な支援策の強化が必要です。具体的には、持続可能な農業技術の導入を促し、気候変動に耐えられる新品種の開発と普及を進めることが挙げられます。また、農業従事者への技術支援制度や若年層への農業支援奨励も重要です。同時に、土地管理の最適化を図りながら、農村部へのインフラ整備を進めるべきです。

さらに、地域間協力の強化も大きな効果をもたらす可能性があります。たとえば、中国やインドといった近隣国と連携し、農作物の市場拡大や技術支援を受け入れることで、国内農業の成長を促進することが期待されます。これにより、自然災害や市場の不安定さへの耐性を高め、ブータンの農業部門全体の安定化に向けた基盤が築かれます。

生産量の推移によると、ブータンの桃およびネクタリン生産は、自然環境、経済環境、政策の課題が複雑に絡み合った結果、大きく揺れ動いている状況です。今後、国としては、気候変動対策を含めた農業の近代化と労働力の持続可能な確保を目指す必要があります。また国際機関は、技術援助や農業支援プログラムを通じて、持続可能な農業促進に向けた支援を強化する必要があります。

結論として、これらの対策を講じることで、ブータンの桃およびネクタリン生産の回復のみならず、農業全体の経済的な持続可能性を向上させることができると考えられます。特に、気候変動や国際的な農業支援を前提にした整合的な政策が鍵となるでしょう。