ブータンのそば生産量は、長期にわたり安定的な増加傾向を示してきましたが、1984年に7,968トンというピークを迎えた後、大きな変動が見られるようになりました。特に2000年以降、生産量が大幅に減少し、2022年には1,133トンと、観測された最小値に達しています。国際連合食糧農業機関(FAO)のデータから、特定の年には急激に増加または減少した事例も見られ、地政学的背景、農業政策、環境変動が影響している可能性が示唆されます。
ブータンのそば生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 966 |
-14.79% ↓
|
2022年 | 1,133 |
-38.93% ↓
|
2021年 | 1,855 |
-31.3% ↓
|
2020年 | 2,701 |
14.9% ↑
|
2019年 | 2,350 |
18.08% ↑
|
2018年 | 1,991 |
-42.8% ↓
|
2017年 | 3,480 |
-6.07% ↓
|
2016年 | 3,705 |
14.56% ↑
|
2015年 | 3,234 |
-24.69% ↓
|
2014年 | 4,294 |
-2.05% ↓
|
2013年 | 4,384 |
1.88% ↑
|
2012年 | 4,303 |
-48.39% ↓
|
2011年 | 8,337 |
111.06% ↑
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2010年 | 3,950 |
1.33% ↑
|
2009年 | 3,898 |
-26.1% ↓
|
2008年 | 5,275 |
-34.01% ↓
|
2007年 | 7,994 |
-6.21% ↓
|
2006年 | 8,523 |
20.21% ↑
|
2005年 | 7,090 |
182.7% ↑
|
2004年 | 2,508 |
14.52% ↑
|
2003年 | 2,190 |
-21.39% ↓
|
2002年 | 2,786 |
-30.35% ↓
|
2001年 | 4,000 |
33.33% ↑
|
2000年 | 3,000 |
-25% ↓
|
1999年 | 4,000 |
-11% ↓
|
1998年 | 4,494 |
-4.33% ↓
|
1997年 | 4,697 |
-6.05% ↓
|
1996年 | 5,000 |
-1.24% ↓
|
1995年 | 5,063 |
-4.08% ↓
|
1994年 | 5,278 |
-12.03% ↓
|
1993年 | 6,000 |
8.69% ↑
|
1992年 | 5,520 |
18.76% ↑
|
1991年 | 4,648 |
-40.59% ↓
|
1990年 | 7,825 |
28.28% ↑
|
1989年 | 6,100 |
1.67% ↑
|
1988年 | 6,000 |
3.45% ↑
|
1987年 | 5,800 |
-0.85% ↓
|
1986年 | 5,850 |
-17.61% ↓
|
1985年 | 7,100 |
-10.89% ↓
|
1984年 | 7,968 |
22.58% ↑
|
1983年 | 6,500 |
4.84% ↑
|
1982年 | 6,200 |
9.73% ↑
|
1981年 | 5,650 |
-2.59% ↓
|
1980年 | 5,800 |
5.45% ↑
|
1979年 | 5,500 |
10% ↑
|
1978年 | 5,000 |
4.17% ↑
|
1977年 | 4,800 |
4.35% ↑
|
1976年 | 4,600 |
4.55% ↑
|
1975年 | 4,400 |
2.33% ↑
|
1974年 | 4,300 |
2.38% ↑
|
1973年 | 4,200 |
2.44% ↑
|
1972年 | 4,100 |
2.5% ↑
|
1971年 | 4,000 |
2.56% ↑
|
1970年 | 3,900 |
2.63% ↑
|
1969年 | 3,800 |
2.7% ↑
|
1968年 | 3,700 |
2.78% ↑
|
1967年 | 3,600 |
2.86% ↑
|
1966年 | 3,500 |
2.94% ↑
|
1965年 | 3,400 |
3.03% ↑
|
1964年 | 3,300 |
3.13% ↑
|
1963年 | 3,200 |
3.23% ↑
|
1962年 | 3,100 |
3.33% ↑
|
1961年 | 3,000 | - |
ブータンのそば生産量の変遷は、国の農業経済や自然環境の変化を理解する上で重要な指標です。1961年の3,000トンから1984年の7,968トンまで、安定した成長が見られました。この期間は、農業技術の発展や農地の増加が背景にあると考えられます。しかし、1980年代後半以降、生産量は大きな波を描きながら低下し始め、特に2000年には再び3,000トンに減少しました。その後も減少傾向が続き、2022年には1,133トンと記録最低値を記録しました。
生産量の低下にはいくつかの要因が考えられます。一つは、農業従事者の減少です。ブータンは急速な都市化と近代化が進んでおり、農村部から都市部への人口移動が顕著です。これにより、農地が放置されるケースや、労働力不足によって作付け面積が縮小する事態が発生していると考えられます。また、気候変動の影響も無視できません。特に、降雨パターンの変化や気温上昇が、そばの生産に悪影響を及ぼしている可能性が指摘されています。さらに、土壌の質の低下や災害リスクの増加も、生産量減少の一因と考えられています。
また、地政学的背景も無視できない要素です。ブータンは地理的に中国やインドと接する地域に位置しており、これらの大国との関係が農業政策や輸出入体制に影響を与えています。例えば、インフラ整備が未熟であるため、国内市場だけでなく国際市場への流通が制限され、農家が経済的な利益を上げにくい状況にあります。これに加え、新型コロナウイルスの影響や物流の停滞により、さらなる生産活動の停滞が懸念されました。
未来に向けて、ブータンが直面する課題は多岐にわたります。しかし、その中でも具体的な対策がいくつか挙げられます。まず、地元の農業従事者を支援する農業政策の強化が必要です。これには、農地の効率的な利用を促進するための技術的助言や、金融機関からの融資支援が含まれます。また、気候変動への適応力を高めるため、耐性のあるそば品種の開発や持続可能な農法の普及も重要です。さらに、国内外への輸出市場の拡大を図るための物流強化策として、インフラ整備と近隣諸国との経済協力を深化させる必要があります。
結論として、ブータンのそば生産量の推移は、単なる数値の変化でなく、さまざまな社会的、地理的、経済的要因が絡み合った結果を反映しています。これを踏まえて、ブータン政府や国際援助機関は、農業分野を革新し、持続可能な発展を目指す戦略を具体的に構築することで、地域農業の再活性化に努めるべきです。これにより、国内の農業基盤の安定化のみならず、国際市場での競争力向上と食料安全保障の確立も実現する可能性があります。